旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

Biz-Lunch 満留賀@池袋「蒸し鶏の梅おろしそば」

2024-05-29 | Biz-Lunch60分1本勝負

歯ごたえのあるそばに、蒸し鶏、刻み海苔、そして夏らしくミョウガを散らしている。
大葉にのせた梅肉をからめた大根おろしに、小さな円を描くように蕎麦つゆをかけると、
梅肉が香りを放ちながら、そばに絡んでいく。
割り箸で軽くかき混ぜたら、頃合いを見計らって、大掴みしたそばをズズっと啜る。爽やかだなぁ。

池袋オフィスでの Biz-Lunchは、満を持して池袋駅東口に展開したことは前回書いた。
蕎麦の「満留賀」は先日訪ねた天丼の店の向かえに、今日もたくさんのビジネスマンで溢れている。
それこそ星の数ほどある飲食店、この街から美味いランチを探すのはなかなか楽しい作業なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
稲妻パラダイス / 堀ちえみ 1984


西武山口線・狭山線を完乗! 「昭和な町並みと銀の円盤と醤油焼きそばと」

2024-05-25 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

ゴルフ場の南辺を舐めるように、最大勾配50‰をゴムタイヤを履いた「レオライナー」が下ってきた。
全幅2,380㎜の車両はまるで遊園地の乗り物の様だけど、案内軌条式鉄道といって法律上はれっきとした鉄道だ。

レンガ造りの壁面とドーム屋根、ネオルネッサンス様式の取水塔が多摩湖に映る。
山口線はこの堰堤直下にある多摩湖駅を起点に、西武園ゆうえんちと西武球場を結んで走っている。

多摩湖駅を出て1分、短いトンネルを潜ると西武園ゆうえんちが見えてくる。
電車は多摩湖に沿って走っているはずだけど、水源を守る保安林が繁っているので湖面をみることはない。

西武ゆうえんち駅前には昭和の町並みが広がっている。夕日が丘商店街というらしい。
「活気・元気・熱気がほとばしる、あの日あの頃の昭和」だって、昭和は遠くになりにけりだね。

若い女の子がオート三輪と写真を撮っている。SNSにあげる映える一枚になるのだろうか。
出掛ける前にはこの商店街の大衆食堂で一杯やろうと思ったけど、ここ、有料エリアなんだね。先を急ごう。

西武園ゆうえんち駅を出たレオライナーは、グリーンを右手に見ながら東中峯信号場で上り下りが交換する。
いつしか軌道は下り勾配に変わり、夏の太陽を照り返す巨大な円盤が見えてくると西武球場前駅だ。

躍動感溢れる巨大なライオン像が吠えるベルーナドームには、すでに多くのファンが詰めかけている。
千葉ロッテを迎えてのゲームは18:00試合開始のはずだけど、すでに熱気いっぱいのボールパークなのだ。

旅の後半は狭山線に乗って、西武球場前駅から狭山丘陵を北に向かって降りていく。
1番線に迎えにきてくれた20000系は、エレガントブルーで装った堂々の10両編成。

当然のことながら、この駅の装飾は若き獅子たちに埋め尽くされている。
そしてこの時間帯、到着する列車は10両編成いっぱいのファンを吐き出し、乗り込む乗客は数えるほどだ。

エレガントブルーの10両編成は、35‰という鉄道としては結構な急勾配を慎重に降りていく。
唯一の途中駅である下山口で申し訳程度の乗降があって、やがて大きな左カーブを切って西所沢に終着する。

池袋線にひと駅乗車して所沢、新しく拓けつつある東口を降りると、昼呑みの大衆居酒屋がある。
大衆居酒屋といってもモダンな作りで、この時間帯、草野球を終えたオヤジ達のグループが盛り上がっている。
およそ似つかわしくないお嬢さんが一人で生ビールを呷っていたり、なんだか混沌としている。

それでは負けじと呑み人も生ビール、冷凍庫から登場したキンキンのジョッキーに、赤いダルマがカワイイ。
暑いときはシンプルに “冷奴” がいい。冷えた豆腐を箸で崩しているうちに、汗がひいていく。

続くアテはサッパリと “豚肉の梅照り焼き”、二杯目はHAPPY HOURのメニューから “樽ハイ倶楽部” を。
このアテは案外美味しい。家呑みのメニューに加えよう。ひょっとしてボクでも出来そうだ。

