昨日はヴェルディのお話でしたが、第二帝政期のパリで、もっとも流行った歌劇は、実のところ、ジャック・オッフェンバックのオペレッタ、喜歌劇です。
一番有名なのは、『天国と地獄』で知られる『地獄のオルフェ』でしょうか。
天国と地獄
オッフェンバックのオペレッタというのは、風刺がきいていまして、皮肉なんですけれども、だれをあてこすっているのかしかとはわからない、巧妙な皮肉だったんだそうです。さらにいえば、従来の上品なオペラからするならば、猥雑でもありました。ここらあたり、幕末の歌舞伎にとても似ていると思ったりします。
で、慶応3年(1867)万国博覧会のパリで、訪れた各国の王族が争うように見たのも、オペラ座のヴェルディではなく、ヴァリェテ座のオッフェンバックでした。『ジェロルスタン女大公殿下』です。後に浅草オペラになりまして、日本では『ブン大将』として知られています。
喜歌劇 「ジェロルスタン女大公殿下」
ヒロインのジェロルスタン女大公は、ロシアのエカテリーナ女帝をモデルにしたようではあるんですが、皮肉られているのは、上演当時の欧州各国の王侯貴族です。しかし、皮肉られているはずの当の王族たちが、争うように見物しました。
といいますのも、ヒロインを演じるオルタンス・シュネデールが、歌が上手かったかどうかはわかりませんが、非常に魅力的であったから、のようです。
イギリスのプリンス・オブ・ウェールズ(エドワーード王太子)、ロシアのアレクサンドル二世と二人の皇子、エジプト副王イスマイル・パシャ、などなど、みんなオルタンスに夢中になり、オルタンスは、王侯の通過儀礼と言われたんだそうです。
昨日もちょっと触れたエミール・ゾラの『ナナ』なんですが、お話はちょうど、1867 年万博のパリにはじまり、普仏戦争開戦のパリで終わります。主人公は、歌は下手だけれども性的な魅力にあふれた若い女優のナナです。
名画デスクトップ壁紙美術館 マネ《ナナ》
ナナは、女優であると同時に、クルチザンヌ、ドゥミモンデーヌともいいますが、いわゆる高級娼婦です。
第二帝政時代 の高級娼婦
エミール・ゾラは、ナナのモデルとして、いく人ものクルチザンヌの話を取材し、複合したようなんですが、女優としてのナナのモデルは、あきらかにオルタンス・シュネデールで、万博のパリを訪れたプリンス・オブ・ウェールズが、ナナに夢中になり、楽屋を訪れるシーンがあるんですね。ナナの出演する劇も、ギリシャ・ローマ神話の神々を俗世間におろして茶化したような筋立てで、オッフェンバックの『地獄のオルフェ』などを意識したものでしょう。
この時代のパリを見るのに、『ナナ』はとても参考になります。
上品な貴婦人方の話題は、ナナの演じるオペレッタを裂け、イタリア座のイタリア語で演じられる品のいいオペラだったりするんですが、その夫や息子はナナに入れ上げ、品がいいはずの貴婦人も、若い愛人をこしらえて遊んでいたり。
こんなパリに、水戸烈公の子息である徳川民部公子がいて、公子のお付きには、水戸の攘夷武士がいるんですから、おもしろいですね。
公子もどうやら、『ジェロルスタン女大公殿下』を、ご覧になられたようです。
民部公子は、元治元年、わずか11歳で京都へ出て、禁裏守護の水戸藩士の将となります。兄が将軍となり、パリ万博に使節団を出すことになって、年若い弟の起用を思いつくんですね。
薩長連合が結ばれ、孝明天皇が崩御され、政局がゆれ動く動乱の京都から、突然、パリの社交界です。
しかし、若いということはすごいことで、ほどなく公子は慣れて、楽しまれたんですね。
これも昨日名を出した後の駐英大使、林董ですが、彼が万博のパリを訪れたのは17歳のときで、公子よりは二つ年上ですが、若いんです。
彼の実兄に、松本順がいます。司馬遼太郎氏の『胡蝶の夢』の主要登場人物です。オランダ軍医のポンペに学んだ蘭方医ですが、京都時代から新撰組と交流があり、土方のことも語り残しております。
