沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

改めて中北組合に対する沖縄県の不適正な技術的援助を考える(その5)※地方財政法第8条違反

2016-07-26 23:17:30 | ごみ処理計画

その5は、地方財政法第8条違反について書きます。

その前に、下の画像をご覧下さい。

これは、補助金適正化法第22条に関する資料です。 

補助金適正化法第22条の規定には「ただし書き」があり、具体的な規定は施行令第14条に書かれていますが、簡単に説明すると国が定めている処分制限期間を経過した場合は財産の処分を行っても補助金を返還する必要がなくなるという規定です。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像が、今日のテーマである地方財政法第8条の規定です。

このように、地方財政法第8条の規定には「ただし書き」はありません。したがって、法制度上は補助金適正化法に基づく処分制限期間を経過した場合であってもこの規定が適用されることになります。ただし、この規定は財産を所有している場合の規定なので廃止した場合は適用されないことになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像(3つ)は、地方財政法第8条の規定に、補助金適正化法第22条の「ただし書き」をそのまま付け加えた資料です。

県がどのような根拠でこのような「ただし書き」を付け加えているのかは分かりませんが、中北組合に対する技術的援助についてはこのような規定に基づいて地方財政法第8条の適用を除外しています。 

このように、中北組合は県の技術的援助に従って処分制限期間を経過した溶融炉を休止して所有財産の運用を放棄しています。 

市町村が実施するごみ処理施設の長寿命化は市町村の自治事務に関する施策になるので、国から法令に基づく根拠のない要請等を受けても地方自治法の規定に基づいて拒否することができます。そして、中北組合は県の技術的援助に従って実際に長寿命化を拒否しています。

原寸大の資料(画像をクリック) 

  

下の画像は、地方公共団体に対して国が長寿命化を要請する場合の法令等の根拠を整理した資料です。

インフラ長寿命化基本計画や廃棄物処理施設整備計画は、地方公共団体からすれば国が勝手に決めた計画になります。そして、廃棄物処理法の基本方針は環境大臣が勝手に決めた方針になります。したがって、地方財政法第8条の規定がなければ国から長寿命化の要請を受けても拒否することができます。しかし、国はこの規定を根拠にして長寿命化を要請しています。ところが、沖縄県はこの規定の適用を除外しています。そして、中北組合は長寿命化を拒否しています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は「ただし書き」はなくても、一般的な法令解釈に基づいて地方財政法第8条の適用が除外されるケースを整理した資料です。

このように、地方財政法第8条の適用が除外されるケースは、物理的に所有財産の運用が困難になった場合に限られることになります。したがって、中北組合のように「運転経費が高い」という事由では運用を放棄することはできません。もしも、国がそれを認めてしまったら、国内で溶融炉の長寿命化を実施する市町村は激減するでしょう。しかし、沖縄県は認めています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像(2つ)は、補助金適正化法第3条第2項の規定です。

この規定にも「ただし書き」はありません。したがって、中北組合にも適用されることになります。ただし、沖縄県は地方財政法第8条の規定に「ただし書き」を付け加えているので、この規定の適用も除外していることになります。その意味では、中北組合の法令違反がもう1つ増えることになりますが、今日は地方財政法違反がメインテーマなので、補助金適正化法違反については軽く触れておく程度にします。 

溶融炉のある建物とない建物では溶融炉のある建物の方が大きくなります。したがって、溶融炉を休止すれば溶融炉のために整備した建物部分を補助金の交付の目的に反して使用することになりますが、県はこのこともスルーしています。その理由は分かりませんが、中北組合に対する県の技術的援助は結果的に設備と建物の処分制限期間を同一に扱っていることになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

 

下の画像は、各省各庁が定めている財産処分の承認基準から共通する部分を抜粋した資料です。 

これは、経過年数が10年を超えた財産の処分に当って国が「包括承認事項」を適用する場合の前提条件になります。この前提条件を満たしていれば原則として補助事業者は国の承認を受けずに建物の目的外使用を行うことができますが、中北組合はこの条件を満たしていません。その証拠に焼却灰を越境処分しています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、補助金適正化法第3条第1項の規定です。