三杯目の “薫香ハイボール” を呑みながら、〆は “ところざわ醤油焼きそば” をいただく。
これっ醤油メーカーと製麺会社の社長の仕掛けた新しいB級グルメらしい。なるほどね。
ニンニクやら生姜が効いた麺に白髪ネギを散らして、これもサッパリした一品、なかなか美味しい。

真夏日の呑み鉄散歩、少しだけ日焼けした顔が昼呑みの痕跡を消して、さあ夕立が来る前に帰ろう。

西武鉄道 山口線 多摩湖~西武球場前 2.8km 完乗
西武鉄道 狭山線 西武球場前~西所沢 4.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
メイン・テーマ /  薬師丸ひろ子 1984


Biz-Lunch 天成@池袋「鶏天丼」

2024-05-22 | Biz-Lunch60分1本勝負

池袋オフィスでの Biz-Lunchは、そろそろ池袋駅東口を開拓する局面に入ってきた。
東口北に出たら堀之内橋方面へ2ブロック、四叉路の角に「天成」の暖簾が掛かっている。

変形コの字カウンターに14席、連れ立ってくるお客さんを考えて、座る場所は奥さんから指示が出る。
目の前で揚げてくれる本格的な天ぷらが、小1枚でお釣りがくるのだから、良いパフォーマンスだ。

白だしの味噌汁を従えて “鶏天丼” が登場、添える壺漬けは、カウンターのツボからご自由に。
ナス、カボチャ、ししとう、かき揚げに加えて、主演の “とり天” が二つ、ジューシーで美味い。
そして助演の “舞茸天” も肉厚十分でなかなか良い感じだ。

タレは甘味が強いやつで、なかなかの美味。
こうした旨甘のタレは後半持て余し気味になるが案の定、いや単に年をとったからか。

オフィス街にデパートやショップ、歓楽的な繁華街、っでかつ学生街、
様々な表情を見せる池袋だから、美味しい店はまだまだ見つかりそうだ。
夏にかけてさらに(極めて個人的に)盛り上がりそうな池袋の Biz-Lunch なのだ。 

<40年前に街で流れたJ-POP>
Southern Wind / 中森明菜 1984


西武国分寺線・多摩湖線を完乗! 「アナベルと金婚と東村山音頭と」

2024-05-18 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

羽根沢信号場から恋ヶ窪駅へ延びる直線区間をレモンイエローの6両編成が駆けてくる。
やはり国分寺駅が単式ホームだから、国分寺を出発する列車と到着する列車はここで行き交うことになる。
ニュースが熱中症への注意を叫んでる休日、国分寺線に乗って呑もうとやってきた。

ブリヂストンの工場を右手に見て小川駅、国分寺線はここで拝島線とX字に交差する。
平面交差になっているので、先発の小平ゆき(拝島線)が行手を遮るように横切って右奥に消えていった。

右から新宿線の複線が近づいてきて、レモンイエローは工事の防音壁に囲まれた2番線に到着。
国分寺を発ってからわずかに10分、国分寺線の旅はアッという間に終わりを迎える。

終点の東村山駅付近は連続立体交差事業が進行中、5つの踏切が解消されるらしい。府中街道の渋滞も酷いもの。
駅の反対側には、えっと言うような26階建てのタワーマンションが聳えている。

そして駅前広場では、大きな欅の木陰で「アイーン」ポーズの志村けんさんが暑さを凌いでいる。
昭和な少年たちの土曜日は、草野球から帰って夕飯を済ませると、『8時だョ!全員集合』にかじりついた。
もっともボクはだんだんと『オレたちひょうきん族』に心変わりしていったのだが。

煙突の高さも誇らしげに “金婚” の豊島屋酒造が江戸前の酒を醸している。
実はこの旅のスタートラインへ向かう車中、Googleマップでどうやら東村山に酒蔵があることを知った。
まぁ呑み人の旅はそれくらい行き当たりばったりなのだが、知ったからには訪ねない訳にはいかない。

