オーストラリアは悔しいだろうな~。
試合展開では断然優位に立っていた。
何度も日本のゴールに迫り、決定的チャンスを作り、シュートした。
それを、キーパー川島が “奇跡” とでも形容したい好守で阻止した。
そして延長後半、劣勢をはねのけ、日本が鮮やかにゴールを決めて勝利した。
実に見ごたえがあるというか、恐ろしいというか、背筋が寒くなる試合だった。
昨晩は午後9時に寝た。
睡眠薬を飲まずに寝ると、いつもだいたい3時間以内に目が覚めてしまう。
そういう忌まわしい習性も、たまには利用して役立たせなければならない。
深夜12時から、サッカーアジア杯決勝、日本×オーストラリア戦が始まる。
睡眠薬なしで寝たら、必ず12時までには目を覚ます…はずだった。
ところが、こんなときに限って思い通りにはならず、目覚めたのは12時半であった。
「えらいこっちゃ」
さっそくテレビをつけると、試合は前半23分になるところで、0対0であった。
あ、よかった、まだどちらにも点が入っていない。
しかし、実況を聞いていると、どうも日本は押されているらしい。
現に、いま目の前で展開されている試合も、ボールを支配しているのは敵方だ。
そのあと、日本は何度もピンチを迎えた。
うわっ、もうダメ、と目をつむりたくなるシーンが何度あったことか。
相手と日本のキーパーとが1対1になる絶体絶命のピンチ。
シュート! 低い弾道でボールが矢のように日本のゴールに突進する。
…しかし、川島が右足1本でこれをはじき返した。
ある時、またも相手が日本のディフェンスをかわしてキーパーと1対1。
今度はやられた! と思ったら、川島が飛び込んで、ボールにしがみついた。
天を仰ぎ、悔しがるオーストラリア選手。
またある時は、相手の強烈なシュートがゴール・バーのわずか下のワクへ飛んだ。
思い切りジャンプした川島が、右手の先っぽでこれをはね返した。
頭を抱え込み、しゃがみこむオーストラリア選手。
さらにまたある時は、ゴール前の混戦で川島が倒れた。
そこへ敵のボールが、ゴールに入った。
…かに見えた。
オーストラリアのベンチの控え選手たちが、思わず立ち上がって小躍りした。
しかし、審判は得点を認めなかった。
ビデオが流れた。
ボールはラインのギリギリのところで日本選手がクリアしていた。 やれやれ…
延長戦の前半まで、おおむねこんな調子であった。
日本は相手ゴールに迫ってもなかなかシュートが打てない。
長友が元気に走り回り、クロスを上げ、岡崎がヘディングシュート!
という、絶好のチャンスもあったが、これもシュートが枠から外れた。
しかし延長後半4分に、その長友がまた見事な動きを見せ、クロスを上げた。
ゴール前に、日本の李がいたが、周囲に相手がいない完全ノーマーク状態。
飛んできた来たボールをそのまま蹴り跳ばした李のシュートは素晴らしかった。
ボールは相手のゴールを突き刺した。 キーパーは一歩も動けない。
ついに1点を取ったのである。 ぱちぱちぱちぱち。
さあ、試合終了まであと1分…というとき。
韓国戦で最後の最後に同点に追いつかれ、PK戦にもつれこんだあの試合。
見ていた誰もがそれを思い出していたに違いない。
案の定、ペナルティエリア付近で日本が反則を取られて相手のフリーキック。
絶体絶命のピンチを迎えた。 あぁ、これまた寿命が縮まる思いである。
蹴る、蹴り返す、ぶつかる、もつれる。 黄色のユニフォームがゴールに押し寄せる。
これが平静に見ていられるだろうか。
日本の必死のディフェンスで、なんとかピンチを逃れた瞬間に、
ゲーム終了のホイッスルが、歓声の中で高らかに鳴り響いた。
ドーハで行われたアジア杯。 日本、2大会ぶり4度目の優勝である。
18年前、同じドーハで、ロスタイムに失点して初のW杯出場を逃した日本。
あのドーハの悲劇の舞台が、今度は歓喜の舞台となった。
午前3時、テレビを見終えて寝た僕は、3時間後の午前6時には目が覚めた。
浅い眠りで、寝ているのか起きているのかよくわからない3時間だった。
真夜中に興奮して見た試合が、なんだか夢のように思える。
いま、午前8時少し前である。
8時からはじまる 「サンデーモーニング」 で、試合を振り返るのが楽しみだ。