この規定は、市町村に対して財政的援助を与える国の責務に関する規定になりますが、このように国は関係法令を遵守して財政的援助を与えなければならないことになっています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、国がごみ処理施設を整備(長寿命化を含む)する市町村に対して財政的援助を与える場合に遵守しなければならない代表的な法令である廃棄物処理法第5条の6の規定です。

このように、国は沖縄県の市町村が県の廃棄物処理計画に適合しないごみ処理計画を策定して実施している場合は、廃棄物処理法第5条の6の規定に基づく責務を果たすことができなくなるので財政的援助を与えることはできないことになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、国が遵守しなければならないもう1つの重要な法令である廃棄物処理法第5条の4の規定です。

廃棄物処理施設整備計画は政府が閣議決定している計画ですが、この計画は廃棄物処理法の基本方針に即して定められているので、当然のこととして、国(防衛省を含む)は基本方針に適合しないごみ処理計画を策定している市町村に対して財政的援助を与えることはできないことになります。このため、中北組合は国の補助金を利用できない状態になっています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、設備の長寿命化に関する国の考え方を整理した資料です。

各耐用年数の定義については省略させていただきますが、設備の長寿命化というのは処分制限期間を経過してから実施する施策であり、目標耐用年数を物理的耐用年数に近付ける施策ということになります。もちろん、目標耐用年数を経過するまでは地方財政法第8条の規定が適用されることになります。ちなみに、一番上にある法定耐用年数と処分制限期間はほぼ同じ年数になります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設を整備(長寿命化を含む)するときの事務処理を整理した資料です。

このように、市町村が策定するごみ処理計画やその他の全ての計画が廃棄物処理法の基本方針等に適合していなければなりません。しかし、それ以前に関係法令の規定に適合していなければなりません。そして、国はこれらのことを確認して初めて財政的援助を与えることができます。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、沖縄県が内地の都道府県であった場合を想定して中北組合に与えるべき技術的援助を整理した資料です。

おそらく、中北組合に対する県の技術的援助は組合からの質問に答える形で行われていると思われます。この資料はその前提で作成したものですが、内地の都道府県であれば中北組合に対してこのような技術的援助を与えたはずです。しかし、県の技術的援助はまったく違うものでした。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、改めて中北組合に対する県の不適正な技術的援助を整理した資料です。

県の職員が地方財政法第8条の規定を知らなかった可能性もありますが、地方公共団体という組織を考えた場合は知らなかったでは済まされないことになります。したがって、県はこの規定を自ら除外いることになります。また、建物部分の目的外使用についても、結果的にこのような技術的援助を与えていることになります。そして、国の補助金や代替措置等に関することについても結果的にこのような技術的援助を与えていることになります。 

この資料には、このブログの管理者の想像による部分が多くなっていますが、⑤と⑥については事実と考えています。また、⑦と⑧については、表現は異なるかも知れませんが、結果的にこのような技術的援助を与えていると考えています。なお、⑦については一時的ではあっても県の方から中北組合との連携・協力体制を解消する事務処理を行っていることになるので、極めて不適正な技術的援助になると考えています。 

これは、中北組合に対する県の技術的援助が不適正ではない(適正である)とした場合を想定して作成した資料ですが、その場合は他の市町村に対してもこのような技術的援助を与えることになってしまいます。

原寸大の資料(画像をクリック)

  

下の画像は、設備の長寿命化に関する県の考え方を整理した資料です。

浦添市も中北組合と同じように最終処分場を整備していません。しかし、処分制限期間を経過した溶融炉を長寿命化することによって廃棄物処理法の基本方針や県の廃棄物処理計画に適合するごみ処理を行っています。しかし、中北組合に対してはこのような不適正な技術的援助を与えています。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、中北組合が県の技術的援助に従って国の財政的援助を受ける場合を想定して作成した資料です。

このように、中北組合が廃棄物処理法の基本方針に適合する「地域計画」を策定したとしても、「ごみ処理計画」や「行動計画」が基本方針に適合していない場合はそれだけで非承認になります。しかも、法令に違反して事務処理を行っているので、完全にアウトということになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、沖縄県におけるごみ処理計画と地域計画との関係を整理した資料です。