滝のような汗を流して15分、ショップ「KAMOSHI no BA(かもしのば)」で試飲を愉しむ。
定番の “金婚” や “屋守(おくのかみ)” の他に、なかなか尖った酒をお造りの印象を受けた。
蔵元でしか買えない無濾過生原酒 “純米大吟醸 NEON(PINK)” と “純米吟醸 MELLOW(BLUE)” を仕込んで、
この先の旅、左手に提げた袋がカチャカチャとリズムよく音を立てるのだ。

駅前に戻ったら「ますも庵」の暖簾をくぐる。まだ陽は高いけど今日の一杯を。
この店は豊島屋酒造さんで「東村山で金婚が飲めるお店は?」と尋ねて、紹介してもらったのだ。

とは言えこの暑さ、先ずはキンキンに冷えた “大人の⭐︎生” を一杯。アテは何も捻らず “冷奴” がステキだ。

そして “金婚 純米酒” を升に溢してもらう。やや甘めの飲み口がスッキリした酒だ。
お供するのは “身欠きニシンの甘露煮”、蕎麦前のうちでは好みの一品だ。

〆の一枚は “肉汁うどん” に変更して、甘い肉汁、コシのある歯ごたえと喉ごしを愉しむ。
うどんは埼玉県さんの地粉と言うからまさに武蔵野うどん。西武線シリーズでははや3度目なのだ。

志村けんさんに別れを告げたらもう一路線乗っておく。
3番線でガラんとして発車を待つレモンイエローは2000系4両編成の西武園行き。冷房が心地よい。
列車がガタンと動き出すなり『次は終点西武園っ』の乾いた車内放送、そう西武園線はたった1駅の乗車なのだ。

黄色い西武電車を背景にして、抜けるように白く、満開の “アナベル” が美しい。
沿線の「北山公園」は、水辺を楽しめる静かな公園で、数千本の花菖蒲と紫陽花が盛りを迎えている。

線路の向こう側は『となりのトトロ』でメイが迷い込んだ七国山のモデルと言われる八国山緑地。
東村山と所沢の市境(都県境)にある緑地は、ハイキング トレイルやバードウォッチングのできる池がある。

競輪の開催がない日は閑散とした西武園駅、レースがある日ならばメインスタンドで呑んでも良かったなぁ。
隣接する西武園ゆうえんちプール、聞こえてくる女の子や子どもたちの歓声が夏を感じさせる。
っと、西の空に夕立を予感させる灰色の雲が広がり始めていることに気付く。
慌ただしく折り返すレモンイエローの電車に乗って、国分寺線・西武園線の旅を終えよう。

西武鉄道 国分寺線 国分寺~東村山 7.8km 完乗
西武鉄道 西武園線 東村山~西武園 2.4km 完乗

東村山音頭 / 三橋美智也&下谷二三子


酒と肴と男と女 那須家宗庵@中浦和

2024-05-15 | 日記・エッセイ・コラム

初鰹の季節ですね。今日のおすすめ “初カツオのたたき” を見つけて、声を上げたのは同時だったね。
あいにく土佐の酒はラインナップになかったから、先ずは奈良の “春鹿” を択ぶ。
今宵、ふたりして西へ旅してみようという趣向でね。ラベルに遊ぶ鹿を見て「修学旅行見たいね」と微笑む。

調子に乗って二杯目も奈良の酒、“百楽門” は備前雄町で醸した甘口の生酒、白身魚に合いそうだね。
これは絶品、“長ネギの天ぷら” を抓みながらに杯を重ねる。
ところで “新ホタルのごま和え” に “生カスベの唐揚げ” と、アテは勝手に日本海側を北上していく。

修学旅行はバスを連ねて大阪に入る。この “秋鹿” は山田錦の山廃純米生原酒、濃醇辛口な男酒が旨い。

この店の蕎麦は、のど越し良い “二八そば” と、甘みが強い “あらびきそば” の2種類を手打ちする。
前者はくるみ汁で、後者は本枯れ節のつゆで味わう。

〆の蕎麦前には、穏やかな香りと軽快な口当たりの純米酒 “琵琶のさざ浪” が美味しい。
「あらっ京都には寄らないのね」と彼女がつぶやく。
いやいや、京都に寄らずに帰路の新幹線に乗ってしまったようだ。すでに車窓を琵琶湖が流れていくのだ。

