殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ハンドパワー

2010年12月14日 08時32分06秒 | みりこんぐらし
おととい、スーパーで買物をしていたら、後ろから声をかける者がいる。

「腰は良くなりましたか?」

      「はあっ?」

まったく見覚えが無い中年女性。

片手にスーパーのカゴを下げ、素顔にメガネをかけた

いかにも地味でおとなしそうな人だ。


「腰、大丈夫ですか?」

その人は、にっこりと微笑みながら、なおもたずねる。

私は頭も顔も性格も、悪い所はいっぱいあるけど、腰はなんともない。

    「お人違いじゃありませんか?

     私はあなたを存じ上げませんし、腰も悪くはありませんのよ」


女性は、気にも留めずに言った。

「私、○○町の斉藤といいます」

知るかい…。

「私、ハンドパワーがつく修行をしたので、腰の痛みが治せるんです。

 もし腰が悪かったら、治してあげたいなと思って」

おまえはミスターマリックか…。

    「痛くないから、いいですよ」

されてたまるものか、気味の悪い…。


「痛くないですか?痛ければ、ハンドパワーで治してあげられるんですよ」

私の腰が健康なのを残念がっておられるご様子。

断られたら、さっさとあきらめればいいものを

もったいぶって次の展開に進もうとする。

こっちもまた、おかしいと思ったら、さっさと離れればいいものを

変に引っかかってつつきたくなるのが悪い癖。

腰はいいから、このヤマイを治してもらいたいもんだ。


よくいらっしゃるのだ。

ちょっと宗教めいたことをかじって勘違いし

人の弱みにつけ込んで、自分の力…あればの話だが…

を見せびらかそうとするバカが。


元々人と接触するのがヘタで、日常生活がうまくいかないから

こういう変な方向に目が向く。

動機から間違っているのに気づきもせず

おかしな武器を手に入れたつもりになって、人をどうこうしようなんて

厚かましいにもほどがある。

冷酷かつ邪悪な私であるから、間違いを正してやろうなんて

だいそれた望みは毛頭無い。

ただ、いじりたくなる。


   「治すことはできても、いい悪いは、わからないものなんですか?」

失礼な質問だろうから、できるだけ愛想良くたずねた。

「いい悪いは、見ればおよそわかるんですけど…」

    「私はわからなかったと?」

「はい」

    「体がでかいから、きっと腰痛持ちだろうと思われた…と」

「あの、いろんな人に声をかけるのも、修行なんです。

 ちょっと体験してみませんか?どこか気になるところがあれば…」

敵もさる者…行き詰まったら、強引に本線に戻そうと

手のひらをそろりそろり、私に向けようとする。

どこにパワーがひそんでいるのか、何の変哲もないハンドである。


    「じゃあ虫歯」

「虫歯はちょっと…傷むんですか?」

    「ううん、銀のとこ、元通りにしたい」 

「そういうのは…」
 
    「じゃあ絶壁…ほら、後頭部がぺっちゃんこでしょ?」

「そういうのも、ちょっと…」

    「なんで?頭蓋骨も腰骨も、同じようなもんでしょ?」

「骨は…」

    「じゃあ肉?肉ならいいの?痩せさせて!」

「そういうのは…」

    「骨もだめ、肉もだめ、じゃあどこの何が治るの?スジ?」

「体験してもらって、効果を実感したらわかると思うんですけど」

    「だから、絶壁治してほしいんだってば。

     ハンドパワーでプーと膨らませてくれたらいいのよ。

     修行なされたんでしょ?」


女性は意を決したように言った。

「これ以上ひどくならないように、パワーを送ることはできます」

    「これ以上って、あなた、もう無いですよ。

     目の後ろ、すぐ後頭部なんですよ?

     ポニーテールにしたら、武士みたいなんですよ?」


「失礼します」

女性は不機嫌に言い捨てると、早足に去って行った。

これぐらいでひるんでいたのでは、修行にならんではないか。


体に痛みを抱えていれば、ワラにもすがる思いで

ハンドパワーとやらを施術してもらう人も、中にはいるだろう。

それで治ればいいけど、仲間に引き入れられたら

なんだか医者に行くより金がかかりそう。

人を治したかったら、医大へ行け。

こういうのがいるから、気をつけてくださいね。  
コメント (45)
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