しずくな日記

書きたいなあと思ったときにぽつぽつと、しずくのように書いてます。

無限のグレートーン

2012-04-28 20:05:56 | 日記
本の好みっていうのもどうやら変わるらしい。

高校生のときに好きだった吉本ばななさんの本は、好きだけど、
少女マンガみたいでちょっと照れくさい。懐かしくて照れくさい。
大学生のときに好きだった重松清さんの本も、ラスト近くで謳い上げる感じに違和感を覚えるようになった。
沢木耕太郎さんのノンフィクション、乾いた感じも好きだったけど、最近のは読んでいない。
坂口安吾の「堕落論」あたりが大好きだったけど、あの頃私は青春してたのねと思ってしまう。
でも「桜の森の満開の下」は、30代になってから好きになった。名作だ。

好きなタイプの小説も変わったけど、
学生時代よりはるかに人との付き合いが濃くならざるを得なくなった今、
事実は小説より奇なり、である。

先日、2年生の女子数人が美術室横の廊下で集まってヒソヒソ話をしていた。
出していた空気が既に怪しかった。
美術室の横の廊下は昼でも薄暗い。聴くでもなくきこえてきた話は、
仲のいいはずの部活の仲間を、仲間はずれにする具体的な計画だった。
私が◯◯を無視するから、あんたも無視してね・・・それから・・・。
美術室は電気を消して、ドアもぴっちり閉めていたから、誰かいるとは生徒たちも思っていなかったのだろう。
筒抜けだ。
ガッと扉を開けると、生徒たちは非常に驚いた顔をした。

見損なったわ、残念やわ、そんなこと考える人らとはよう思わんかったよ、
と思わず、地元言葉で言ってしまった。
弁明することもなくただ慌てふためいて、生徒達はその場を去った。
2学年の先生に、聴いたことを一応伝えておいた。
なんか理由はあったのかもしれないけど、
集団で仲間はずれの相談、という卑怯っぷりは許せなかった。
冷静に話をうかがおう、なんていい先生はその時の私にはとてもできなかった。

やるなら、一人でやれ。たった独りでムカつくやつに立ち向かえ。
一人じゃなんにもできないくせに。独りにもなれないくせに。
怒りがマジでおさまらんよ。


帚木蓬生さん「閉鎖病棟」を読み終えた。
精神病院を舞台に、患者の目線で書かれている。
一人ひとりの人生にスポットをあて、そこに至る人生の軌跡が淡々と書かれている。
クライマックスは(おそらく)、院内で、一人の少女のために殺人事件を起こした秀丸と、
精神病院で彼と数十年友人だったチュウさん(主人公といえる)が対面する裁判の様子と、
獄中にいる秀丸からチュウさんへの手紙だと思うのだけど、それも抑制した感じがある。
院内での患者同士、限られているけど医療者とのあたたかな心の交流と、
そうは言っても世の中から疎まれている悲しい現実や、
自分がやってきたことへの罪の意識の重さに患者たちが苛まれている様子が描かれる。
作者は精神科医、小説は現実の写し絵なんだろう。

そう、現実を淡々と書いていって、そこから本質を焙り出して行くタイプのものが最近は好きになった。
帚木蓬生さんはかなり昔から活躍している作家さんだったらしい。
私が知らなかっただけだった。
この人の小説は、社会的地位の低い人や弱き人にスポットを当て、
社会の暗闇を照らし出すタイプのものが多い様子。
他のもぜひ読んでみたい。

年月が過ぎれば、また好みも変わって行くのかもしれないけれど。

しかし、好みが中1くらいからちっとも変わらないのが推理小説。
こちらはたぶん、ゲーム感覚なのかもしれない。

恩田陸さんの「訪問者」を今日から読むのでワクワクしてる。これぞ黄金週間。
今日から精神的に『嵐の山荘』にこもる・・・。

今日は一日中、ガラスをやっていた。
透明なガラスと不透明なガラスの組み合わせがきれい。自分的には良いのができてきて嬉しい。
無用な飾り気が一切ないステンドだ。女性ならもっと華やかなのを作れとも思う。
無彩色の、微妙な違いのガラスの組み合わせが、らしいね、と先生に言われた。

無彩色、白でもなく黒でもない、その間の無限のグレートーン。
色は本当はいろいろ好きなのだけど。

これが今の私の心の色なのかもしれない。