悲しみがとまらない / 稲垣潤一 & 小柳ゆき


西武有楽町線・豊島線を完乗! 「空飛ぶ機関車と真夏日のホッピーと魔法の国と」

2024-05-11 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

エメラルドのボディーに3人のキャストを大胆にあしらったフルラッピング電車が豊島園に到着する。
溢れ出した乗客の中には、すぐには改札を出ずに、カメラを片手にホームを行ったり来たり。
今日は昼呑みの練馬を基点に、豊島線と西武有楽町線で遊ぶ。

3番線に入ってきた紅いラインの8両編成は東急の車両、副都心線を経由して横浜中華街からやってきた。
西武の車両は勿論だけど、東京メトロ、東武、東急、横浜高速の車両が入り乱れるのは副都心線効果ですね。

地下がこんなに賑やかなのは想像できないほど、静かな住宅地の只中に小竹向原駅は口を開けている。
小竹向原〜練馬のわずか3駅を結ぶの新線(1998年全通)は、練馬区内で完結するけど有楽町線だ。

紅いラインの石神井公園行きは、6分の乗車で西武有楽町線の旅を終える。
もっとも大抵の場合、このまま池袋線に乗り入れて、石神井公園あるいは飯能まで足を延ばすのが常だ。

高架を西武の路線がX字に交差し、その地下を大江戸線が走って、練馬駅も案外立派なターミナルだ。
すでに真夏の陽に射られて、練馬駅前交差点で都道を越えると、ビルの谷間に酒場が連なる細道が延びる。

この界隈には昼から暖簾が掛かる店が何軒かあるらしい。
呑み人はぼんやりと赤提灯が点った「大衆酒場 練馬 春田屋」に吸い込まれる。すっ涼しい。

先ずは生ビール。よく冷やされたジョッキーには誇らしげに店名が入っているね。
アテは “肉味噌ピーマン” って、己で箸を操って作るんかい?まぁ安いから良い。

二杯目は “生レモンサワー”、この酸っぱいのがいい。
タマネギを敷いて “漬けマグロブツ”、紫蘇を散らしてこれがなかなか気の利いたアテ、さらに呑めそうだ。
日本酒は松竹梅かぁ、ご常連が裏メニュー的な地酒を注がせてるけど、面倒だからホッピーでいく。

ナカを追加するタイミングで “豚バラ” を焼いてもらう。味噌と梅と一本ずつね。
汗も引いたし、ちょい気分が良くなったところで、小さな旅の続きを。

高架のホームに上がってほどなく、Harry Potter を煌めかせて「スタジオツアー東京 エクスプレス」が登場。
豊島線は練馬から北へ、住宅街を掻き分けてわずかに1キロの旅なのだ。

赤を基調とした豊島駅構内は、ホグワーツ魔法魔術学校へとつづくホグズミード駅をイメージしているとか。
ベンチや電話ボックス、天井から提げられた時計も英国調で、なんだかワクワクしてくるね。

空飛ぶ魔法列車のモニュメントは、キングス・クロス駅の9と¾番線の Hogwarts Express と思いきや、
かつて「としまえん」で走っていた機関車をリメイクしたものだそうだ。なかなか粋ですよね。

イングリッシュガーデンをイメージした駅前広場、木材をふんだんに使ったナチュラルで暖かみのある駅舎。
豊島園駅はずいぶん雰囲気が変わりました。

黒いマントを羽織り魔法の杖を握って、コスプレをした若者が少なからず集う緑の小径を行くと、
木立の中に、守護霊(パトローナス)が跳ねる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」が現れるのだ。

さてこの夏、時間を見つけて魔法の国を訪れて見てはいかがか。ボクは練馬駅前で呑んで待っています。

西武鉄道 西武有楽町線 小竹向原~練馬 2.6km 完乗
西武鉄道 豊島線 練馬~豊島園 1.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
時間の国のアリス / 松田聖子 1984


ボクも町中華で飲ろう 華山@浦和

2024-05-08 | 日記・エッセイ・コラム

狭い路地裏の、さらに奥まったマンションの1階にその町中華はあった。
自転車置き場の入り口に、移動式の黄色い看板がなければ、Googleマップ を覗いても到達は難しい。

多くのお客さんが4種類設定される「今日の定食」を注文する中、ボクらはギョービーから始める。
ジューシーでモチモチ、でもいい感じにきつね色に焼き上がった “ぎょうざ” が評判に違わず美味しい。
ビールグラスが冷えていれば申し分ないのだけれど、そこはある意味町中華クオリティ。

