すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

ワッ・ハッ・ハー   前編

2008-10-20 16:40:11 | 小説
前書きです。

どうということのない、一場面です。
相手は、ほんとは女の人のはずで書き始めたんですけど、
いきなり、彼が乱入してきたので、
いいや、もう。ってことで、こうなりました。

妄想の種は、どこかの番組だったかインタビューだったかで、
すばる君が、まだ、昔の彼女を忘れきれてないんかも・・・って、答えたことです。

どんな恋だったんだろう?
相手がうらやましいけど。

続きで、本編です。
パラパラパラ・・・・・・

窓を叩く雨の音に、俺は、浅い眠りから引き戻された。

カーテンの向こうは、まだ夜の気配。

薄暗い間接照明のなか、テレビの砂嵐が、かすかな音をたてている。

わずかに香る、アロマ。
テーブルに残るグラスに、注いだままのビール。
食べかけたツマミと、散らかった雑誌。
傍らに、ギターと五線譜の束。

見慣れない部屋が、そこにある。

俺はソファに座り直す。

酔いと眠気とが、まだ俺の身体を支配しているせいか、
思考回路が、うまくつながらない。

今、何時、だ?

いや、違う。

ここは、どこ、だ?

俺はなぜ、ここに、いる?

いったい、なにが起きた?

考えようとして、
でも、記憶がはっきりしないことに、俺は少し、イラついた。


雨の音が激しくなった、と思ったとき、
部屋の電気が明るくなった。

「目、覚めたんや」

聞きなれた声が、した。

「シャワーでも浴びてきたら、どう? スッキリするで」

「おまえ、ここ、どこや」

「なんや、覚えてへんの? まあ、だいぶ、酔っとったからな、しゃあないか。
 俺の部屋やん」

上半身裸に、ハーフパンツのそいつは、髪をバスタオルで拭きながら、
キッチンカウンターの向こうに消えた。

戻ってきたとき、その手には、ミネラルウォーターのボトルが握られていた。

「飲む? それとも、シャワー先にした方がええかな。 汗、かいてへん?」

「あ、あぁ、じゃあ、シャワーにするわ」

立ち上がった俺に、そいつは、

「知ってる、と思うけど、タオルは洗面台横のボックス棚の中やで。
 着替えも、俺のんで良かったら、棚にはいってるわ」

「ん、すまんな」




熱いシャワーを浴びているうち、
次第に、俺の頭も、はっきりしてきた。

昨夜、久しぶりに仕事が早く終わったから、
メンバー同士でメシ行こうってことになったんやった。

気ノリのしないときには、行く気にはなられへんけど、
昨日は、俺のテンションも妙に高いままやったから、
誘いにのっかって・・・。

メシ食ってから、なんや飲みたらんかった俺は、
曲作りの打ち合わせと口実つけて、
あいつの部屋に、上がりこんだんやった。

バカ話して、酒飲んで、
戯れにギター弾いたりしたけど、
酔ってるから、曲なんかできるはずもないし、
結局、DVD見てるうちに、寝てしもうたんやな。

あいつはあいつで、
何かしたいこと、あったかもしれへんのに、
悪いこと、してしもうたな。




シャワー浴び終わって、リビングに戻った時、
あいつは床に座り込み、
スケッチブックに向かって、ペンを走らせてるとこやった。

「のど、渇いてない? 何か、飲むんやったら・・・」

手を止めて、立ち上がろうとしたあいつを、俺は制した。

「勝手にやってええなら、自分でやるわ」

「ええよ、冷蔵庫のもん、勝手に飲んでも」


俺は、小さな冷蔵庫を開けた。

中には、ミネラルウォーターと野菜ジュース、サイダー、ビール。
飲むもんばっかり。

どっかで見た光景と一緒な気がして、笑える。

まるで、自分の部屋の冷蔵庫の中身と一緒や。
男の一人暮らしなんて、どこもこんなもんなんか?

俺は、一番手前にあったミネラルウォーターのボトルを手に取った。





後編へ続く。