「地域計画」は市町村が国の補助金を利用してごみ処理施設を整備する前に策定するものですが、その計画が廃棄物処理法の基本方針に適合していても、計画を策定した市町村の「ごみ処理計画」が基本方針に適合していない場合はアウトになります。なお、「ごみ処理計画」を「地域計画」に適合する計画に見直した場合であっても、年度毎の「実施計画」を変更しなければならないので、それができない場合は、やはりアウトということになります。したがって、このスキームは成立しないことになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、内地におけるごみ処理計画と地域計画の関係を整理した資料です。

普通に考えれば誰が考えてもこのようなスキームになりますが、沖縄県だけは違うスキームになっています。そして、中北組合は国の補助金を利用して広域施設を整備することができると考えています。しかし、県が「大丈夫」と言っても国は「大丈夫」だとは絶対に言いません。なぜなら、国は処分制限期間を経過した設備にも地方財政法第8条の規定を適用して、市町村に財政的援助を与えながら設備の長寿命化を推進しているからです。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、中北組合の3つの計画を比較するために作成した資料です。

県が中北組合に対する不適正な技術的援助の適正化を行わない場合は、上段のような結果になります。このように、中北組合と浦添市が広域組合を設立するための「地域計画」を策定しても、肝心の中北組合のごみ処理計画や行動計画が廃棄物処理法の基本方針に適合していない場合は国の承認を受けることはできません。そして、広域処理は白紙撤回になります。したがって、下段のような形にしなければ広域組合を設立することはできないことになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、上の資料の下段にあるスキームに従って平成28年度のスケジュールを整理した資料です。

なお、このスケジュールは平成28年度が期限になっている「行動計画」の策定を前提にして作成しています。通常、市町村が策定する計画は民間のコンサルタントに委託して成果物を作成することになりますが、入札等の事務処理を考えると3ヶ月程度は必要になります。そうなると、中北組合における平成28年度はあと5ヶ月程度しか残っていないことになります。

行動計画に記載する維持管理コストや更新コストの見通しを立てるための試算を行う場合、どう考えても3ヶ月以上はかかると考えます。したがって、遅くとも9月までには既存施設に対する「行動計画」の方針を決定しなければならないと考えます。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像は、中北組合に対して県が広域処理に必要な技術的援助を与えなかった場合を想定して作成した資料です。

浦添市は中北組合の「行動計画」の方針が決定しなければ市の「行動計画」を策定できない状況になっています。そして、中北組合の方針がこれまでと変らないとした場合は、単独更新に変更して「行動計画」を策定しなければならないことになります。また、中北組合は国の補助金を利用することができないので、住民から40億円以上の自主財源を確保して単独更新を行う「行動計画」を策定することになります。

原寸大の資料(画像をクリック)

下の画像(2つ)は、中北組合に対する県の不適正な技術的援助による結果を整理した資料です。

中北組合は地域内に溶融炉と同種の社会資源が充足していない状態で県の技術的援助に従い溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っています。しかし、その結果は地方財政法と補助金適正化法に違反する事務処理を行っていることになります。そして、国の補助金を利用できない状況になっているため住民から40億円以上の自主財源を確保してごみ処理施設の更新を行わなければならない状況になっています。

沖縄県は地方財政法や補助金適正化法に対する認識が不十分な状況で中北組合に対して技術的援助を与えているために、地方自治法第245条の2の規定に違反して市町村の自治事務に関与していることになります。また、溶融炉の長寿命化を求めずに休止が可能という助言を与えています。そして、最終処分場の整備を求めずに焼却灰の民間委託処分が可能という助言を与えています。これは、県が策定している廃棄物処理計画を達成するための措置を県が自ら放棄していることになるので廃棄物処理法第5条の6の規定に違反して事務処理を行っていることになります。そのために、中北組合の法令違反を誘導する結果になっています。 

原寸大の資料(画像をクリック)

 

