学生時代、東京を通り越した秦野という街で暮らし、その街で多分、学生向き最高級、いや、最高給のアルバイトをしていました。着物で、一人ずつお座敷を担当する「しゃぶしゃぶ」屋さんです。お肉4枚追加で8000円でした(一度追加オーダーを伝票に書き忘れたので、強烈に記憶している価格。女将さん怒らなかったなぁ、「1回は許してあげる」って言ってくれたなぁ)。別にやらしい系ではありません(まぁ、私が勤まったんですから、そうお考えになる方はいらっしゃらないでしょうが)。余談ですが、むかし、「神奈川=横浜」だと思っていた私にとって、秦野はある意味、カルチャーショックでした。寮の裏にはタヌキ、どこからともなく田舎の香水(牛さんの匂い)、盛り場はイトーヨーカ堂と不二家。田舎者のわたしの第一歩としては、大変、馴染みやすいお土地柄でした。
お座敷を担当しない日は、お玄関に立ち、ひたすらお客様を待つ(お迎えする)役目をしていました。にっこり笑って、「いらっしゃいませ~」と言うこと、数時間。それでお給料が頂けたのですから、若さって、いや、バブルって、凄い!
そのお玄関には大きな大きな水槽がありました。そして、多分近い将来お刺身になる鯛たちが元気に泳いでいました。何時間も一緒に居ると、何だか気持ちが伝わってくるような気がするのです。全く瞬きしない目をずーっと私に向け(てるように感じる)、「何も知らないと思っているんだろう?分かっているんだよ。近々、刺身になるってね。」と訴えてくる(と、感じる)のです。無力の私は、ただ見詰め合うだけ、仕舞には吐き気がするほど、気持ちが悪くなったりもしたものでした(もしかしたら、水槽の湾曲のせいもあったかも)。
という訳で、何となく、お魚を眺めることが苦手です。じーっと見ないで!私に何も訴えないで!と、思ってしまって……。
<写真は本文とは関係ありません。お魚の写真を探したけど無かったから、お魚が居そうな雰囲気ってことで>