2007年船場吉兆が食材の消費期限を偽造表示、牛肉、鶏肉の産地を偽装表示したインチキや、客が食べ残した物を別の客に使い回していたのがバレて廃業に追い込まれた。記者会見で母親の女将が倅に回答をささやいたので、ささやき女将と揶揄されたのを思い出した。吉兆だけだったから目立った。今回の食材偽装問題は阪急、阪神ホテルズから始まったが「『赤信号』みんなで渡れば怖くない」と他のホテルも一斉に偽装を発表しだした。それならウチもと各デパートが次々に偽装を発表している。有名料亭、各料理の有名店がテナントで入っている老舗デパートの幹部3、4人並らび、記者会見でお詫びして頭を下げる光景が連日テレビで放映され、新聞を賑せている。ホテルもデパートも長い歴史があって消費者から一目置かれている。一方テナントの老舗料亭、有名料理店や有名料理人がいる店など、喧伝されているから客も疑念を持たない。流石に美味だと満足だ。これを不味い、食材がおかしいなどと言えば、言った本人が、無知だ、味が判らぬと軽蔑されるのが落ちだ。ホテル、デパートに老舗、有名料理店と顧客のトライアングルで夫々が信頼していたのが崩れた。これからは一々吟味して食するか。食材偽装は客からの指摘ではなかった、客には判らなかったことになる。この偽装問題を聞いて、江戸落語の『酢豆腐』を思い出した。知ったかぶりの通人気取りの伊勢屋の若旦那、気障で嫌らしくて界隈の江戸っ子達からは嫌われ者。シャクだからこの腐った豆腐を食わせてしまう話しだ。「到来物の珍味だが、何だかわからねえ。若旦那ご存知でしょう」と腐った豆腐を出す。すると若旦那知ったかぶって「これは酢豆腐でげしょう」と一口食べる。「若旦那、もう一口如何ですか?」「いや、酢豆腐は一口に限りやす」関西では『ちりとてちん』の演目で長崎名物のちりとてちんだと知ったかぶりをする。今回の食材偽装は芝エビと思って美味しく食べたのだが、それがバナメイエビと判ったまでだ。料理人の腕が良いので客が判らなかったのか、どうか。相当数の店だったが食べた客は気付かなかったようだ。顧客は舌鼓を打ち、美味かったと満足してお帰りになったのではないか。高級寿司屋のように時価で売価を付ければ偽装せずに済むだろうし調理師は余計な苦労をせずに済む。