旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

風を感じて! 九十九里ビーチラインとZとオーシャン・ブルー

2024-09-28 | 単車でGO!

水揚げが終わって、静けさを取り戻した漁港には、釣り人が糸を垂れている。
少しだけ早起きをした連休のある日、美味いモノを食べようと遠出をする気になった。

っで、東金九十九里有料道路を海に向かっている。もう少し走れば潮の香りがして来そうだ。
zの丸みのあるタンクに、秋の深い青空と、夏の名残りの強い日差しが映り込んでいる。

海に出る前に、成東の浪切不動院に寄ろうと、台方ICで車体を左に倒し込んだ。
山門と本堂、緑に映えるその鮮やかな朱色にzが溶け込んで見える。

聖武天皇の御代、行基が難破船の海難除けとして、波を切る巌の上に不動尊像を刻んだものだと云う。
海岸線はかなり後退したけれど、不動明王は成東の町並みを一望し、その先の大海原を見つめている。

浪切不動院から海岸線までは約8キロ、はるかに太平洋が広がる。
片貝海岸では波に戯れる恋人たちがシルエットになって、ボクにはずいぶん前の想い出だけが残る。

振り返ると、いわし料理やらだんご汁の幟がはためいて、呑み人を誘う。
「まるに」は九十九里浜を一望して、浜焼きが楽しめる食事処だ。

鮮やかな赤身、舌の上で中トロがとろけて “まぐろ刺し” が美味しい。
なんとなく注文してしまうのがノンアル、まぁ気分の問題なのだ。

大ぶりな6尾を盛り付けて “いわしフライ” が登場、茶碗蒸しと2つの小鉢を従えて、食べ切れるだろうか。
小鉢の煮豆とイワシの酢漬けは泣かせる。この際冷えた酒を升に溢してもらいたくなる。
それにしても特製ソースと和辛子を少々付けて、揚げたてのイワシが美味しい。

午後は潮風を浴びながら、九十九里有料道路で緩やかな弧を描く。爽快そのものなのだ。
どこまでも走りたい海岸線だけど、とりあえず九十九里の南端、太東岬まで行ってみよう。

R128を左に折れて、リアス式の海岸崖を駆け上ると、突然、白亜の太東埼灯台が屹立する。
海抜58mから望む太平洋は、水平線に向かって「青」がグラデーションするオーシャンブルー。キレイだ。

遥かに弧を描いている九十九里を目に焼き付けたら、街に向かって北へ走ろう。
ようやくzと走るいい季節がやってきた。次の週末、風を感じてどこまで行こうか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
オーシャン・ブルー / 稲垣潤一 1984


酒と肴と男と女 たく庵@四谷三丁目

2024-09-25 | 日記・エッセイ・コラム

一杯の生ビールを呷ったら、手書きの品書きから大好きな “花垣” を択ぶ。
はじめましての一杯は、福井県産の酒造好適米「九頭竜」を醸した純米無濾過生原酒だ。
シャープでスッキリな純米酒は、ほんのり甘い “だし巻き玉子” をアテに美味い。

荒木町で落ち合う大人の時間は、この日ばかりは新宿通りを渡らずに、四谷三丁目の地下に消える。
隠れ家のような店は、スマホのマップでも開かなければ、その穴蔵は見つからないのだ。

仄暗い隠れ家には7席ばかりのカウンターが延びて、趣味のいい陶器を並べている。
久しぶりの人は最奥の席で、タンブラーを弄んでいる。挨拶はなしだ。

日本海の幸を陶器に盛ったら、山葵と岩塩と辛味噌を添える。キレイだね。いやお造りのこと。
雫石の “菊の司” は、ひとめぼれを磨いた純米生原酒うすにごり、少しガスを感じる爽やでフルーティな酒。
“線香花火” に和金が遊ぶガラスの酒器を並べて、ゆく夏を感じるのもまたいい。

