沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

中北組合に対する沖縄県の責務を考える(その10)※県の事務処理の適正化

2016-07-01 09:48:11 | ごみ処理計画

その10は、沖縄県の事務処理の適正化について書きます。

その前に、下の画像(2つ)をご覧下さい。

これは、中北組合に対する沖縄県の技術的援助に基づいて、ごみ処理施設に関する県の市町村に対する技術的援助の特徴を整理した資料です。

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ごみ処理施設とは設備と建物のことを意味していますが、1つ目の画像にあるように沖縄県においては設備の処分制限期間が経過する前と経過した後では県の技術的援助の内容がガラリと変ります。

設備の処分制限期間が経過しても、沖縄県に廃棄物処理法の基本方針の適用を除外したり地方財政法や補助金適正化法の適用を除外したりできる権限はありません。しかし、中北組合は県の技術的援助によって設備の処分制限期間を経過した段階で溶融炉を休止して、溶融炉のために整備した建物部分を補助金の交付の目的に反して使用しています。

しかも、2つ目の画像にあるように、将来、中北組合が新たにごみ処理施設を整備する場合は、その段階で、①廃棄物処理法の基本方針に適合する「地域計画」を策定して、②ごみ処理計画を改正すれば国の補助金が利用できるという技術的援助を行っています。

沖縄県が何を根拠にこのような技術的援助を行っているかは不明ですが、中北組合としては県からこのような技術的援助を受けたときは相当喜んだと思います。なぜなら、溶融炉を休止しても、①長寿命化が不要になり、②補助金の返還も不要になり、③最終処分場の整備も不要になり、 ④焼却灰の民間委託処分を行うことができるからです。そして、焼却炉が老朽化したときは国の補助金を利用して更新又は新設することができるからです。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、上の2つの画像における国の施策と沖縄県の技術的援助の関係を整理した資料です。

このように、県の技術的援助(沖縄ルール)は設備の処分制限期間を経過した瞬間から国と対立する構造になっています。そして、改めて国の補助金を利用するときが来たら国の施策に協力するという独特の考え方をしています。

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この沖縄ルールにおいて最も特徴的なのは、県が法令違反を無視しているところです。

設備と建物の処分制限期間を同じ期間にしなければ補助金適正化法第22条の規定に違反することになりますが、沖縄県は建物の処分制限期間を設備の処分制限期間と同じ期間として中北組合に技術的援助を与えています。また、設備の処分制限期間を経過したときに地方財政法第8条の規定の適用を除外すると国の重要な施策である長寿命化計画を推進することができなくなりますが、沖縄県においては県の判断で長寿命化を免除しています。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、中北組合が県の技術的援助に従って平成28年度が策定期限になっているインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定する場合を想定して作成した資料です。

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このように、中北組合は県の技術的援助に従ってごみ処理施設の長寿命化を実施しない(拒否する)「行動計画」を策定することになりますが、国は長寿命化を実施していない(拒否している)市町村に対して財政的援助を与えることはできません。なぜなら、そのような市町村は国の施策に協力していない市町村だからです。しかも、法令に違反して事務処理を行っている市町村だからです。

なお、「行動計画」には維持管理コストと更新コストの見通しを記載することになっていますが、中北組合が県の技術的援助に従って「地域計画」を策定する場合は、自主財源のみで維持管理を行い、更新又は新設を行うことになります。

次に、下の画像をご覧下さい。

これは、長寿命化に関する国の施策と「行動計画」との関係を整理した資料です。 

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国は、市町村がごみ処理施設の効率的な運用を行うために、①維持管理コストを平準化して、②更新コストを縮減することを目的として、設備の長寿命化を行うように技術的援助を与えています。そして、目的を達成するために財政的援助を与えています。

したがって、中北組合のように溶融炉を休止している場合は、ごみ処理施設の効率的な運用を行っていない(地方財政法第8条の規定に違反している)ことになるので、都道府県を通じて再稼動と長寿命化を求めることになります。また、溶融炉を廃止する場合は包括承認事項に適合する代替措置を講じることを都道府県を通じて求めることになります。

