自分が弾いている曲の練習を一区切りする基準をどこに置くか、ということについて考えることがある。今までの私はステージでの本番演奏を主に一区切りとしており、時によっては同じ曲を繰り返し本番で弾くこともあった。その場合一度目はうまくいかなくても二度目以降納得できる演奏に近づけたりしてそれなりに満足感を得ていた。ただしその場合、一曲を弾き続ける期間が長くなっていたし、その割には区切りをつけた後には全く弾かなくなり維持が出来なくなっているという課題があった。
そして今はさらに新型コロナウイルスのためにステージ演奏の機会を得る事自体が難しくなった。ステージ演奏というのは贅沢な次元に、ステージでなくてもリアルで聴いていただく機会は貴重、オンラインでも聴いていただける機会は有難いと思えてきた。そして同じ曲を大切に演奏され続けている方たちの姿勢を見て、私もいったん一区切りつけた曲も放置せずに維持していきたいと思えるようになってきている。レパートリーが少ないので広げたい思いもいっぱいではあるのだけど。
前置きが長くなったが、昨年冬から弾き始めたブラームスの幻想曲Op.116の数曲をステージで演奏できる機会があった。友人が発表会を開催してくださる方がいらっしゃるということを教えてくれたのだった。今回はOp.116-4、5、6、7を弾いた。Op.116-4、5、6は昨年から長く練習し続け12月にステージでも弾いていた。Op.116-7は12月に練習を始め曲が入ってきた実感がわき始めたのが今月になってから。ステージ演奏にあげるのはリスキーかもしれないと思いつつも折角の弾く機会、あげることで失うものはなにもないと思って弾くことにした。一緒に出演した友人に撮っていただいた動画です。
ミスタッチもあるし課題も残ったけれど、音響のよいホールに包まれてピアノの響きを感じながら弾くことが出来た。友人の演奏は舞台袖から聴いたのだけど音楽の雰囲気がしっかり伝わってきた。そして主催者側のピアニストさんたちも聴きごたえたっぷりの美しい演奏を披露してくださり、音楽に包まれた幸せなひとときをすごすことができた。
ブラームスの幻想曲Op.116、2番から7番まで約1年がかかりで取り組んできた。初めてこの曲に出会った学生の頃にはまさか自分が弾くことになるとは思いもしなかったこの曲にじっくり向き合うことができて本当によかった。私がここまで弾けるようになったのは指導してくださった先生、そして聴いてくださった仲間たちのおかげ。本当は1番も、といきたいのだけど、そろそろ他の作曲家の曲を弾きたくなってきている今日この頃。なので1番は間を置いて取り組みたいと思っている。そしていずれは全曲演奏できたら。そうなると今までみたいに放置してしまっては全曲演奏への道がさらに遠く遠くなってしまうので、熟成ということで、思い出したころに数曲ずつ取り出して練習し続けられたら、と思う。