(01)
①(集合Aが集合Bの部分集合である)ならば、そのときに限って(集合Aと集合Bの和集合は、集合Bに等しい)。
②(集合Aが集合Bの部分集合である)ならば、そのときに限って(集合Aと集合Bの積集合は、集合Aに等しい)。
といふ「命題」は、
①(A⊆B)⇔(A∪B=B)
②(A⊆B)⇔(A∩B=A)
といふ「集合の式」で、表すことが出来る。
然るに、
(02)
A=xは集合Aの要素である(x∈A)。
B=xは集合Bの要素である(x∈B)。
A∨B=xは集合Aの要素であるか、または、xは集合Bの要素である(x∈A∨x∈B)。
A&B=xは集合Aの要素であって、その上、xは集合Bの要素である(x∈A∨x∈B)。
A→B=xが集合Aの要素であるならば、 xは集合Bの要素である(x∈A→x∈B)。
とするならば、
①(A⊆B)⇔(A∪B=B)
②(A⊆B)⇔(A∩B=A)
といふ「集合の式」は、
①(A→B)⇔(A∨B⇔B)
②(A→B)⇔(A&B⇔A)
といふ「命題論理の式」に、「相当」する。
然るに、
(03)
(ⅰ)
1 (1) A→B 仮定
2 (2) A∨B 仮定
3 (3) A 仮定
1 3 (4) B 13MPP
5 (5) B 仮定
12 (6) B 23455∨E
1 (7) A∨B→B 26CP
8 (8) B 仮定
8 (9) A∨B 8∨I
(ア) B→A∨B 89CP
1 (イ)(A∨B→B)&
(B→A∨B) 7ア&I
1 (ウ) A∨B⇔B イDf.⇔
(エ)(A→B)→(A∨B⇔B) 1ウCP
オ (オ) A∨B⇔B 仮定
オ (カ)(A∨B→B)&
(B→A∨B) オDf.⇔
オ (キ) A∨B→B カ&E
ク(ク) A 仮定
ク(ケ) A∨B ク∨I
オク(コ) B キケMPP
オ (サ) A→B クコCP
(シ)(A∨B⇔B)→(A→B) オサCP
(ス)(A→B)→(A∨B⇔B)&
(A∨B⇔B)→(A→B) エシ&I
(セ)(A→B)⇔(A∨B⇔B) スDf.⇔
(ⅱ)
1 (1) A→B 仮定
2 (2) A&B 仮定
2 (3) B 2&E
(4) A&B→B 23CP
5 (5) A 仮定
1 5 (6) B 15MPP
1 5 (7) A&B 56&I
1 (8) A→A&B 57CP
1 (9)(A&B→A)&
(A→A&B) 49&I
1 (ア) A&B⇔A 9Df.⇔
(イ)(A→B)→(A&B⇔A) 1アCP
ウ (ウ)(A&B⇔A) A
ウ (エ)(A&B→A)&
(A→A&B) ウDf.⇔
ウ (オ) A→A&B エ&E
カ(カ) A A
ウカ(キ) A&B オカMPP
ウカ(ク) B キ&E
ウ (ケ) A→B カクCP
(コ)(A&B⇔A)→(A→B) ウケCP
(サ)(A→B)→(A&B⇔A)&
(A&B⇔A)→(A→B) イコ&I
(シ)(A→B)⇔(A&B⇔A) サDf.⇔
従って、
(03)により、
(04)
①(A→B)⇔(A∨B⇔B)
②(A→B)⇔(A&B⇔A)
といふ「命題論理式」に於いて、
① は「恒真式(トートロジー)」であって、
② も「恒真式(トートロジー)」である。
従って、
(01)~(04)により、
(05)
①(A→B)⇔(A∨B⇔B)
②(A→B)⇔(A&B⇔A)
といふ「命題論理式」に於いて、
① は「恒真式(トートロジー)」であって、
② も「恒真式(トートロジー)」であるが故に、
①(A⊆B)⇔(A∪B=B)
②(A⊆B)⇔(A∩B=A)
といふ「集合の式」に於いても、
① は「恒真式(トートロジー)」であって、
② も「恒真式(トートロジー)」であるに、違ひない。