しかし、沖縄県は中北組合に対して、再稼動や長寿命化を求めていません。そして、代替措置を講じて廃止することも求めていません。

中北組合が内地の自治体であったなら、溶融炉を休止するときに代替措置を講じて廃止していたはずです。そして、今頃は国の補助金を利用して焼却炉の長寿命化を実施していたはずです。したがって、「行動計画」は更新コストの見通しを立てるだけで策定できたことになります。

しかし、中北組合は平成27年度(供用開始から13年目)においても溶融炉を休止したままごみ処理施設の長寿命化計画を策定していません。もちろん、焼却炉の長寿命化も実施していません。

ということで、ここからが本題です。

下の画像は、沖縄県の不適正な事務処理を適正化するために必要となる要件を整理した資料です。

なお、この記事における不適正な事務処理とは、県の職員が服務規程に違反して行っている事務処理のことを言います。

このブログの管理者は、上の画像にある8つの項目に対して県の職員が服務規程に従って「全体の奉仕者として誠実かつ公正」に与えられた事務を遂行すれば、平成27年度までの不適正な事務処理は適正化されると考えています。

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ここからは、上の8つの項目ごとに適正化に関する記事を書きます。

下の画像は、1つ目の項目の適正化に関する資料です。

平成26年度において最終処分場を整備していない14市町村の中で焼却灰の溶融スラグ化を行っていたのは4市村です。したがって、県の職員には4市村のために誤りを修正する責務があります。また、全体の奉仕者として県民のために正確な情報を提供する責務があります。

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下の画像は、2つ目の項目の適正化に関する資料です。

中北組合は防衛省の補助金を利用してごみ処理施設を整備していますが、平成26年度において溶融炉の廃止を前提とした財産処分の承認手続は行っていません。しかし、沖縄県は環境省に対して廃止していると報告しています。そうなると、環境省は防衛省に対する財産処分の承認手続が行われていると判断してしまうことになります。なぜなら、環境省は地方公共団体が法令に違反して事務処理を行うとは考えていないからです。したがって、県の職員には環境省に対して正確な報告を行う責務があります。

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下の画像は、3つ目の項目の適正化に関する資料です。

中北組合が溶融炉を休止していることに対して県の職員が地方財政法第8条の規定に違反していないと判断している場合は、沖縄県内の全ての市町村が長寿命化を拒否することができることになります。しかし、中北組合の広域処理のパートナーである浦添市は処分制限期間を経過した直後に溶融炉の長寿命化を実施しています。また、那覇市南風原町環境施設組合はこれから長寿命化を実施する予定でいます。そして、沖縄県はこの1市1組合が長寿命化を実施するための「地域計画」を策定する段階で、国と一緒に協議を行っています。したがって、中北組合の事務処理は明らかに法令に違反しているので、県の職員には地方自治法第245条の6の規定に基づいて是正の勧告を行う責務があると考えます。

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下の画像は、4つ目の項目の適正化に関する資料です。

市町村に対する都道府県の是正の勧告については、市町村に拒否する権利が残されています。しかし、中北組合が県の勧告に応じない場合は県の職員の責務を果たすことができなくなるので、その場合は地方財政法を所管している総務省から中北組合に対して是正の要求を行うように要請する必要があると考えます。なお、地方公共団体に対する国の是正の要求については拒否することができないことになっています。

原寸大の資料

下の画像は、5つ目の項目の適正化に関する資料です。

この事務処理は、実際には前の地方財政法第8条違反に対する是正の勧告や是正の要求と同時に行うことになりますが、万が一、中北組合が長寿命化の要請に応じなかった場合は、ここで県の技術的援助は終了することになります。ただし、中北組合が長寿命化に応じない場合は、廃棄物処理法の基本方針に適合しない事務処理を行っていることになるので、国の補助金を利用することはできないことになります。したがって、当然のこととして浦添市との広域処理は白紙撤回ということになります。

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下の画像は、6つ目の項目の適正化に関する資料です。

この項目については、平成26年3月に中北組合がごみ処理計画を改正したときに一度失敗しています。というよりも、不適正な技術的援助によってそのような結果になったと言えます。しかし、平成28年度から第四期沖縄県廃棄物処理計画がスタートしています。したがって、県の職員は今度こそ適正な技術的援助によって中北組合に対してごみ処理計画の見直しを要請する必要があると考えます。それでもなお、中北組合が見直しに応じない場合は5つ目の項目と同じように県の技術的援助は終了することになります。もちろん、その場合は広域処理は白紙撤回になります。

