いろはにぴあの(Ver.4)

音楽、ピアノ、自然大好き!

ブラームスOp.116 熟成

2021-01-31 | ピアノ、音楽

 自分が弾いている曲の練習を一区切りする基準をどこに置くか、ということについて考えることがある。今までの私はステージでの本番演奏を主に一区切りとしており、時によっては同じ曲を繰り返し本番で弾くこともあった。その場合一度目はうまくいかなくても二度目以降納得できる演奏に近づけたりしてそれなりに満足感を得ていた。ただしその場合、一曲を弾き続ける期間が長くなっていたし、その割には区切りをつけた後には全く弾かなくなり維持が出来なくなっているという課題があった。

 そして今はさらに新型コロナウイルスのためにステージ演奏の機会を得る事自体が難しくなった。ステージ演奏というのは贅沢な次元に、ステージでなくてもリアルで聴いていただく機会は貴重、オンラインでも聴いていただける機会は有難いと思えてきた。そして同じ曲を大切に演奏され続けている方たちの姿勢を見て、私もいったん一区切りつけた曲も放置せずに維持していきたいと思えるようになってきている。レパートリーが少ないので広げたい思いもいっぱいではあるのだけど。

 前置きが長くなったが、昨年冬から弾き始めたブラームスの幻想曲Op.116の数曲をステージで演奏できる機会があった。友人が発表会を開催してくださる方がいらっしゃるということを教えてくれたのだった。今回はOp.116-4、5、6、7を弾いた。Op.116-4、5、6は昨年から長く練習し続け12月にステージでも弾いていた。Op.116-7は12月に練習を始め曲が入ってきた実感がわき始めたのが今月になってから。ステージ演奏にあげるのはリスキーかもしれないと思いつつも折角の弾く機会、あげることで失うものはなにもないと思って弾くことにした。一緒に出演した友人に撮っていただいた動画です。

 ミスタッチもあるし課題も残ったけれど、音響のよいホールに包まれてピアノの響きを感じながら弾くことが出来た。友人の演奏は舞台袖から聴いたのだけど音楽の雰囲気がしっかり伝わってきた。そして主催者側のピアニストさんたちも聴きごたえたっぷりの美しい演奏を披露してくださり、音楽に包まれた幸せなひとときをすごすことができた。

 ブラームスの幻想曲Op.116、2番から7番まで約1年がかかりで取り組んできた。初めてこの曲に出会った学生の頃にはまさか自分が弾くことになるとは思いもしなかったこの曲にじっくり向き合うことができて本当によかった。私がここまで弾けるようになったのは指導してくださった先生、そして聴いてくださった仲間たちのおかげ。本当は1番も、といきたいのだけど、そろそろ他の作曲家の曲を弾きたくなってきている今日この頃。なので1番は間を置いて取り組みたいと思っている。そしていずれは全曲演奏できたら。そうなると今までみたいに放置してしまっては全曲演奏への道がさらに遠く遠くなってしまうので、熟成ということで、思い出したころに数曲ずつ取り出して練習し続けられたら、と思う。


髙橋望氏 ゴルドベルク変奏曲

2021-01-18 | ピアノ、音楽

 髙橋望氏によるゴルドベルク変奏曲の演奏会に行ってきた。私はバッハの曲が大好きなのだが、このゴルドベルク変奏曲に対しては敷居の高さを感じていた。なにしろこの曲は長い。しかも変奏曲なので集中が途切れた瞬間何番目の変奏か分からなくなり曲そのものも味わえなくなりそうな気がする。つまり、極度の集中を長時間強いる曲のような気がしていたのだった。この曲は不眠症に悩んでいた伯爵が気分よく夜を過ごせるようにしたいとバッハに依頼して作られたという。確かにこの曲、入眠にはよさそうだけど、ちゃんと味わうには気合がかなりいりそうに思えていた。

 ところが先日髙橋氏の平均律第1巻のCDをお聴きしてなにかが変わった。この方によるバッハの演奏なら難解そうなあの曲でも聴きとおせるかもしれないと。しかもライフワークにされているとなればお聴きしないわけにはいかないと思い足を運んだ。(CDが出ていることも知っていたのだが、まずは生演奏を聴いてからにしたいと思った)

