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早朝の新開地駅、旧国鉄の特急を思わせるベージュとレッドに塗り分けた1000系電車が待っていた。
有馬・三田方面の運用はほとんどが三田行きではあるが、早朝の何本かは有馬温泉に直通しているのだ。
06:47発、昭和生まれの1000系電車に乗って、神戸電鉄呑み潰しの旅をスタートする。
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本来、神戸電鉄の起点は湊川駅、昭和40年代に相互に連絡したい阪急・阪神・山陽・神戸の4電鉄と
神戸市の思案で設立された神戸高速鉄道によって、神戸電鉄も新開地始発となり他3社と連絡している。
かつてのターミナル湊川駅の白亜の駅舎は、湊川公園に半分埋まるようにして現存している。
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湊川から地上に姿を現したツートンカラーの1000系電車は、市街地を抜けぬうちから50‰の急坂に挑む。
源義経が平家の軍勢を奇襲した “鵯越の逆落とし” の山を越えるのだから、想像を超える急勾配なのだ。
振り返ると高層ビル越しの神戸港が遥か下界に見える。余談だが神戸電鉄は全国登山鉄道‰会に参加している。
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山道をグイグイ登って40分、初老の1000系は有馬口までやって来た。有馬線と三田線はここで分岐する。
三田発、有馬温泉発の上り電車が同時着すると、出発信号は青に変わり、この電車はポイントを右に進む。
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半径の小さい鉄路を鉄輪がキーンキーンと鳴らして最後の急坂を登る。旧7号トンネルを仕上げると終点だ。
頭端式2面2線のホームの柱が灯籠のように柔らかい明かりを灯して、雅やかな雰囲気を醸し出している。
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1300年の歴史を誇り太閤秀吉が愛した関西の奥座敷・有馬温泉、儒学者林羅山は「天下の三名泉」と記した。
駅から温泉街に向かって、先ずは有馬川に架かる太閤橋、上流にねね橋、二人の像が向かい合う格好で立つ。
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そぼ降る冷たい雨の中、有馬温泉の中心に鎮座する「湯泉(とうせん)神社」に詣でた。
大己貴命・少彦名命・熊野久須美命を祀る神社は温泉守護神であり、また子宝子授けの神社としても有名だ。
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湯泉神社の長い石段を降りて来たころが、ちょうど「金の湯」の開館の時間だ。
鉄分が酸化して赤茶色に濁った、これぞ有馬とも云うべき “金泉” には、是非とも浸かっておきたい。
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汗が噴き出した湯上がりには冷たいビールを呷るのが常だけど、ここは意表を突いてフランス菓子のcafe。
「カフェ・ド・ボウ」で、炭火焙煎コーヒーの香りに包まれて、しっとりと “塩焼ショコラ” が美味しい。
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有馬口駅まで戻ったら今度は三田をめざす。程なく1番線に急坂を登って5000系の4両編成が入ってきた。
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冷たい雨を突いて5000系は三田への勾配を降る。運転席ではゆるキャラの「しんちゃん」が安全運転を見守る。
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有馬口からは20分と少々、武庫川橋梁を渡って右手からJR福知山線が近づいてくると終点の三田だ。
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三田駅の改札を抜けたのは10:40、どこかに大衆食堂を探して、今日の最初の一杯といきたい。
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暖簾が掛かったばかりの「御食事処さんかく」で “牛すじどて焼き” を肴に生ビールを呷る。美味い。
トロトロに煮込んだ牛すじが良い味を出している。夜は人気の一品に違いない。昼間っから申し訳ない。
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こんな冷たい雨が降る日には、ピリ辛の “煮込みチャンポン” をいただく。今度は頭頂から汗が噴くようだ。
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さて、三田から二つ戻った横山駅から、フラワータウン、ウッディタウンを繋ぐ支線が分岐している。
全ての電車は三田始発で、3両編成の車両がニュータウンの需要をJR福知山線(宝塚線)に繋いでいるのだ。
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やはりゆるキャラの「しんちゃん」を添乗させて、踏切ひとつない高架上の線路を急ぐ。
一部トンネルを除いて、複線化できる用地が確保されているけれど、実現はされないのではないだろうか。
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朝夕は通勤通学客で満員?であろうニュータウンの路線も、昼間は数えるほどの乗客を終着駅まで運ぶ。
それでも律儀に15分毎に発着する鉄道は頼もしいとつくづく思うのだ。午後は山田錦の産地を粟生線で往く。
神戸電鉄 神戸高速線 新開地〜湊川 0.4km 完乗
有馬線 湊川〜有馬温泉 22.5km 完乗
三田線 有馬口〜三田 12.0km 完乗
公園都市線 横山〜 ウッディタウン中央 5.5km 完乗
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短編映画「有馬に恋さん」