ピアノのステージの本番が近付いている。
今弾いている曲、先生からお勧めいただいた曲。とても有名な曲。私ひとりだったら気付かずに白羽の矢は立てなかっただろう。
しかし弾いているうちに、この曲の素晴らしさがどんどん見えてきた。しかしその一方で、指を広げるところや、速いパッセージが多くて
弾けるようになれるかどうか自体が、不安になった。私のレベル以上の曲だったのでは、という思いが、膨らんだ。
練習中に、指も痛くなった。音も外した。もうだめかも、と何度も思った。
けれども弾き続けているうちに、弾きにくかったところが、一つ、二つ、と消えていった。
そしてもうだめかも、という思いがなくなってきた。
しかし私自身では、だめかもという思いがなくなっていても
先生から聴いたらそうではなかった。拍がとれていなかった。
メトロノームでじっくりやり直し。
そうしているうちに、だんだんつかめてきた。
だめかもしれない、という思いがなくなってきた。
だめかもしれない、と思っていたくせに、どうしても人前で弾きたくて
しかし気軽に弾ける場はなくて、いきなり学習者向けのステージに。
だめかもしれないと思えるぐらい弾けていなかったし不安だったので、集中せねばと思い、シャットアウトもした。
お陰様で、だめかもしれないという不安からは卒業できた。思いも込められるようになってきた、かもしれない。
苦手だと思っていたところも楽に弾けるようになっていた。
苦手だと思っていた技術に対しても苦手意識がなくなった。
この曲を選んでくださった先生に感謝の気持ちを抱いた。
なので本番では、思いを込めて、丁寧に弾きたい。ホールいっぱいに、思いを届けたい。
ステージで、何かを伝えることができますように。