殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

名前

2009年07月28日 13時50分03秒 | みりこんぐらし
長男がお腹にいた時から、夫と相談して名前は決めてあった。

「岬(みさき)」

いつも呼びかけて、抱っこできる日を楽しみにしていた。


しかし、生まれて病院にいる間に

義母が知り合いの紹介で、あるお寺の僧侶に名付けを頼んでしまった。

ガ~ン!

ほどなく、いくつかの名前を書いた紙が届き

その中から好きなのを選べと言う。


好きもなにも…

「頼益(よります)」「経稀(けいき)」「常時(つねとき)」

我が理想から百万光年ほどかけ離れた微妙な名前が並び、絶望。

おすすめは「房太郎(ふさたろう)」らしい。

房太郎だけ、大きな字で書いてある。

ミサキ…一夜にしてフサタロウ…。

あんまりじゃ…。


ハッ!隅に小さく「マコト(仮名)」とある。

選ぶも何もない…平凡そうなのはこれのみ。

うっうっう…さようなら…ミサキ…こんにちは…マコト。


今の私ならフサタロウも有りだけど

若かったもんで、イメージ先行だったわけよ。

見も知らん坊サマに付けてもらうよりは、自分たちで付けたかったしさ。

悲しかったぜっ!

でも名前は生涯つきあうもの…

もめて嫌な思い出になるのは避けたかったのよぉぉ~!


それでもまぁ呼んでりゃ慣れてくるもんで、悲しみも薄れたある日…

名付け親の僧侶から、決まった名前を書いた額が届く。

アフターサービスみたいなものであろう。


      父 ヒロシ

      母 ヨシコ

      長男 マコト


ヨシコ…?なんでヨシコ?

「あ~ら!間違えちゃった~!」

義母が叫ぶ。


この僧侶は、両親の名前を考慮して子供の名前を決めるという。

仲介してくれた知り合いに頼む時

お父さんの名前は?と聞かれて「ヒロシ」

お母さんの名前は?と聞かれて、義母はつい自分の名前を言った。


確信犯ではない。

この人、本当にうっかりそういうことをやってのける。

フサタロウだろうと、マコトだろうと

夫とその母親の間に生まれた、それこそ禁断の子供用の名前である。

事故だ…事故。

ひたすら自分に言い聞かせる。


さて6年後、ひょっこり二人目が出来る。

胎児が男とわかってから、私は密かに決意していた。

「この子は卓郎(タクロウ)じゃ!」


前回は失敗したが、今度こそ!

夫の初浮気も発覚して、つらかった妊娠期間…

これくらい許されてもよいはずじゃ!


お腹のタクロウちゃんは、月満ちて元気に生まれた。

生まれて数日後、初めて見舞いに来た夫に言う。

       「名前は決めてるからね」

愛人のために、女房のお腹の子はよその子だ…などと世間に吹聴した男に

名前なんぞ付けさせないもんね~!


あ~、それ…夫はのんびりと言う。

「もう決まってるよ」

       「ええっ?」

「ヨシキ(仮名)。お袋が自分のヨシの字をつけて、ヨシキになった」

       「タクロウよ!この子はタクロウ!」

「オレは構わないけど、もう届けは出したみたいだぜ」 


くっそ~!またもや失敗に終わった~!

なにしろこっちは入院中…身動き出来る者が有利なのだ。

夫と完全に和解しないまま出産に至ったため、連絡ミスが敗因であった。


もう何を言っても遅い。

名付けの段階で汚点を残すより

おばあちゃんにかわいがられるほうが、この子にとって幸せだ。

わ~ん!さようなら…タクロウ…こんにちは…ヨシキ。


呼んでいると、また慣れてきた。

ヨシキもかわいいじゃないか…。

半ばヤケにも似たあきらめを道連れに生きるようになったのは

この時からだと記憶している。


余談ではあるが、夫は子供たちの名前を正しく書けない。

棒が抜けたり多かったりする。

たまたまこの二つの名前に、夫が勘違いしたまま覚えた漢字が含まれていた。


練習させたこともあるが、直らない。

指摘されると、意固地な反抗心が芽生えるようだ。


子供たちも成長し、何かの機会に夫が名前を書くことも無くなったので

これはこれで安全、と放置することにした。

成人した子供の名前を悪用する懸念が無いからである。

この男ならやる。


愛情の有無を問うよりも、心配がひとつ減ったことを喜ぼうではないか。

図らずもこれらの名前になったのは、そのためだったのかもしれない…

子供たちも無事大きくなったしね。

これぞプラス思考!と、満足する私である。
コメント (22)
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