 最初のアリア、透明感あふれる演奏にたちまち別世界へ。その後は万華鏡のように個性的で盛りだくさんの変奏曲が繰り広げられた。その変奏曲を聴く際にもっとも役に立ったのがプログラム内の「各変奏の極秘的考察」のページだった。第1変奏:出発、第2変奏:穏やかで律動的、第3変奏:同度のカノン、左手は通奏低音(以下省略)と、髙橋氏による各変奏を特徴づけている性格が表となっており、曲が進むたびにそのページを見ながら各曲の表情を味わうことが出来た。カノンの変奏は規則的に登場し、曲が進むにつれて度数も増えているところもびっくり。3つあるト短調の変奏曲、どの曲も嘆きが伝わってきて聴き入ったのだが、それぞれの違いも感じられた。後日ゆっくり、カノンの部分、ト短調の部分など気になるところだけを取り出して聴き比べてみるのもありかなと思った。舞曲もメヌエット、パスピエ、ポロネーズと盛りだくさん、そして手を交差する曲も盛りだくさん。プログラムの解説によるとバッハはこの曲を2段鍵盤を有する楽器のために作曲したとのこと、しかし1段しかないピアノの鍵盤では本当に原曲のままでは演奏できない部分もあるため手の交差をうまく行ったりなど職人芸的な技術が必要になるとのこと。そんな弾くのが大変なところも瑞々しく流れるように演奏されていた。こんなにゴルドベルク変奏曲って楽しい音楽だったとは!プログラムに百科事典的音楽と記載されていたが本当にそうだと思った。華やかなクオドリベッㇳの後は再びアリアへ。すっかり心は浄化された。

 アンコールはパルティータ第4番のサラバンド。これがまた大好きな曲、しかも美しき演奏でたまらなかった。心優しく幸せな余韻。。。

 ゴルドベルク変奏曲、これからは謎を解明したい思いに。継続的に聴き味わい続けたいと思った。


上原彩子氏 ピアノ・リサイタル

2021-01-18 | ピアノ、音楽

 先日になるのだが、上原彩子さんのピアノリサイタルに行ってきた。曲目は

ショパン作曲 24のプレリュード Op.28

休憩

ショパン作曲 プレリュードOp.45 嬰ハ短調

ラフマニノフ作曲 プレリュードOp.23-1 嬰へ短調

ラフマニノフ作曲 プレリュードOp.23-6 変ホ長調

ラフマニノフ作曲 ショパンの主題による変奏曲Op.22 ハ短調

アンコール

ラフマニノフ作曲 プレリュードOp.32-12

ショパン作曲 マズルカOp.63-3

ショパン作曲 小犬のワルツ

 ショパンのプレリュードOp.28、第1番、深めの呼吸でゆったりとした出だし。各曲の個性を浮き彫りにしながら演奏されていた。特に印象に残った曲は11番、15番雨だれ、21番、23番だった。15番の雨だれがこんなに深みと含蓄にあふれた曲だったとは!中間部の激しく重々しい部分を聴いて心が震えた。聴きなれた名曲だと思い込んでいたけれど、この曲が、この曲集の中で真ん中に位置する曲であること、そして、ショパンの曲全体の中でも名曲だと採り上げられている根拠が実感できた。21番変ロ長調、半音階のように動くこの曲、和音の響きを丁寧に紡ぎ出し転調部分もじっくりと聴かせこの曲がいかに充実した曲かというのが感じられた。23番ヘ長調、この曲を聴くたびに雨上がりを連想するのだがさらに今回はプラスアルファの何かがたっぷり加わったような気がした。

 ラフマニノフのプレリュード2曲は彼女の大切なレパートリーなのかと思った。繊細でとても心に染み入る演奏だった。

そして最後のショパンの主題による変奏曲Op.22。ショパンのプレリュードOp.28の20番を主題にした変奏曲なのだが、あの短くも重厚な20番がここまで変形、拡張、そして妄想の世界へと発展するのかとただただ驚嘆。まるで大河ドラマプレリュード20番を見ているような気持になった。陰影のつき方がラフマニノフならではだなと思えるところも。最後の歓喜にはじけて駆け抜けていったところで一気にこちらの心も弾けた。プレリュード20番をラフマニノフはあのように昇華させたかったのかもしれない。