草加市は令和4年度から5年度までの2年間に限って、住民票や印鑑証明などのコンビニ交付手数料を一律100円にするキャンペーンを実施します。その内容について12月議会で市に質疑しました。
草加市によると、キャンペーンの目的は市民サービスの利便性向上や、市役所窓口の混雑解消が目的です。通常は200円から450円かかる証明書の交付手数料を、コンビニ交付のみ一律100円(下表)にします。まずは、コンビニ交付を利用してみるキッカケとなることで、平日はなかなか市役所に行けない方や市役所に行くのが大変な方でも、自宅近くのコンビニで気軽に証明書が手に入り、また利用者が増えることで、窓口で長時間待つ現状を解消することなどに繋げる狙いがあります。
【コンビニ交付対応の各種証明書の交付手数料】(草加市の説明資料より抜粋)
■目標はコンビニ交付利用率50%
草加市は100円キャンペーンにより、コンビニ交付を利用する割合を令和4年度に30%、令和5年度に50%まで引き上げたいとの目標を示しました。証明書交付の半分が、コンビニで交付されるとの目標です。
■キャンペーンによる市財政への影響4700万円
便利になる一方、コンビニ交付の課題のひとつとしてコスト面があります。今回の100円キャンペーンで交付手数料を引き下げることにより、草加市の財政に合計4700万円の影響が生じます。内訳は、市への収入(歳入)が2600万円減収(令和4年度~5年度の合計)し、コンビニ等に支払う交付委託手数料として歳出が2100万円増加(同)する見込みです。
■1件当たり経費について
そもそも、コンビニ交付をおこなうための経費単価は1件当たり約900円(令和2年度実績)です。200円~450円の手数料をいただく証明書に、900円の経費を支払っています。
100円キャンペーンの目標通りの交付実績となった場合、経費単価はどのようになるのか質疑しました。市によると、令和4年度は1件当たり約270円、5年度は約210円に下がる見込みだと説明しました。(それでもキャンペーン収入100円の倍の経費ですが…)
なぜこのようなことになるのでしょうか?
自治体がコンビニ交付をおこなう経費として、固定費と流動費があります。固定費は、システム委託料と「J-LIS(地方公共団体情報システム機構)負担金」として年間約1172万円を支払っています。コンビニ交付が何件であっても同額を支払います。流動費は、交付1件あたりにかかる「交付委託手数料」で、令和2年度は約169万円でした。こっちは交付実績により変動します。
つまり、コンビニ交付件数が増えると、固定費を交付件数で割った分だけ経費単価は下がる仕組みです。(下グラフ参照)
【コンビニ交付経費と経費単価(見込み)】(佐藤作成)
■責任の所在について
証明書の発行ミスや個人情報流出など実際に問題が生じた際の責任関係について市に再確認しました。
草加市では昨年度、市役所第二庁舎の証明写真機で、写真機設置会社のミスによりマイナンバーカードの発行業務が大幅に遅れる問題が生じました。しかし、市と設置会社との間には、市が場所を貸すだけの契約関係(自動販売機と一緒)しかありませんでした。当該申請に係る契約関係は、J-LIS(地方公共団体情報システム機構)と設置会社との契約で、市の裁量が届かない部分でした。にもかかわらず、その事故対応や市民への説明を、権限も契約もない草加市役所の市民課が担いました。
この事例と同様にコンビニ交付は、コンビニで何が起きたかを市役所は知るすべも権限もありません。コンビニ数の多さからも、この事例以上に問題を察知し対応することが困難です。
コンビニ交付の運用は「コンビニの端末(キオスク端末)」から「証明書交付センター」を経由して「自治体(草加市等)」と接続されています。その責任範囲は以下の通りです。
・コンビニの端末↔証明書交付センター:コンビニ事業者の責任
・証明書交付センター:J-LISの責任
・証明書交付センター↔自治体:各自治体の責任
■コンビニと連携した案内を
コンビニ交付は、すべてのコンビニでできる訳ではありません。専用のキオスク端末があるコンビニのみで交付できます。しかし、自治体では、その設置状況を把握できません。市民から「100円キャンペーンはどこのコンビニでできますか?」と聞かれても、市役所では「分かりません」状態です。これでは、キャンペーンを行っても混乱するのがオチです。そこで、市内のコンビニが主体となっていただくような周知方法や、市役所への問い合わせへの対策など事前に準備しておくよう求めました。
■キャンペーン後について
窓口の半額以下、しかも役所に行かずに証明書が受け取れる100円キャンペーン。その期間は、コンビニ交付件数が増加するでしょう。
市の窓口対応が減少した分だけ窓口体制を見直して、他の部局に配置換えするなどの検討が生じるかもしれません。しかし、2年限定ですので、キャンペーン終了後を考えれば現実的に職員体制の見直はできないでしょう。コンビニ交付実績も一過性で終わる可能性もあります。
厳しい財政状況下で4700万円もの影響を伴うキャンペーン。その先の市役所をどうしていきたいのかが重要
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