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下の画像は、7つ目の項目の適正化に関する資料です。

この項目に関する事務処理は、6つ目の項目と同時に行うことになります。したがって、6つ目の項目に関する適正化ができなかった場合はこの項目も適正化できないことになります。逆に、6つ目の項目に関する適正化ができればこの項目も自動的に適正化できることになります。

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下の画像は、最後の8つ目の項目の適正化に関する資料です。

中北組合が県の技術的援助を拒否又は無視することはないと思われますが、万が一、そのようなことになったら県としても技術的援助を終了せざるを得ません。なお、中北組合にとっては浦添市との広域処理は千載一遇のチャンスと言えますが、浦添市にとってはそれほど大きなメリットはありません。したがって、県としては浦添市の負担が大きくならないように十分に注意をして技術的援助を与える必要があると考えます。 

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では、沖縄県は中北組合に対してどのような技術的援助を与えれば良いのか?

失礼ながら、ここからは県の職員が広域処理に関する事務処理の経験が浅く、地方財政法や廃棄物処理法等の法令に関する認識も十分にあるとは言えないという前提で記事を書きます。

下の画像は、中北組合が休止している溶融炉を再稼動する場合を想定して作成した資料です。

中北組合が浦添市との広域処理を検討課題から除外している場合は、県の技術的援助はここで終了することになります。ただし、中北組合が所有している溶融炉は国内では稼動している事例や長寿命化が行われている事例のない特殊な溶融炉なので、県も参加して十分なリスク評価を行う必要があると考えます。なお、浦添市から見た場合、広域組合を設立すると中北組合の溶融炉を共同で運用して行くことになるので、溶融炉の再稼動は浦添市の財政に累を及ぼすような施策になると考えます。したがって、県としては単独更新又は単独新設を前提にした技術的援助を与えることになると考えます。

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 下の画像は、中北組合が溶融炉を廃止する場合を想定して作成した資料です。

このブログの管理者は、中北組合と浦添市の広域処理を推進するためには中北組合の溶融炉は廃止するしかないと考えています。しかし、単に廃止しただけでは焼却灰の民間委託処分を続けて行くことになってしまいます。それでは浦添市のごみ処理計画との調和を確保することはできません。したがって、廃止するのであれば、その前に包括承認事項が適用される代替措置を講じる必要があります。

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下の画像は、中北組合が焼却炉の長寿命化を行わない場合を想定して作成した資料です。

中北組合の焼却炉は浦添市の溶融炉とほぼ同時期に供用を開始しています。そして、浦添市は既に焼却炉と溶融炉の長寿命化を実施しています。したがって、中北組合が焼却炉の長寿命化を行わない場合は浦添市のごみ処理計画との調和を確保することができないことになります。なお、中北組合の焼却炉は平成28年度で供用開始から14年目になるので、既に長寿命化を実施する時期を迎えていることになります。

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下の画像は、中北組合が焼却灰の民間委託処分を続ける場合を想定して作成した資料です。

この場合は、中北組合の方から広域処理を白紙撤回することになりますが、県としては委託処分を中止するための技術的援助を与える必要があります。なぜなら、中北組合による焼却灰の委託処分を適正な事務処理とした場合は他の市町村に対して最終処分場の整備や溶融炉の整備を要請することができなくなるからです。したがって、県の職員の責務として最終処分場の整備を要請する技術的援助を与えることになると考えます。

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下の画像は、中北組合が焼却炉の長寿命化を行う場合を想定して作成した資料です。 

広域組合を設立すると中北組合の焼却炉は広域組合の財産になります。したがって、浦添市も共同で運用して行くことになりますが、浦添市から見た場合は既に長寿命化を実施していなければならない焼却炉になります。したがって、県が広域処理を前提にして技術的援助を与える場合は遅くとも広域組合を設立する前に長寿命化を終了するように要請しなければなりません。しかも、国の補助金を利用して長寿命化を行う場合はその前に「地域計画」を策定しなければなりません。そして、そのためには代替措置を講じて溶融炉を廃止しなければなりません。そうなると、平成29年度には実際に代替措置を講じなければならないことになります。

