《神奈川:個人情報保護条例を活かす会》
★ どこに向かう教育改革 個人情報はどうなる
・渋谷区の全小中学校、来年度から午前教科学習、午後探究学習…経産省流
・5分短縮、2027年度から実施予定…文科省流
★ 渋谷区午前は教科学習、午後は探究学習
渋谷区の全小中学校で、4月から午前は教科学習、午後は探究学習になるとの発表がありました。ビックリです。
「授業時数特例校制度」というのを活用して、国語、社会、算数・数学、理科など各教科の授業時数を1割減らしてその分を総合(探究)的な学習の時間に上乗せするのだそうです。
午後の「探究学習」の方が注目されがちですが、私は午前だけに集中させた教科学習がどうなるのか注目しています。
★ 児童生徒の個人情報収集が大前提
この手法は経産省の「未来の教室」ビジョンそっくりです。渋谷区も「未来の学校」と呼び一体感を隠しません。経産省はそのビジョンで、今の一斉授業を徹底的に批判し、知識はEdTechを使って効率的に「個別最適な学び」で獲得し、探究の時間を捻出すると言っています。EdTechにも探究にも民間企業が参入しもうけさせることができるからでしょう。教育を営利の場にするという、いかにも経産省が考えそうなことです。
「個別最適な学び」と言えば聞こえはいいですが、要はWiFiとタブレットを使って生徒の個人情報、センシティブ情報をビッグデータ化してAIドリルで「学びの自立化」を実現させようとするものです。
できる子はどんどん先に進むが、理解の遅い子はずっと同じところを繰り返す、「個別最適」とはこういうことです。ここでは、教師は「伴走者」なのだそうです。
このような教育を可能とする大前提は、児童生徒の個人情報の収集とプロファイリングにあります。プロファイリングについて文科省は今後の検討課題と言っていますが、現場は先取りするのではないでしょうか。(別紙参照)
★ ICT教育基盤はマイクロソフトが
渋谷区のICT教育基盤はマイクロソフトと一体となってつくられています。マイクロソフトのタブレットが全員に配布され“AIドリル機能・協働学習機能・授業支援機能を1つに統合した学習支援ソフト「ミライシード」(ベネッセ)を導入”、と渋谷区教育委員会は紹介しています。
また、“多様な教育データの蓄積・収集、データ分析や可視化のためのシステムを構築し、きめ細かい指導の充実や学習の改善を図ります。”とも述べています。
ICT教育基盤はマイクロソフトがにぎっているということは、子どもたちの情報が外国の手中にあると言うことにならないのでしょうか。また、もしそこが倒産したら学校運営や子どもたちのデータはどうなるのでしょう。IT産業は厳しい競争の世界でありマイクロソフトがいつまでも存在し続ける保障はないと思います。
★ すでに実験は進んでいる
「ミライシード」ではないですがAI型教材Qubena(キュビナ)のコマーシャルがweb上にあるので紹介します。これは足立区立全小・中学校などで導入され実験されているものです。
《従来の半分の時間で授業ぶ進む!》とのうたい文句があり、その下に最初に実験導入した麹町中学校の例が紹介されています。
※ 冒頭の画像
2018年に千代田区麹町中学校で行った未来の教室実証事業では、1年生から3年生までの基礎クラスで2・3学期の間、Qubenaを授業の中心にすえて、先生は一斉授業はせずに、個々のサポートにあたるという授業を行いました。
結果、学力は維持向上した上で、教科書に設定されている授業時数の半分の時間で学習を終えることできました。更に創出された時間を使い、先取り学習や探求学習を実施することができました。
どのような根拠でこのようなことが言い切れるのかわかりませんが、従来の教育の概念とは全く別なものと理解した方がいいと思われます。
機械は、教科以外の話やいま動いている社会の話などもしないでしょう。そういうものをすべてそぎ落としたもので、機械のペースで授業が半分の時間で終わる(終わらせる)という意味としか考えられません。
渋谷区がどんな形で運用するのかわかりまぜんが、全教科これを毎時間、小、中9年間続けるのでしょうか。
★ 文科省は5分短縮授業
一方、文科省は5分短縮授業を中教審で議論をはじめ、2027年度の学習指導要領に反映させたい意向のようです。
経産省も文科省も学校をできるだけ市場化・民営化して、教科学習を減らして総合的学習(探究学習)に振り向ける考えのようです。
遅い速いの違いはあれども、経産省と向いている方向は同じです。すでにデジタルを使っての教育改革は省庁を超えて内閣府の意思となっているからです。
★ 教師の働き方改善になるのか?
2022年度から横浜市で5分短縮、午前5時間授業が実験的に始められたそうです。短縮によって捻出された時間は、「スキルタイム」(低学年)「ロングタイム」(高学年)に当てられ、生徒の自主性や学習への積極性を高める時間に使われているといいます。
NHKのwebサイトを見ると、当該学校の教員らしい人が「4年生以上は週に2日、3年生も週1日7時間授業。7時間目には子ども達の集中力は無い」などと投稿しており、ゆとりなんかない、「全学年5時間で下校を実現できて初めて意味がある」と述べ「成功とは言えない」と述べています。
★ 5分短縮は教職員のき方改善のためではない
文科省の進めようとしている5分短縮は働き方改革のためにやっているのではないと思われます。教科の時間を削って、そこで浮いた時間を学校裁量にと言いますが、実際は総合・探究学習に回そうと意図していると思われます。
年間の総時間数は変えないと言っていますから、働き方改革を目的としたものとは言えないと思います。いやむしろ、5分短縮の授業をどううまく縮めるのかとか、新たに総合とか探究という学習展開を考えなくてはならない分、逆に労働過重となるのではないでしょうか。
また、文科省・中教審では「定額働かせ法」と揶揄される給特法について「『現行の枠組み維持した上で改善』が大勢 中教審特別部会」(教育新聞)とあるように、精神的にも追い話められている教師の労働環境を改善する意思はないようです。何年かすればAIが代わりを果たすとでも考えているのでしょうか。
『個人情報保護条例を活かす会』(2024年3月15日)
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