被災した珠洲の櫻田酒造に天狗舞が手を差し伸べて “能登大慶×天狗舞”、ちょっぴり苦味も感じる旨酒だ。
さすればアテは “能登のへしこ” を。この塩辛い糠漬けで何杯かいけそうだ。酒器は陶器に代わっている。

大将のお薦めは “不二正宗” は乾坤一を醸す宮城の蔵、リンゴの香りを感じる甘味あるサッパリした酒だ。
〆は “塩むすび” をひとつずつ、へしこを齧りながら米の旨みを堪能する。

夜の帳が下りるのも少しづつ早くなって、これからの季節、ゆったりと大人のふたり酒もいい。

あなたに逢いたくて / 稲垣潤一 with 松浦亜弥


Biz-Lunch 近頃のレストラン兆峰@大塚

2024-09-18 | Biz-Lunch60分1本勝負

未だにこの店のことはよく分からない。
屋号に「レストラン」と付いているし、雰囲気は町中華そのものだし、味噌汁付きの定食は美味しい。
とりあえず美味しい「茶色」を並べてみた。

熱々の具沢山な餡をかけて “五目焼きそば”、小袋の辛子をふた袋切ったら餡の頂点に絞り出す。
黄色い小山を溶かすようにお酢をかけたら、大掴みの一口めを頬張る。美味い。

黄色い短冊に描かれたメニューが壁中に貼ってある。町中華的でしょう。“ナポリタン” を択んだ。
普段は卓に並んでいないKraftのパルメザンが供される。ちゃんと冷えている。かけ放題なのだ。
モチモチの太麺にケチャップソース、昭和な呑み人には懐かしいおふくろの味だ。
フライパンから無造作に盛り付けた平皿と、安っぽいフォークが、この場合演出効果が効いている。

「揚げ物は控えましょ」って可愛らしい保健師さんとの約束を破って “エビとイカのフライ” が並んだ。
それ位ここのフライは美味しい。グランドメニューから一種類を日替り定食に仕立てて750円で提供している。
そのお得感がまたいい。味噌汁と香の物が付くのが、洋食屋というより和定食な感じなのだ。

っで、この店のことで分かっていることは、指を折って確認する帰り道。
13:30で閉まってしまう、切り盛りするご夫婦の愛想は良くない、どのメニューを択んでもハズレなく美味い。
それでついつい、照りつける残暑の日でも、山手線を越えて歩いてしまうのだ。
いやいや、ごちそうさまです。今日も美味しゅうございました。

<40年前に街で流れたJ-POP>
リトル プリンセス / 岡田有希子 1984


津々浦々酒場探訪 庵 浮雨(un peu)@浦和

2024-09-14 | 津々浦々酒場探訪

ゴールドの泡が煌めく “スパークリング” と、大衆酒場の雄 “赤星” の共演で今宵の宴が始まる。
お通しは、なんともクリーミーな “おぼろ豆腐”、岩塩で食すかオリーブオイルで食すか、選択を迫られる。

十割蕎麦が食べられるビストロ?、蕎麦前にタパスを楽しむそば処?
記事のカテゴリーは、酒場探訪か、人生のそばからか、男と女か、迷うところたくさんの夜なのだ。

“ゴボウの青唐みそマヨネーズあえ”、“長ねぎのマリネ”、“木の子のマリネ” を並べて赤星を呷る。
とりあえずはメニューの上から3つを頼んでみた。どれもご機嫌なアテなのである。

選りすぐりの日本酒は純米系のボトルを、あたかもワインのようにラインナップしている。
今度は “半熟うずら玉子のスモーク” はトリュフ塩で、それに “鶏ササミの洋風とりわさ” で脇を固めておいて、
注ぐ “醸す森” は津南の苗場酒造の酒、ほのかに柑橘系が香るのど越し爽やかな生酒なのだ。