秀逸なのは小皿メニュー、280〜400円の設定なのだけれど、小皿いっぱいに美味しいが溢れる。
“くらげサラダ” に “焼き豚” それに “麻婆豆腐” が並んで、これは絶品アテの3兄弟。
2本目の一番搾りが空いて、小上がりの卓には “レモンサワー” が登場。調子が出てきたぞぅ。

パラッパラの “チャーハン” を取り分けた頃、熱々の餡かけラーメンがやってきた。
品書きに “華山麺” と、店の名前を冠している位だからここの看板メニュー、確かに美味い。
アッサリした味付け、たっぷり野菜の餡に細麺を絡めて音を立てて啜る。絶品ですよ。

小上がりに上がってから小一時間、満腹を抱えて路地に出る。ちょうど昼の暖簾を下ろす頃だ。
もう午後は何もできないなぁ。でもこんな休日も良いかも知れない。
次は純粋にランチに、そう “華山麺” を食べに来よう。ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Toremoro / 柏原芳恵 1984


西武多摩湖線を完乗! 「多摩湖と武蔵野うどんと高尾の天狗と」

2024-05-04 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

新緑の切り通しを抜け、小さなアップダウンを繰り返して、9000系が多摩湖まで登ってきた。
この日はベルーナドームでセ・パ交流戦があるから、午前中から大忙しのレモンイエローの4両編成だ。

国分寺駅の北口を塞ぐようにショッピングセンターがある。以前降りた時はなかったかな。
正面にバス乗り場を配して、あたかもこのミーツ国分寺が駅ビルの様なのだ。

多摩湖線の国分寺駅は単式ホーム、しかも10分間隔のダイヤだから、電車は忙しなく折り返していく。
だからひとつ目の一橋学園で必ず上り下りが交換する。ほら国分寺ゆきのレモンイエローがやって来た。

萩山駅では拝島線と連絡するのだけれど、2つの路線は駅の構内でX字に平面交差する。
多摩湖ゆきのレモンイエローは、萩山駅を出ると3回の転線を繰り返す。吊り革に掴まりましょう。

萩山から先は、保谷狭山自然公園自転車道線(水道道路)に沿って一直線に、そして緩やかに登っていく。
都道5号線(青梅街道)を跨いで武蔵大和駅前、小さな男の子が嬉しそうにレモンイエローを見上げて指を差す。

中天の陽に射られながら、自転車道路をきた方向にとぼとぼと戻る。汗が噴き出す15分だ。
めざす「手打ちうどん きくや」は昔ながらの町のうどん屋さん、ほら母子でお昼ご飯にやって来た。

おひとり様は肩を寄せ合って狭いカウンターで。
ほどなく「肉汁・天付L」が登場、これが基本ね。あとは玉の分だけLL,3L,4Lと増えていく。
生姜、刻みネギ、山葵と薬味で味変しながら、甘めの肉汁にコシのあるうどんが美味しい。

満腹を抱えて乗る後続の9000系はレジェンドブルー、これ埼玉西武ライオンズの球団色なのだそうだ。
武蔵大和からはまるで山岳鉄道のよう、右に左にきついカーブと勾配が続く。
車輪とレールが上げるキーン、キーンという音を聞きながら、左手に堰堤が見えてくると終点の多摩湖だ。

多くの乗客はそのまま山口線に乗り換えてベルーナドームをめざすから、
多摩湖駅の駅舎はあくまでも静かな別荘地の駅の雰囲気を醸す。いかにも西武の駅と街並みなのだ。

東村山 庭先ゃ多摩湖 狭山茶どころ 情が厚い♪ って子どもの頃歌いましたよね。
堰堤に登って西を望むと、鬱蒼とした森を湖面が鋭利に切り裂いて、遠くに富士が霞んでいる。
唯一銀の円盤を除いては人工物は視界になく、なんだか遠くに旅したような錯覚に陥りますね。
振り返ると新宿の副都心まで見渡せるのに不思議な気分です。

堰堤を南に歩いていくと見えてくるのが、日本で一番美しいと言われる第一取水塔、第二取水塔。
レンガ造りの壁面とドーム屋根、ネオルネッサンス様式の取水塔が湖面に映って、欧州の景色の様でもある。