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下の画像は、中北組合が代替措置を講じて溶融炉を廃止する場合を想定して作成した資料です。

このブログの管理者は沖縄県に代替措置に関するノウハウがあれば、中北組合が溶融炉を休止するときに技術的援助を与えていたと考えています。したがって、県としては市町村の自治事務に関する自主的な取り組みを支援するという形で技術的援助を与えるしかないと考えています。ただし、平成28年度はインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」の策定期限になっているので、遅くとも今年の12月までには代替措置に関する具体的な計画を決定しなければならないことになります。また、平成29年度に代替措置を講じなければ広域処理を推進することができなくなってしまいます。

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下の画像は、中北組合が平成29年度に代替措置を講じて溶融炉を廃止することができなかった場合を想定して作成した資料です。 

中北組合が平成29年度に代替措置を講じることができなかった場合は残念ながら広域処理は白紙撤回ということになります。しかし、そのままでは自主財源(40億円以上)によりごみ処理施設の更新又は新設を行うことになるので、県としては時期が遅れたとしても中北組合に対して代替措置を講じるように要請する必要があると考えます。なお、中北組合がその要請を拒否又は無視した場合は、補助金適正化法の規定を遵守して財産処分の承認手続を行うことを要請することになると考えます。

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下の画像は、平成28年度において県が必要となる技術的援助を中北組合に対して与えなかった場合を想定して作成した資料です。

県が、平成27年度までの中北組合に対する技術的援助を適正な技術的援助と判断している場合はこのような結果になります。

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下の画像は、中北組合がインフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」を策定する場合の選択肢を整理した資料です。

この「行動計画」については、今年度中に策定することを県は国から市町村に周知するように要請されています。したがって、県が中北組合に対して技術的援助を与えない場合は、結果的に溶融炉は代替措置を講じずに廃止することになるので自主財源による単独更新又は新設を前提とした「行動計画」を策定することになります。

中北組合に対しては、民間のコンサルタント等もアドバイスを行うことになると思いますが、広域処理を前提とした「行動計画」の策定について適切なアドバイスを行うことができるコンサルタントはそれほど多くはありません。しかも、中北組合は国内で稼動している事例や長寿命化が行われている事例のない溶融炉を所有しています。そして、その溶融炉を休止したまま焼却灰の民間委託処分を行っています。その焼却灰は塩分濃度の高い流動床炉の飛灰(ばいじん)です。したがって、中北組合が適正な「行動計画」を策定することは、かなりハードな事務処理になります。その前提で考えると、代替措置を講じて溶融炉を廃止するという施策以外は、「行動計画」を策定する場合の選択肢にはならないと考えます。

 

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最後に、下の画像をご覧下さい。

これは、県が廃棄物対策の概要(平成27年12月版)の発表を修正する場合の事務処理と環境省の一般廃棄物処理実態調査結果(平成26年度)に対する報告を訂正する場合の事務処理に関する注意事項を整理した資料です。

県は中北組合の溶融炉は「休止」しているという修正及び訂正を行うことになりますが、平成26年度においては9月に会計検査院が溶融炉を休止している市町村に対して不適正であるという意見表示を行っています。そして、環境省に対して再稼動するか廃止する措置を講じるように求めています。このため、環境省に対して県は単に休止しているという報告はできないことになります。また、県民に対しても沖縄県における中北組合(2村)の今後の課題等を伝える必要があると考えます。したがって、県は修正及び訂正の事務処理を行う前に中北組合の意向を確認しておく必要があると考えます。

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以上が、このブログの管理者が考えている沖縄県の事務処理を適正化するための要件です。

なお、中北組合に対する県の技術的援助がどのようなものであっても、インフラ長寿命化基本計画に基づく「行動計画」には、休止という選択肢はありません。

したがって、県には県の技術的援助に従って溶融炉を休止している中北組合に対して、適正な「行動計画」を策定するための技術的援助を与える責務があると考えます。

その11に続く