このモダンな酒を差しつ差されつ、“ホタテのムース洋風板わさ” と “だし巻き風オムレツ” を突っつく。
これもまた美味いねぇ。ほら、段々と蕎麦処っぽいアテになって来たでしょう。

〆の十割蕎麦は クルミオイルをたっぷり使った “くるみ汁せいろ” が陶器に盛られてやってきた。
コシのある十割を、ほんのり甘いくるみ汁で、なめらかに啜って美味しい。
こんな隠れ家的な蕎麦処はふたりでゆるりと楽しみたい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
シャボン / 長山洋子 1984


Go!Go!West! 9 駅そば日記 いろり庵きらく@平塚「冷やしとろろ玉子そば」

2024-09-11 | 旅のアクセント

酷暑は続くし、いつ激しい雨が降り出すか分からない空模様。
案外と、ガンガンに冷房の効いた電車にただ乗っていることが、実に快適だと気付いたこの頃。
読みかけの新書を一冊携えて、昼過ぎの東京上野ラインに乗る。
グリーンとオレンジの湘南電車に揺られること90分、頁がそう進まないうちに平塚に着く。

平塚にも改札内に「いろり庵きらく」がある。
そしてややゆったりしたこの店では、メニューに “ヱビス” の小瓶がならぶ。
よく冷えたタンブラーに黄金色を注いで、真昼のビールが楽しい。

そして “冷やしとろろ玉子そば”、黄身がかった “とろろ” を絡めて、冷たいそばが美味しい。
海岸沿いの町の駅そばは、ふんだんに振りかけた “あおさ” が気の利いたアクセントだ。

さて、次は小田原あたりまで、避暑の駅そば電車旅に出かけようか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
SUMMER EYES / 菊池桃子 1984


ディーゼルカーとカップ酒 飛騨乃やんちゃ酒@高山本線

2024-09-07 | 旅のアクセント

飛騨古川に1829Dが入線して来た。谷間の町に夕日はまもなく沈む。
アニメ「君の名は」の舞台になったこの町には、白壁黒腰の土蔵が続く町並に二軒の酒蔵が並んでいる。

一方の蒲酒造場で “飛騨乃やんちゃ酒” を仕込んできた。これっ地元で愛される定番の旨酒だね。
ディーゼルカーが動き始めたら、日本海へと駆け下る宮川を眺めながらワンカップを開けよう。

辛口の酒の舐めているうちに終点の猪谷駅に到着する。陽はとっぷりと暮れている。
ここはJR東海とJR西日本の境界駅、国鉄時代からの気動車に乗り換えとなる。
やんちゃ酒の余韻を引きずって、高山本線の終点富山をめざすのだ。

遠くで汽笛を聞きながら / アリス


Go!Go!West! 8 駅そば日記 濱そば@辻堂「冷やしかき揚げ天玉そば」

2024-09-04 | 旅のアクセント

昨年11月、藤沢駅の3・4番ホームで営業していた大船軒が閉店してしまったから、次は辻堂になる。
辻堂のホームは思いがけず幅が広いのだけど、めざす「駅そば」は見つからない。
っで、東改札へと向かう階段を登っていくと。辛うじて改札内に「濱そば」を見つけた。
そして辻堂での選択は、オーソドックスにしかしちょっと贅沢に “冷やしかき揚げ天玉そば” なのだ。

先ずはワサビを満遍なくつゆに溶いて、ピリッとした冷たいそばを啜る。美味しいね。
次にかき揚げをつゆに浸して、解れるほどにそばに絡めて、その甘さを楽しむ。
そばが三分の一くらいになったところで、玉子を箸で割る。ほら麺に絡みはじめた。
玉子の絡み方で味が七変化してこれまた楽しい。最後につゆまで飲み干して満足なのだ。

再びホームに降りる。青いラインの特急が案外心地よい風を起こして通り過ぎていった。
さて、次回は小田原あたりで旅情の一杯を啜るとしましょうか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏のフォトグラフ / 石川秀美 1984