一番有名なのは、『天国と地獄』で知られる『地獄のオルフェ』でしょうか。
天国と地獄
オッフェンバックのオペレッタというのは、風刺がきいていまして、皮肉なんですけれども、だれをあてこすっているのかしかとはわからない、巧妙な皮肉だったんだそうです。さらにいえば、従来の上品なオペラからするならば、猥雑でもありました。ここらあたり、幕末の歌舞伎にとても似ていると思ったりします。
で、慶応3年(1867)万国博覧会のパリで、訪れた各国の王族が争うように見たのも、オペラ座のヴェルディではなく、ヴァリェテ座のオッフェンバックでした。『ジェロルスタン女大公殿下』です。後に浅草オペラになりまして、日本では『ブン大将』として知られています。
喜歌劇 「ジェロルスタン女大公殿下」
ヒロインのジェロルスタン女大公は、ロシアのエカテリーナ女帝をモデルにしたようではあるんですが、皮肉られているのは、上演当時の欧州各国の王侯貴族です。しかし、皮肉られているはずの当の王族たちが、争うように見物しました。
といいますのも、ヒロインを演じるオルタンス・シュネデールが、歌が上手かったかどうかはわかりませんが、非常に魅力的であったから、のようです。
イギリスのプリンス・オブ・ウェールズ(エドワーード王太子)、ロシアのアレクサンドル二世と二人の皇子、エジプト副王イスマイル・パシャ、などなど、みんなオルタンスに夢中になり、オルタンスは、王侯の通過儀礼と言われたんだそうです。
昨日もちょっと触れたエミール・ゾラの『ナナ』なんですが、お話はちょうど、1867 年万博のパリにはじまり、普仏戦争開戦のパリで終わります。主人公は、歌は下手だけれども性的な魅力にあふれた若い女優のナナです。
名画デスクトップ壁紙美術館 マネ《ナナ》
ナナは、女優であると同時に、クルチザンヌ、ドゥミモンデーヌともいいますが、いわゆる高級娼婦です。
第二帝政時代 の高級娼婦
エミール・ゾラは、ナナのモデルとして、いく人ものクルチザンヌの話を取材し、複合したようなんですが、女優としてのナナのモデルは、あきらかにオルタンス・シュネデールで、万博のパリを訪れたプリンス・オブ・ウェールズが、ナナに夢中になり、楽屋を訪れるシーンがあるんですね。ナナの出演する劇も、ギリシャ・ローマ神話の神々を俗世間におろして茶化したような筋立てで、オッフェンバックの『地獄のオルフェ』などを意識したものでしょう。
この時代のパリを見るのに、『ナナ』はとても参考になります。
上品な貴婦人方の話題は、ナナの演じるオペレッタを裂け、イタリア座のイタリア語で演じられる品のいいオペラだったりするんですが、その夫や息子はナナに入れ上げ、品がいいはずの貴婦人も、若い愛人をこしらえて遊んでいたり。
こんなパリに、水戸烈公の子息である徳川民部公子がいて、公子のお付きには、水戸の攘夷武士がいるんですから、おもしろいですね。
公子もどうやら、『ジェロルスタン女大公殿下』を、ご覧になられたようです。
民部公子は、元治元年、わずか11歳で京都へ出て、禁裏守護の水戸藩士の将となります。兄が将軍となり、パリ万博に使節団を出すことになって、年若い弟の起用を思いつくんですね。
薩長連合が結ばれ、孝明天皇が崩御され、政局がゆれ動く動乱の京都から、突然、パリの社交界です。
しかし、若いということはすごいことで、ほどなく公子は慣れて、楽しまれたんですね。
これも昨日名を出した後の駐英大使、林董ですが、彼が万博のパリを訪れたのは17歳のときで、公子よりは二つ年上ですが、若いんです。
彼の実兄に、松本順がいます。司馬遼太郎氏の『胡蝶の夢』の主要登場人物です。オランダ軍医のポンペに学んだ蘭方医ですが、京都時代から新撰組と交流があり、土方のことも語り残しております。
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