お嬢さん、山口線はホーム前寄りですよ。案外の乗換案内は聞いていないものですね。
ライオンズファンを吐き出したレジェンドブルーで戻りましょう。昼呑みは国分寺で。

ここは国分寺だけど「名古屋」って、赤い提灯と暖簾がちょっと怪しげな地下空間に誘っている。
狭い階段を降りて引き戸を開けると、煙草の匂いと喧騒が流れ出す。
えっこんなに呑んでいるの、昼間っから、ご同輩ばかりか若い女性連れやカップルもいる。

先ずは生ビールと小手調べの “ポテトサラダ” を。可もなく不可もなく、かなぁ。
それでもお通しの “大豆と昆布の煮物” は泣かせるね。
それにしてもホールの娘たちは愛想がない。まったく。笑顔は別料金ってことか。合理的ですね。

人気メニューらしい “まぐろこぼれ盛り”、これは美味い。いい部位の端っこを上手に盛り付けているんだね。
となると日本酒なんだけど、“高尾の天狗” は柔らかい旨口でスッキリした喉ごしの純米吟醸。

この酒、酒蔵が絶えてしまった八王子の米を諏訪の「舞姫」に送って醸しているプロジェクトもの。
いずれ産学行政連携で八王子に酒蔵を復活させるのだとか。夢がありますね。

この店は鯨がラインナップにあって、呑み人は “竜田揚げ” を択ぶ。
すっきりとレモンスライスを落とした “チューハイ” を合わせる。タイムサービスで150円なのだ。
昭和な給食にはときおり鯨の竜田揚げが出て、ボクたちの人気メニューだった。懐かしいね。

さてとほろ酔いで地上に戻っても、夏至へと向かうこの頃はまだ陽が高い。
多摩湖線といえば、夕方になっても10分毎、生真面目に国分寺駅を折り返してゆくのだ。

西武鉄道 多摩湖線 国分寺~多摩湖 9.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
雨音はショパンの調べ / 小林麻美 1984


人生のそばから 長沢茶屋@妙高市

2024-05-01 | 旅のアクセント

群馬県長野原町を起点に、R292は志賀草津道路として日本国道最高地点(標高2,172 m)を通過する。
そのまま辿ると新潟県妙高市に至るわけだが、新潟長野県境は富倉峠を越える。

雪深いこの辺りは小麦が採れないから、そばのつなぎにオヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉っぱの繊維を使う。
コシが強くみずみずしい食感の “富倉そば” は、幻のそばなんて言われたりする。

新潟方面に所用があったGWの終盤、軽井沢ICを降りて新緑の上信越高原に車を走らせた。
この富倉峠を越えてまもなく「山菜そばまつり」の赤い幟旗を目にする。っと、慌てて車を減速するのだ。

件の「長沢茶屋」の前では、運動会に登場するようなテントを張っている。
地元の親父さんたちが採りたての山菜を販売している。おっと、“たけのこ汁” を振舞っている。
ボクたちは、蕎麦のチケットと “笹寿司” を求めて店内に入る。親父さんがトレーでたけのこ汁を運んでくれた。

笹の葉に酢飯をよそり山菜、椎茸、胡桃などの山の幸や、大根の味噌をのせた笹寿司は上杉謙信の野戦食。
子どもにころは、確か妙高高原の駅弁として売られていた。海水浴の思い出と重ねてボクには懐かしい。

嬉しいのはたけのこ汁、姫竹(ねまがりたけ)が入っている。
姫竹の水煮、玉ねぎ、じゃがいも、溶き卵、味の決め手はサバの水煮、これっ北信濃のソールフードだ。

懐かしい味を堪能するうちに、せいろが山菜の天ぷらを従えて登場する。
コシが強くて、喉越し、香りの高さともに申し分ない “富倉そば” が美味しい 。

取り立てて予定のなかった今年のGWだけど、思いがけず美味しいロングドライブが楽しい。

 

*長沢茶屋さんは新潟県側のお店なので、本来「長沢そば」と書かないといけないかも知れませんね。
関係者の皆さん、ひろい心でお許しください。

<40年前に街で流れたJ-POP>
青春のいじわる / 菊池桃子 1984