大川原有重 春夏秋冬

人は泣きながら生まれ幸せになる為に人間関係の修行をする。様々な思い出、経験、感動をスーツケースに入れ旅立つんだね

ヘンリー・ムア ブリジストン美術館

2010-08-04 17:50:47 | 美術
数年ぶりにブリジストン美術館に立ち寄ってみました。『ヘンリー・ムア 生命のかたち』というタイトル(テーマ展示)の展覧会を覗いてみたのですが、彫刻作品は六点という大変少ない展示数でした。彫刻家としてのヘンリー・ムアを浮かび上がらせる、という意図はないみたいです。ポスターをよく見るとタイトルの後に(テーマ展示)とあります。
かなり以前ヘンリー・ムアの彫刻を扱ったことがあり、少々関心があるのですが、今回の展覧会は学ぶことは多少ありましたが、あまり感動しませんでした。
今回学んだことは「田舎の小さな村に住み、石や骨のような拾った自然物から霊感を得ながら制作を続けた」という事実をはじめて知ったことです。また、僕も一度だけイギリスの「ストーンヘンジ」をロンドンからバスで訪れたことがあるのですが、ヘンリー・ムアが「ストーンヘンジ」を題材にしてリトグラフを制作していたことにちょっと驚きました。ヘンリー・ムアが、生涯を通して探求し続けたテーマは、人体だったそうで、「立つ」「座る」「横たわる」という3つのポーズについて比較し、横たわる人体は「最も自由で、かつ安定している」と語ったことはよく知られた事実です。

《ふたつのかたちによる横たわる人体:2重円 》
という作品は特に印象に残る素晴らしい作品ですね。
1976年に制作した《柱を背にすわる二つの人体》というタイトルの5色刷りリトグラフ作品はクオリティの高さを感じ思わず部屋に飾ってみたい、という気持ちになりました。彫刻家の版画は一種独特の造形美が伝わってきて、時々所有欲が沸き起こります。(日本の彫刻家だと柳原義達さんのデッサンは特に好きです。)
ヘンリー・ムアの創作姿勢の根底には人間への深いヒューマニズムがあり戦争の悲惨さを記憶し生命の尊厳を重視する美学を感じます。日本の国内の美術館には沢山ヘンリー・ムア作品が所蔵されているように記憶していますが大規模な展覧会というのはなかなか様々な諸事情で実現はできないのかな、と今回の(テーマ展示)というサブタイトルを見て改めて考えさせられました。
今回の展覧会は☆☆でした。