沖縄県が目標に掲げている2021年度の入域観光客数1千万人、平均4泊が実現した場合、県内の宿泊施設が1日8500室足りなくなると県が試算していることが12日までに分かった。深刻な客室不足に陥る恐れがあるとして、ホテルの新築や増築を進める必要があると分析している。国に対しては、ホテルの新築や増設の際に法人税や事業税、固定資産税などを優遇するよう税制改正を要請中。県内自治体に対しては、ホテル用地の容積率を緩和するよう促す国交省通知に基づき、都市計画を早めに変更するよう呼び掛けている。(政経部・平島夏実)
試算では、第5次県観光振興基本計画に基づき、那覇空港の第2滑走路のオープン翌年に当たる21年度に沖縄を訪れる国内外の観光客数を計1千万人、平均4泊と仮定した(15年度実績は入域観光客数793万6300人、平均滞在日数3・83日)。必要な収容能力は年間4千万人泊(延べ宿泊者数)となる。
1室当たりの宿泊人数を現状通り2・5人と仮定すると、年間に必要な客室数は1600万室。現状を踏まえホテルの稼働率80%で収容するとなれば年間2千万室、1日当たり約5万4800室が必要となる。
県内の客室数は15年度時点で約4万1千室。ことし8月末までの県の集計によると、21年度までに少なくとも30軒(計5300室)が開業し、合計で約4万6300室に増える。将来的に必要となる5万4800室から引くと、1日当たり8500室が不足する計算だという。
県は、未発表のホテル建設計画がまだあるとみているが、本島西海岸や八重山地域に偏っているとして全県的な底上げが必要と分析している。さらに、観光の質を維持できるよう、ホテル以外の観光施設に対してもバランス良く民間投資を呼び込む必要があるとみている。
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沖縄県内ホテル、深刻な人手不足 9割「業務に支障」
沖縄振興開発金融公庫は11日、県内主要100ホテルから回答を得た人手不足に関する調査結果を発表した。客室清掃が間に合わないことによるチェックインの遅れや従業員の長時間労働など「人手不足に伴う業務への支障」が出ていると回答したホテルが9割を占めた。好調な県経済を支える観光の現場で深刻な労働力不足に直面している実態が浮かび上がった。沖縄公庫は「IT活用や機械化を進めるとともに、外国人活用のための法整備も喫緊の課題だ」と抜本的な対策の必要性を指摘した。
沖縄公庫調査課は、これまでに公表・報道されている県内のホテル建設計画をまとめ、2020年までに6千~8千の新たな客室整備が想定されていると積算。その上で「開業には4千人以上の雇用が必要になる計算だが、既に現状でも人手不足から運用の維持が厳しくなっている」と先行きへの懸念を示した。
正社員については約2割のホテルが、パート・アルバイトについては3割超のホテルが「大いに不足」と回答した。清掃業務など外注要員の不足も3割近くを占めた。離島のホテルほど正社員、契約社員の不足感が強くなっている。
部門別では宿泊部門の「フロント」「客室清掃」、料飲部門の「調理スタッフ」「サービススタッフ」で「大いに不足」と「やや不足」を合わせて6割を超えた。