登頂を無事成し遂げると、ファミリーのお邪魔にならぬよう
丸川峠に向けうカップルに別れを告げ、
頂上滞在3分?で雷岩へと引き返す
やはりまだ雲が広がり、大菩薩湖を取り巻く山々しか見られない
唐松尾根の入口がわかるかと不安だったけれど、すぐにわかった
12:54、唐松尾根から下山開始
少し下ると、視点が下がり、
同じようでいて雷岩からの上から見下ろすような景色とは
異なったものになるのはちょっとした驚きだ
一歩下る度に、視界が変わる。
コウリンカのオレンジ色が点在するササ原の涼し気な斜面
歩くのは尾根スタート時からガレ場
そしてそして、やってきたのはどの本にも掲載されている
急坂ポイント
もう、写真を撮る余裕もなく、一歩一歩集中して丁寧に足を下ろす。
靴擦れが痛いなんて言ってられない
足の置き場が間違いでないか、その一歩に全神経を尖らせる。
これは登りだったらひどい目にあっていたな…。
と、思っている傍から、若いカップルの男性がまず登ってきた。
後から登ってくる彼女を見ると、呼吸も荒く、
もうくたびれ果てて、思考が完璧に停止している感じだった
わかるよ、わかるよ、その気持ち
何もしてあげられなくて、ごめんね
そんな気持ちが湧いてくる。
そして、唐松尾根から山頂を目指していたら、
リタイヤしていたかもとブルっと来る
私自身、はた目には既にボロ雑巾の様になりながら下っていたことだろう
あんなに集中して下りていたはずなのに、
足は疲れてしまっていたのか、思いがけないところで
左の一歩が地面に着いたとたん、妙な角度にくねっとなってしまった
一瞬でまずい!と本能的に足を戻し、トントンとついてみると大丈夫そう。
ほっと一安心したのも束の間、ちょっと置き方が違うと
変な痛みを感じるようになった。
岩の上に座って、湿布を貼る。
下りの方たちが数人通り過ぎていく。
これから先どうなっちゃうんだろうと心配しつつも
湿布持参なんて素敵✨と自分に酔うところもあり
いろんな思いがごちゃ混ぜになって、しばしぼーっとしてしまった
あ、そういえば、人を待たせていたんだ
急に思い出し、それが原動力になる
待っている人がいると思うと、ソロ登山も急に力が湧いてくる
気付いたら急坂、ガレ場が落ち着いていたのが13:15。
ちょっと広くなったところで、登りのおじさんとすれ違う。
福ちゃん荘が大変なことになっているよ
そんな風に突然声をかけられ、思わず足を止める。
ちょうど行きの車の中で、大菩薩峠事件の話をしていたものだから
立てこもりか 火事か 車まで戻れるのかと
一気に不安が沸き上がる
今日は満室なんだって ロッヂ長兵衛は空いているんだけどね
はぁ~、なんだそれ 脱力~~~
そして、ザックを下ろし服を着替え始めた、あえて乙女の前で。
行こうとするとまたまた話しかけられる。
バスの時間までに戻ってこられるか。
ダメだったら、長兵衛に泊まるしかないな。福ちゃんは満室だから。
そういうことなのね
確かにおじさんにとっては大事件だよね…
バスに乗るのか聞かれたそばから車?と問いかけられる。
車と答え、ここまでの道のり、下りが大変で時間がかかってること、
初山で初ソロ登山であることなど話すと、
じゃ、またあとでと言われる。
登りと下り、もう会うこともないのに…
車でもう3時間近く待たせちゃっていて申し訳なくってと続けると
あれ?! 一人じゃないんだと。
同行者の靴擦れの話など経緯を話すと、なるほどねと。
それでも、じゃまたあとでとお別れする。
何だかモヤモヤした気分を抱えながら、下っていく
樹林は緩やかな傾斜で、足の調子も悪くない
ガヤガヤした気配を感じたら、福ちゃん荘の前の広場が見えた。
13:43、福ちゃん荘着
登りは車道だったから、下りは林道で…
そう思って福ちゃん荘の間の細道を年配の集団にくっついていったけれど
あっという間に車道に出てしまった
それでも、車道を走るように下る
もう、驚きのごぼう抜きだ
ゴールのロッヂ長兵衛に13:59着
福ちゃん荘から連絡をしておいたので、
少し移動させておいてくれようとウロウロしている車をロックオン
今まで待たされた割に、福ちゃん荘からのマッハ的なご帰還に驚く同行者
私はと言えば、ハイヤーのようなお迎えぶりにご満悦
こうして仲間を置き去りにして達成したソロ登山デビュー
申し訳なかったけれど、待っている人がいると思えば力も出て、
一人でもやり遂げた達成感と自分への自信にもなった。
きっと、生涯忘れられない山となる大菩薩嶺
ちなみに3時間近く待たされた方は、
学生さんでもあるので試験勉強でもしているとのことだったが、
ひたすら眠りこけてしまったようで…
随分すっきりとした顔をされてました
そして登ってもいないのに、
「大菩薩嶺」と刻印のあるキーホルダーを今日の記念にと用意していただき、
これを見るたびに、ドキドキワクワクのソロ登山の誇らしき思い出と
置き去りにした罪悪感を思い出すことになりそうです