すばるに恋して∞に堕ちて

新たに。また1から始めてみようかと。

赤い靴  前編

2008-10-27 16:30:52 | 小説・舞音ちゃんシリーズ
本日やってきたYou&Jの会報とともに、安田君の主演舞台が決定したとの案内が。
いいなあ、いいなあ、お仕事があって。すばる君は、ないのかしら?
今度こそ、娘を行かせてあげたいなあ。
詳細が待ち遠しいわ。


さて、今回も、妄想小説のUPです。

前書きです。

妄想の種は、過日のレコメンの、亮ちゃん生電話時のすばる君の発言と、
ポポロ12月号の、右手を差し出している小さなカットです。

ここのところ、勝手に動き出しちゃってる感のある舞音ちゃんですが、
これも、既婚者ならではの、妄想なのかも。

続きで、本編です。
久しぶりのお休みの日。

朝から自室に籠もっていた彼が、昼すぎになって、ようやく顔を見せた。

「ごめん、うるさかった?」

私は私で、機嫌の悪い舞音をなだめながら家事をしていたのに、
おそろしく不機嫌そうな顔の彼を見て、
思わず、謝っていた。

「んー・・・」

言ったまま、彼はリビングのソファに身体を投げ出すと、
クッションを抱えて、寝る体勢だ。

さっきまで、わけもなく、ぐずぐず泣いては癇癪を起こしていた舞音は、
彼の姿が見えた途端、
手にしていたおもちゃを投げ捨てて、彼に近寄っていく。

「あ、あかん! パパ、寝んねやって・・・」

私が止めるより早く、舞音はソファによじ登り、

「パーパ?」

彼にめがけて、ダイブする。

「うッ・・・! ちょっ・・・何すんねん!!」

不意打ちをくらって、彼がマジ顔で怒る。

彼の剣幕にビックリした舞音は、一瞬、息を止め、
すぐに、大泣きになってしまった。

「あーあ・・・」

私はため息をつく。

舞音が、朝からぐずぐず言ってた理由を、私は知ってる。
彼が家にいるのに、ずっと、顔を見せなかったからだ。

普段から仕事の忙しい彼は、舞音と顔を合わせることが少ない。
たいていは、寝付いたとこの舞音の寝顔を見るだけだ。

たまに、お昼寝が長かったり、時間がずれたりして、
舞音が起きてる夜には、
これでもかっていうくらい、二人でくっつきあってじゃれている。

舞音はパパが大スキで、
パパも舞音が可愛くて仕方がない。
ふたりとも、淋しがりで、甘えたがりやから、ね。

なのに、今日は。

朝からお家にパパがいる気配がするのに、顔を見せない。
パパのお部屋は入っちゃダメって言われてるから、
行こうともしないけど、
でも、中にいるなってことは、
物音がしたり、かすかに鳴るギターの音で分かるらしい。

パパがいるのに、
一緒に遊びたいのに、
姿が見えない。

それがどうしてなのかは分からなくても、
舞音なりに、パパに出てきてほしくて、
朝から小っちゃい頭で考えたんだよね。

おもちゃ箱ひっくり返してみたり、
突然、TVの音、大きくしたり、
普段なら絶対しないようなイタズラして、私に怒られてみたり。

「どないしてん、何してんねん、舞音おいで」

って言って、パパが抱っこしてくれるの、待ってたんだよね。

なのに、やっと顔みせたパパは、
舞音を見もせんと、ソファに寝転んでしまったから、
振り向いてほしくて、強硬手段に出たってわけ。

まぁ、でも、舞音?
いくらあんたが月齢のわりに小柄でも、
不意打ちダイブは、ちょっとパパが気の毒かなぁ。
パパの身体、細いねんから、折れたり怪我したりしたら大変やねんで。

「ちょお、舞音、黙らせて。
 今、せっかく言葉出そうやったのに、飛んでしもうた」

私は仕方なく、舞音を抱き上げる。

のけぞって抵抗する舞音。

そりゃ、そうやんな。
抱っこしてほしい相手はパパなんやから、
ママに抱っこされたって、泣き止むどころか、火に油やわ。

「うぇ・・・うぇん・・・、パ、パァ、うッ、ひッ・・・ひっく」

私の腕の中から落ちそうなくらい大暴れの舞音。

「な、舞音、お散歩行こ。公園行って、ブランコしよ?
 ついでに、お買い物も行こう。お外、気持ちええよ?」

舞音に言い聞かせてる振りで、その実、彼にも聞こえるように、
ちょっと大げさなくらい声をはりあげた。

せやって、放っといたら、お休みの日に一歩も外に出ないくらいのひきこもりさんやし。

新しい曲の詞、
言葉が出んときに、狭い家の中におったって、しゃあないやん。
外に出たら、ちょっとは気分も変わるん違うかなあ。

いらんお世話かなあ。

お気に入りのピンクの帽子かぶせて、
ちっちゃいジュースとお菓子とハンカチ入れた、虹色のリュック背負わせて、
真っ赤なお靴、履かせた頃には、

舞音も、ちょっとおとなしくなった。

泣き疲れたんか、
泣いてもあかんと思ったんか、
変に素直に、されるがままの状態や。

涙でぐしょぐしょの顔を、濡れたタオルで拭いてやったら、
ものごっつ、怖い顔で、こっち睨んでる。

舞音、その目、パパそっくりやねんけど。

ママ、何もしてへんやん。
ママを睨むんは、お門違いやと思うわ。

「行ってきまーす」

彼に聞こえるように、
玄関からリビングに向かって声をかけた。

でも、返事は返ってこんかった。






静かになった部屋。

俺はソファに身体を投げ出したまま、目を閉じていた。

頭の中に飛び交う、様々な思いと単語を紡いで、詞にする作業は、嫌いじゃない。
すんなり、苦もなく、吐き出すように出てくるときもあれば、
どんだけ頭をひねっても、ばらばらな単語が点在するだけで、
一向に形にならん時もある。

今日は後者や。

どっかで、なんかが引っかかってる。
それが何かが分からんくて、妙にイライラすんねん。


と、突然、家の電話が着信を告げた。


無視して放っといたら、留守電に切り替わった。

『何ィ、おらんのォ? 舞音ちゃーん、ばァばやでぇ』

けたたましい声は、聞き覚えのある声やった。
俺は、慌てて受話器を取る。

「オカン!?」



後編へ続く