然るに、
(06)
練習2 A⊆B⇔A∪B=B,また、A⊆B⇔A∩B=A を証明せよ。
(数研出版、チャート式 基礎からの確率・統計、初版 昭和42年、13頁)
然るに、
(05)(06)により、
(07)
「証明せよ」といふ「練習問題」がある以上、
①(A⊆B)⇔(A∪B=B)
②(A⊆B)⇔(A∩B=A)
といふ「集合の式」は、二つとも、「恒真式(トートロジー)」である。
然るに、
(08)
「集合はクラスの特別の種類のものであると解釈される(E.J.レモン著、石橋新・高橋敬吾 訳、公理的集合論入門、1972年、序論)。」
「実際、その第一の段階において、クラスの理論は命題計算よりも難しいものではなく、また、以下に見られる通り、それは密接な類似性をもっている(E.J.レモン著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、1973年、259頁)。」
従って、
(05)~(08)により、
(09)
①(A→B)⇔(A∨B⇔B)
②(A→B)⇔(A&B⇔A)
といふ「命題論理式」と、
①(A⊆B)⇔(A∪B=B)
②(A⊆B)⇔(A∩B=A)
といふ「集合(クラス)の式」には、「密接な類似性(close resemblance)」がある。
然るに、
(10)
因みに、
(a)「E.J.レモン著、石橋新・高橋敬吾 訳、公理的集合論入門、1972年」
(b)「E.J.レモン著、竹尾治一郎・浅野楢英 訳、論理学初歩、 1973年」
を「比較」すると、私にとっては、
(a)の方が、「格段に難しい」。
(11)
「高校数学」で「集合」と言へば、『ベン図』であるが、
「E.J.レモン著、公理的集合論入門、1972年」には、『ベン図』は、全く登場しない。
(12)
例題1 分配法則 (A∪B)∩C=(A∩C)∪(B∩C) を証明せよ。
(数研出版、チャート式 基礎からの確率・統計、初版 昭和42年、12頁)
の「解答」は、
といふやうな『ベン図』で示される。
(13)
(A∪B)∩C=(A∩C)∪(B∩C)
といふ「集合の式」を、
(A∨B)&C⇔(A&C)∨(B&C)
と書くと、「見た瞬間に、そんなの当然」である。
cf.
(ⅰ)
1 (1)(A∨B)&C 仮定
1 (2) A∨B 1&E
1 (3) C 1&E
4 (4) A 仮定
14 (5) A&C 34&I
14 (6)(A&C)∨(B&C) 5∨I
7(7) B 仮定
1 7(8) B&C 37&I
1 7(9)(A&C)∨(B&C) 8∨I
1 (ア)(A&C)∨(B&C) 24679∨E
(ⅱ)
1 (1)(A&C)∨(B&C) 仮定
2 (2)(A&C) 仮定
2 (3) A 2&E
2 (4) A∨B 3∨I
2 (5) C 2&E
2 (6)(A∨B)&C 45&E
7(7) B&C 仮定
7(8) B 7&E
7(9) A∨B 8∨I
7(ア) C 7&E
7(イ) (A∨B)&C 9ア&I
1 (ウ)(A∨B)&C 1267イ∨E
従って、
(09)~(13)により、
(14)
(A∪B)∩C=(A∩C)∪(B∩C)
といふ「集合の式」を、
(A∨B)&C⇔(A&C)∨(B&C)
といふ「命題論理の式」は、「密接な類似性(close resemblance)」があるため、
(A∪B)∩C=(A∩C)∪(B∩C)
といふ「等式(集合の分配法則)」を「証明」する際に、『ベン図』は「不要」である。
(16)
「数学」⇒「論理」⇒「集合」。
といふ「連想」からすると、
「集合論は、数学者によって、さぞかし重んじられてゐるのだらう。」
と思ってゐたものの、