《子どもと学ぶ歴史教科書の会会報「つどいの樹」:交流の広場》
★ たちかわ市民交流大学に参加して
学ぶ会会員 菊池ケイ
★ たちかわ市民交流大学 中世編1
昨年11月から12月に立川市の市民推進委員会が主催する講座に参加しました。
たちかわ市民交流大学「おとなの中学社会科 昔とちょっと違う歴史!第2弾~中世編1~」という講座で、講師は学ぶ会会員で元中学校教員の楢崎由美さん。
楢崎さんの講座は、もともと、数年前の「おとなの中学歴史学び直し」からはじまったもので、受講者の多くが60代・70代・80代です。
そこで、一昨年からは「昔とちょっと違う歴史!」という講座名になり、50年前の教科書と今の教科書で、どこが変わったのか?また、「おとなの…」なので、教科書の内容でもっと知りたいと思うことを学習します。
一昨年は「古代史編」、今回はその続きです。
講座は、パワーポイントで50年前の教科書と学び舎の「源頼朝」の肖像の比較から始まりました。私は、毎回2時間の講座のあと、帰宅してすぐ、学び舎の『ともに学ぶ人間の歴史』を見ながら復習することにしています。
★ 「御成敗式目」を現代語訳で読んで
今回の講座で一番心に残ったのは「御成敗式目」でした。
聞いたことはあるが…という程度の歴史単語でした。学び舎教科書には
「執権となった北条泰時は、1232年、御成敗式目を定め、御家人の領地争いを裁く基準などを明らかにしました。こうして鎌倉幕府はようやく安定しました」
と書かれていますが、泰時がこの式目を作った理由のひとつが、鎌倉時代の気候変動による大飢饉だったことを知りました。教科書の67ページに載っています。
この日の講座の最後に、現代語訳の「御成敗式目」51か条が配られて、自分が気になったところにしるしをつけてくるように「宿題」が出されました。家に帰り、さっそくしるしを付けてみました。
第1条「神社を修理して祭りを大切にすること」、
第4条「守護が勝手に罪人から所領を没収することの禁止」、
第42条「逃亡した農民の財産について」、
そして、女性について書かれている項目が多いのにもびっくりしました。
★ 「阿テ河荘の訴え状」と「御成敗式目」
次の会は、「庶民の活動」が中心で、教科書66ページの「阿テ河荘の訴え状」がメインでした。
教科書に詳しく書いてありますが、荘園領主と湯浅氏との関係やその後の訴訟問題も話されました。「訴え状」も17条まで口語訳が配られました。
見ていくと、農民が逃散したことは「御成敗式目」第42条で保障されているし、地頭湯浅氏が農民に激しい暴力や悪行をしていることや、荘園領主への対応なども「御成敗式目」の第5条や13条などで,否定されているようです。
阿テ河荘の農民たちが、地頭湯浅氏に対して訴え状を出し、荘園領主が六波羅探題に湯浅氏を訴えたのは、「御成敗式目」があったからで、「御成敗式目」は本当に裁判にとって重要なものだったことがわかりました。
では、湯浅氏は負けたのでしょうか。
泰時は、「御成敗式目」を作ったときに、「これにもれた事項は追加する」と弟重時に手紙を出しています。その後、「追加法」は700か条以上もだされたそうです。
湯浅氏は、1239年に泰時が出した追加法119「地頭を違背せる咎」をもとに反論し、結局湯浅氏は敗訴にはならなかったそうです。
まさか、泰時もこんなにひどいことをする地頭のために出したのではないでしょうが、鎌倉時代が訴訟社会で、「御成敗式目」はただの教科書に書いてある「暗記」単語ではないことがわかりました。
★ 北条泰時のファンになりました
講座のあと、私は北条泰時についてより知りたくなりました。
教科書も大切ですが、資料の大切さを思いました。現代語訳の「御成敗式目」は、すばらしい資料だったと思います。
楢崎さんの講座は、いつも“もっと学びたい”ということを残してくれるので参加したいのです。
「子どもと学ぶ歴史教科書の会」会報『つどいの樹』(2023年3月1日)
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