ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

岸恵子という人

2014-12-11 20:28:25 | 映画のレビュー
今日の話題は、あの日本が誇る大女優岸恵子であります。 ある年齢以上の日本女性たちの憧れの的(?)と言われる彼女もすでに81歳。 とうに傘寿を越えているのです。

若い頃の代表作は、「君の名は」…いっちゃあ、何だけど、古いなあ…。 「真知子巻き」なんていう、マフラーの巻き方が一世を風靡したそうだけど、作品の名前を知っているだけで、我ながら凄いと思えるほど、古い古い作品であります。なんせ、かのヴィヴィアン・リーとロバート・テイラーが共演した「哀愁」の和製と言われたメロドラマ--こんな作品があるというだけで、岸恵子がいかに長い時を映画界で生きてきたか、わかろうというもの。

岸恵子という人を語る上で避けて通れないのが、その文筆の才。幾多のエッセイ集や小説も出していて、感性の輝きや鋭い知性は並の作家以上! 数年以上前出た「私のフランス 私のパリ」もその絢爛たる人生を描いていて、楽しく読んだのですが、この方、笑えるほどのナルシストなのであります。

ちょっと気どった才気あふれる文章や、口角をキューッと上げて笑う(口紅の色もややきつめ)口元や、不自然に豊かな髪…岸恵子でしかないものが全身から溢れていて、「ああ、大スターって凄いものなんだなあ」とため息をつかされるのですが、こんな風にパワフルに美しく時を重ねていけたら、と皆思うのではないでしょうか?

この間、TVで彼女の特集を見たのだけど、橋の上でホームレスの男性と安酒を飲み交わすところ、市場で娘のデルフィーヌと食料品を買って楽しんだ思い出など、その人生の過去の情景が一つ一つ語られていました。そうして、セーヌ河が流れていくように、時を刻んだ彼女が真っ赤なコートをまとい高いヒールのブーツを履いて、パリの街を闊歩してゆくところなど、あっぱれというしかない見事さ。

雑誌のグラビアや映像で、「時は彼女を素通りした」といわしめるほどの美しい姿を保ち続けていた岸恵子。でも、この時のTVでは、渋紙色の肌や風が吹いてもあまり揺れない髪に「これって、カツラ?」とさすが80歳を過ぎた年齢は隠せなかったようです。 そして、「私が人生を考える場所」とパリの橋のたもとに座る彼女の姿にはスターとしての栄光の陰にあるひんやりとした愁いさえ感じられました。

岸恵子--彼女が憧憬の対象となるのは、その美貌や頭の良さもさることながら、何より人間として面白く、ダイナミックであることではないでしょうか? 他の女優さんは、あんまり面白味が感じられない方が多いように思われませう。
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作品展へ

2014-12-07 20:59:15 | カリグラフィー+写本装飾
西宮市のギャラリーで開かれた作品展へ。ここに、私も「写本装飾」のクラスで、飾り文字の作品を2点出しているのだ。
三階のスペースにかけられた作品を見ながら、「もう少し、時間をかけて彩色するようにしよう」と反省。Mの字の彩色がうまくいかなかったので・・・。 物事にとりかかると、悠長にかまえることができなくて、せっかちになってしまう私。 こないだ書いた童話も、はやくはやく結末まで書かなくては--と先を急ぎすぎた感がする。

それにしても、月二回くらいは、「都会」と呼ばれる場所に行くのに、街をゆっくり歩く余裕もないなあ…。
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蚕の秘密

2014-12-06 19:43:49 | 健康・病気
昨日、何の気なしに、パラパラと雑誌をめくっていたら、面白いことが載っていた。何と、蚕の幼虫を粉にしたサプリメントが売られているそう。 蚕というと、あの「お蚕様」。白くて太った虫が、桑の葉の上をもぞもぞと動くのを見た覚えのある人は多いはず。

私も、幼き頃友達のお母さんが、菓子箱を開けたと思ったら、そこに何匹もの蚕と桑の葉が鎮座していて、びっくらこいた覚えがある。 あのむっちりとした、触ると気持ち悪いながら、魅力ある弾力を持っていた虫--あれをすりつぶして飲用する人がいるというのか! 考えただけで寒気がしたのだけど、「これを飲んで、体調が良くなった」とにこにこ顔で体験談を語る人が何人もいるのだ。 そして、蚕の幼虫を粉末にしたものは、れっきとした漢方薬にもあるのだとか――う~ん、凄いですね。

蚕といえば、美しい絹を生み出す貴重な虫。だからこそ、「お蚕様」と民間の間でも尊称で呼ばれてきたのだが、彼らのたどる運命はあまりにも悲しい。 桑の葉を食べて育った蚕はやがてさなぎとなり、白い繭に包まれるのだが、この繭こそ絹の元――白い繭はぐらぐら煮立つ湯にくべられ、中のさなぎは死んでしまう。

さなぎが成虫になるのを待って、空となった繭を使えば良いのに、と子供心にも考えたのだが、成虫が食い破って出てきた繭は糸にしても、あちこちがぷつぷつと切れた短い糸にしかならないのだとか。もちろん、このままでも絹にはなるのだが、そうやって作った絹糸は価値もぐんと下がるのだという。

