2015年11月に乙女高原の巨大シカ柵が設置されたのですが、シカ柵設置が乙女高原の植生にどんな変化をもたらすかをモニタリングするために、設置直前の2015年9月からこの植生調査が始まりました。元麻布大学野生動物学研究室の高槻先生のご指導です。
2015年9月、草原内に10本のポールを立てました(ピンクのテープがなびいていますから、よく目立ちます)。ここが調査ポイントです。毎年1回、9月に、これら調査ポイントで調査を行っています。
朝、塩山駅で高槻先生をピックアップし、乙女高原に到着すると、すでに調査に参加する皆さんが集まっていました。集まったのは8人。高槻先生はじめ、芳賀さん、井上さん、篠原さん夫妻、奥平さん母子、そして植原です。高槻先生から調査の概要を説明していただき、さっそく調査に入りました。この調査は翌日のリンク調査と違い、「分担して行う」ことはないので、「調査に参加」といっても半分以上は「見学」です。とはいえ、いつもは入れない草原の中に入れる又とない機会ですし、見学がほとんどだからこそ、参加しやすいという面もあります。また、後述しますが、ちっちゃな草まで分類するという調査シーンは、ある意味衝撃的です。
まずは草原の中で地図を頼りに目印のポールを探します。ポールを左下隅とし、斜面上方向に1m四方の方形枠を作ります。これには2m折り尺がとても便利です。折り尺のめもりを頼りに、10cm×10cmの範囲内に出てくる植物を全て記録します。全てということは、小さな草も含めて全部ということです。当然、その多くは花も付けていません。高槻先生が中心に植物を同定し、井上さんや植原も協力しました。記録は井上さんが担当してくださいました。
初めて参加された篠原さんが「花もないのに、しかも、こんなに小さな草なのに、よくわかりますね」と感心されていました。そういえば、自分も初めて植生調査を体験したときに、同じ感想を持ったことを思い出しました。タネあかしをすると、一つは、乙女高原に生えている植物リストが頭に入っていて、そのリストの中からだけ選べばいいこと。もう一つは、花が咲いていなくても植物を見る習慣がつき、経験を重ねたことです。
特に二つ目については、まだまだ勉強中です。今回も、見慣れない根生葉(タンポポみたいにロゼット状に出てくる葉)がありました。葉の柄が長くて、柄の先に卵型の、ちょっとギザギサのある葉が付いています。柄が少し広くなっていて、ちょうどカレースプーンのようです。種から芽生えて、はじめのころはこの根生葉で栄養を貯め、しかる後に茎を伸ばして花を咲かせるのでしょうが、根生葉を見ただけでは、頭の中の「乙女高原植物リスト」の何にもヒットしません。
高槻先生が「ヒメジョオンじゃない!?」とおっしゃいました。えっ、ピンときません。でも、お昼に車から『植物検索ハンドブック』(NPO法人埼玉県絶滅危惧植物種調査団、さきたま出版会)を出して、ヒメジョオンの項を見てみたら、この根生葉が載っているじゃありませんか。びっくりしました。「へぇ、ヒメジョオンの小さい頃ってこんななんだ!」
帰ってから『雑草の芽生えハンドブック』(浅井元朗、文一総合出版)で確かめたら、確かにヒメジョオンでした。隣にハルジョオンが載っていました。この二つはよく似ていて、間違われることが多いのですが、根生葉の形は全然違っていました。ヒメジョオンなんて、ありかふれた雑草です。でも、その根生葉が分からなかったのですから、灯台下暗し、まだまだ修行が足りません。
そうそう。ホタルサイコの小さいのも、なかなか分からなかったです。イネ科の小さいのなんて、いまだにまったく分かりません。反対に「あ、この小さいのはハナイカリに違いない。こっちはリンドウ!!」と分かる・・・というよりピンとくると、すごく嬉しくなりますよ。
おっと、かなり脱線しました。10cm×10cmを調べたら、10cm×25cm、25cm×25cm、25cm×50cm・・・と範囲を広げて、出てくる植物を記録します。1m×1mまで調べたら、出てきた植物の高さと被度(1㎡の中で、どれくらいの広さを占めているか)を記録します。そしたら、1m×2m、2m×2mまで探索範囲を広げて、終了です。次のポイントに向かいます。
午前中、4ポイントを調査し、お昼にしました。午後からの調査を始めたら7ポイント目で雨に降られてしまい、一時中断。でも1時間もしないで雨は上がったので、残りのポイントも無事、調査することができました。調査結果の整理・考察は高槻先生が一手に引き受けてくださっています。記録をパソコンのエクセルに入力するだけでも大変なのに、本当にありがたいです。
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