下の画像は、国から見た沖縄県と中北組合の評価を整理した資料です。

なお、この資料は、このブログの管理者の主観ではなく、国と県と中北組合が同じテーブルで協議をした場合を想定して作成しています。

このように、国から見た場合は、県と中北組合は国の補助金に対する姿勢が不誠実であり、国の施策に対して非協力的な地方公共団体であるという印象を強く受けると考えます。

原寸大資料(画像をクリック)

 

下の画像は、このブログの記事のために設備の長寿命化に関する県の考え方を分かりやすく整理した資料です。しかし、県のこの考え方は県内の市町村にとって極めて重要な考え方になりますが、県は中北組合にだけは周知して他の市町村には周知していません。 

このブログの管理者は、常識的に考えて、県が中北組合に対する技術的援助を適正な技術的援助と判断しているのであれば、中北組合に対して技術的援助を与えた平成25年度に、中北組合だけでなく他の全ての市町村に対して県の考え方を周知しなければならなかったと考えています。しかし、県は周知していません。したがって、県は中北組合に対する技術的援助が不適正な技術的援助であることを承知していると考えています。なお、県が中北組合に対して技術的援助を与えた平成25年度においては中北組合は広域処理を検討課題から除外していました。そして、改正したごみ処理計画も平成35年度までの10年間は「現体制を維持する」計画になっています。したがって、県のこの考え方は広域処理とは無関係になります。 

原寸大の資料(画像をクリック) 

下の画像は、県と中北組合の法令違反を是正するための施策に関する資料ですが、早急に「行動計画」の方針を決定するためにこのような施策を選択した場合は失敗する確率が極めて高くなるので、改めてその理由を整理しておくことにしました。

法令違反を是正するために、県や中北組合に代替措置を講じて溶融炉を廃止するという考えがない場合は、選択肢はこの2つしかないことになります。しかし、中北組合の焼却炉は塩分濃度の高い焼却灰(飛灰)を排出する流動床炉であり、溶融炉は飛灰を単独で処理する燃料式の溶融炉です。そして、中北組合と同じ組み合わせのごみ処理施設は国内では稼動している事例がありません。また、溶融炉については長寿命化が行われている事例もありません。その理由は、水蒸気爆発のリスクが高い溶融炉だからです。ただし、稼動が困難な欠陥炉ではないので運用は可能です。したがって、これらのことを総合的に判断して「行動計画」の方針を決定しないとギャンブル性の極めて高い施策を選択することになってしまいます。

原寸大の資料(画像をクリック)

最後に、もう一度、下の画像(2つ)をご覧下さい。

市町村が策定する「地域計画」は廃棄物処理法の基本方針に適合していなければなりません。しかし、市町村の「ごみ処理計画」と「行動計画」も廃棄物処理法の基本方針に適合していなければ、ごみ処理施設の整備(長寿命化を含む)に当って国の補助金を利用することはできません。これは、全国共通のルールなので、沖縄県においても例外は認められません。

中北組合は、今年度中に来年度からの「行動計画」を策定することになるので、今年度中にごみ処理計画を見直さなければならないことになります。そして、平成30年度には浦添市と共同で「地域計画」を策定することになるので、中北組合の既存施設に対する施策は平成30年度までに完了しなければならないことになります。

中北組合が策定する「行動計画」については、浦添市の同意が必要になります。その上で、維持管理コストや更新コストの試算を行うことになりますが、全体のスケジュールを考えると浦添市の同意を得るまでに2ヶ月足らずしかないことになります。 そして、浦添市は溶融炉を再稼動して長寿命化を行う施策や焼却灰の資源化を外部委託して溶融炉を廃止する施策については、同意できないと考えます。なぜなら、前述したように極めてギャンブル性の高い施策になるからです。

 原寸大の資料(画像をクリック)

 

沖縄県と中北組合が日本の地方公共団体である以上、法令に違反して事務処理を行うことはできません。

したがって、法令違反を是正することは当たり前のことですが、是正するための施策の選択を間違えると、最少の経費で最大の効果を挙げることができないことになり、結局、地方自治法の規定(第2条第14項)に違反することになってしまいます。

その6に続く