沖縄科学技術大学院大学(OIST)やオーストラリアの研究チームはこのほど、共同で沖縄とオーストラリアのオニヒトデの全遺伝子情報(ゲノム)を解読し、オニヒトデが誘引物質を海に出して、仲間を集める習性があることを突き止めた。県内では大量発生したオニヒトデによるサンゴの食害が深刻化し駆除が追い付いていないが、この仕組みを活用することで、効果的な駆除につなげられる可能性が出てきた。
オニヒトデの全ゲノム解読は世界初で、成果は5日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載された。
オニヒトデが反応するとみられる誘引物質として、特殊なタンパク質が確認された。水槽を使った実験で、別のオニヒトデを飼育した海水を入れると、水槽内のオニヒトデが海水に向かう反応を見せた。このことから、オニヒトデ同士が特有のタンパク質を放出し受容することでコミュニケーションしている可能性が導き出された。オニヒトデは産卵時期に同じ場所に集まる習性がある。
研究では沖縄とオーストラリア・グレートバリアリーフのオニヒトデをゲノム解読し、双方が98・8%一致することも分かった。研究に関わったOISTの佐藤矩行教授は「驚くべき結果だ」と述べた。約5千キロ離れたゲノムが極めて似通っていることからオニヒトデが徐々に生息域を広げていったとは考えにくく、両地域のオニヒトデは同一の種類で、何らかの原因で急速かつ広範囲に大量発生したことを示唆しているという。
オニヒトデの駆除は1匹ずつ捕獲しているのが現状だ。佐藤教授は、誘引物質を使いオニヒトデが集まる習性を利用することで「今よりはるかに多く駆除できる可能性がある」と語った。