シルクロードという言葉が示す通り、絹は中国の誇る極上品だった歴史を持つ。そして、蚕が人間に飼われるようになって、五千年もの時が立つのだが、それは彼らを野生では生きられなくしてしまった。幼虫は自然の桑の木の葉に載せても、滑り落ちるし、成虫は、飛ぶには羽が短すぎる--人間が作った巣箱の中でしか生をまっとうできない生物--なんて哀しいのだろう。

そして、これも驚いたのだが、蚕はその糞も貴重な成分なのだそう。これも漢方薬になるし、桑の葉しか食べない蚕の糞は、ある意味とても綺麗(?)。 緑色素の一種として、グリーンガムや抹茶アイスにも使われるって。 蚕って、何から何まで、人間の役に立つ宝のような生き物だったのだ--本当に「お蚕様」と敬意をこめて、その命を大切に使わせていただかなければならないだろう。  ただ、今まで大好きだった抹茶アイスに、「糞」が入っているらしいというのは、ちょっと複雑ではありますが。
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Merci!

2014-12-04 15:46:10 | アート・文化

ギャラリー最終日の昨日。 朝早く、近所の方が手作りのチーズケーキを持ってきてくださいました。ほのかな温かみがまだ残るそのケーキ、下地はきちんと手でこねて作ったパイ生地で、いかにも素朴な美味しさ! クリームチーズの柔らかな食感といい、売られているチーズケーキが濃厚なものが多いのに比べて、後を引く美味しさです。 そういえば、私も小学校の頃、チーズケーキ作りに凝っていたことがあるなあ・・・。 「フィラデルフィア」と名付けられたクリームチーズをたっぷり使って作った、そのケーキもこんな優しい味でした(瞬間、遠い追憶にふけったりして――)。  う~ん、これは後でぜひレシピを教えてもらわねば!

そして、上の写真のお花。 小さめにアレンジされた愛らしいデザイン…冬の庭園に、突然届けられた春の花束のような趣であります。下さったのは、カリグラフィー教室の若い仲間であるNさん。 本当に素敵な贈り物です! ありがとうございます。

ギャラリーをやっていると、人の好意が温かな灯のように感じられて、人の住む世の中って、本当にいいなと感じさせられます。ギャラリーにしろ、庭にしろ、広場にしろ人々が集って、ひとときの交感を繰り広げるからこそ、その場は輝くのだと思います。来て下さったお客様、ありがとうございました! 皆さまも、どうぞ楽しいクリスマスを。
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ネーミングって面白いでござる

2014-12-02 21:05:52 | アート・文化
ギャラリーのカウンターの上。
左のコンポートグラスの中にあるもの、何でしょう? 初めて見た私もわからなくて、スイカみたいな模様に作ったオブジェの小さいものかと思ったのですが、実はれっきとした果実。 今日、ギャラリーに来られた母の友人が下さった「沖縄すずめうり」なるものだそう。 カラスウリというのは、よく聞くけれど、それより小さい種ということで雀(スズメとは、この字を意味するのでしょうね)と名付けたのかな?  う~ん、面白うござんす。

そして、右の青いガラスボウルに入っているのは、姫リンゴ! クリスマスらしく、ヒイラギの葉をお伴に――姫リンゴという呼称も本種よりずっと小さいという意味から名付けられたもの。 うん? ここまで書いて気づいたけれど、スズメというのは、もともと大きいという意味じゃなかった? だから、普通の蜂に対して雀蜂というのだし、あのいや~な蛾だっておっきいやつは、スズメガというのである--とどこかで読んだ覚えがあるのだけど…。 

ネーミングの世界も奥が深いで候。けれど、そんなことはさておき、これらのガラスに盛られた小さな果実の愛らしさは、思わず笑みがこぼれそうです。
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花束を・・・

2014-12-02 20:52:23 | アート・文化
ギャラリー二日目の今日、訪れた兄夫婦から頂いた花束。離れのギャラリーのテーブルの上にポンと放り出したところですが、私のドベタな写真では、とてもとらえきれない美しき花であります。 白と紫のトルコキキョウを同じ紫系統のリボンで、くるんと結んであるところ・・・スゴーク素敵。 綺麗な花束をもらうというのは、ぽっと心に灯りがともるような気にさせてくれますね。

さっそく、これも以前薔薇の花束を入れて贈られたガラスのデキャンタを花瓶がわりにして活けることに。
ポインセチアの真っ赤なツリーには、皆さん驚かれるのですが、このトルコキキョウも清楚な味わいあり。
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赤のシュトーレン

2014-12-01 09:59:55 | アート・文化
今日から始まるギャラリー。
そして、この写真は、いつもアトリエ・ドゥ・ノエルにお菓子を提供して下さっている「Y,sTable」の小野靖子さん作「赤のシュトーレン」。 通常のものとは違って、赤ワインとベリーを生地に練りこんだものだそう。 赤のシュトーレンという名前も素敵ですね。

小野さんのお菓子は、美味しく、しかも小粋な楽しさにあふれているので、お客様にもファンが多く、あっという間に完売してしまいます。 シュトーレンだけでなく、他にオレンジケーキやスノーボールといっものもあり、それぞれスゴーク美味しそう!なのですが、実はわたしブログを引っ越ししてから、写真を一つの記事に何枚も載せる方法がわからないのです。よって、この写真だけでお許しを!

あいにく、グレーの空に降り続ける雨模様…それでも、誰か来て下さる方があったらいいな。 
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