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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(2018年10月25日)

2018年10月30日 | 暴走する都教委
 ◆ 傍聴者への上から目線

 26日東京新聞朝刊は、「いじめ72%増の3万854件」「不登校は最多1万1988人」の見出しで、都内公立小中の実態報告(文科省調査)を大きく報じている。都教委ホームページを開くと、そこには詳細な報告(10月25日)が掲載されている。
 ◆ 「主なポイント」として次を挙げる。
 ○ 暴力行為の発生件数は2,217件であり、前年度より153件減少した。前年度より中学校、高等学校では減少したが、小学校では、暴力行為が89件増加している。
 ○ いじめの認知件数は、前年度と比べ12,893件増加となる31,049件であり、全ての校種で増加した。3月31日時点のいじめの解消率は87.0%であり、前年度と比べ、小学校、中学校、高等学校で低下し、特別支援学校で上昇している。
 ○ 小・中学校における長期欠席者のうち、不登校児童・生徒数は小学校3,226人、中学校8,762人であり、前年度より小学校で282人、中学校で320人増加した。不登校出現率は小学校0.56%、中学校3.78%であり、小・中学校ともに上昇している。学校復帰率は小学校25.6%、中学校20.1%であり、小・中学校ともに低下している。
 ○ 高等学校における長期欠席者数は5,832人であり、全日制・定時制ともに増加した。中途退学者数は2,318人であり、前年度より全日制では110人減少し、定時制では117人増加した。
 都教委はこの報告をなぜ、非公開議題にしたのか。非公開議題にできるのは、「人事に関する事件その他の事件について、教育長又は委員の発議により、出席した教育長及び委員の三分の二以上の多数で議決したとき」(東京都教育委員会会議規則)となっている。そのいずれに該当する議題なのかが不可解だったので、都教委に電話を入れた。
 「文科省が公開日時を25日17時(以降)と言ったので、非公開議題にした」のだという。
 「疑問に思った傍聴者は私だけでない。なぜ、その説明をしなかったのか。そうした運営が問題だ」と言うと、「教育情報課(都民の声を聞く部署)に要望として伝えます」。私は「教育情報課が苦情等を報告するのは半年先。すぐに直接、教育長等に報告してほしい」と言って、電話を置いた。
 教育委員が定例会を欠席しても開始時刻が遅れても、司会進行を担当する教育長はいつも何の説明もしない。傍聴者がそれを訊けば、「妨害発言」だとして傍聴券を奪ってきた。
 今回も、非公開にする理由を知りたかったけれど、傍聴権を奪われるから、私は声に出さなかったのだ。「傍聴をさせてやっている」という上から目線意識が全ての教育委員にあるとしか思えない。
 公開議題・報告は「平成30年度『児童・生徒の学力向上を図るための調査』及び平成30年度『全国学力・学習状況調査』の結果について」。
 非公開議案には今回も「懲戒処分等」(停職以上の処分案件)があった。

 ◆ 「平成30年度『児童・生徒の学力向上を図るための調査』及び平成30年度『全国学力・学習状況調査』の結果について」
 全国学力テスト(小6、中3 2007年度から)に先立つ2004年度から都教委は都独自の学力テスト(小5、中2)を行ってきた。
 1960年代に行われた全国学力テストでは、学校や地域間の競争が過熱し、不正行為も起きたことから、文部省は1964年をもって悉皆調査を中止した経過がある。
 都学力テストにおいても、足立区では区教委あげての不正行為が起きた(05年1月)。
 点数の取れない子どもを休ませようと保護者に要請したり、学力テストの採点から点数の取れない児童3人を外したり、試験監督中に教師が誤答を児童に机を叩いて指摘するなど、学校ぐるみで成績を上げるための不正行為や、過去問を使った対策をとった。
 さらに、区教委は問題を事前に配布した。事前配布した際の校長会には111人の校長が出席していたというのに、誰一人それを問題にしなかったという。一般教員からの告発もなく、この不正が発覚したのは、保護者からの告発による(06年7月)。これに対する都教委の追及は、なかったに等しい。
 この不正行為に反省し学ぶことなく、都教委は学力テストを続け、更には各区市町村教委が独自の学力テストまで行っている。
 競争に煽られるのは、子どもと教員たちだ。競争の過熱ぶりも、上記した「不登校」の児童・生徒の増加と関連しないだろうか。
 点数の結果よりも、学校に子どもの居場所がなくならないようにするにはどうすればいいかを教育委員たちは論じてもらいたい。
 今年度の調査結果からわかることとして、都教委が報告した中からいくつかを紹介する。
 都学力テストの結果からわかることは――。

①「学力の定着が図られている問題例」として、小5算数「10-3?2」の正答率は88.6%。平成25年度の正答率78.2%と比較し改善が図られている。
②「定着が不十分な問題例」として、中2数学「底面積と高さがそれぞれ等しい円柱と円錐があります。この時、円柱の体積は円錐の体積の何倍になるか答えなさい。」の正解「3」の解答は57.3%、「三分の一」と解答したのが7.7%。「文章から基準となるものを捉えることに課題(がある)」と結論付ける。
③授業が「よく分かる」「どちらかといえば分かる」と回答した児童・生徒の割合は、小学校において高い状態を維持し、中学校においても増加傾向にある。
④学校質問紙調査、「授業の最後に学習したことを振り返る活動を行った学校と行わなかった学校」との児童・生徒の正解率の差は拡大した。「よく行った」と「あまり行っていない」との差は、小5国語で4.9、算数で7.0%(点)など。
⑤児童・生徒質問紙調査、「自尊感情に関する質問の調査結果と平均率との関連」で、「自分のことを大切な存在だと感じていますか」に「感じている」生徒と「感じていない」生徒との正解率の差は、国語で3.8、数学で7.8%(点)の差。
 全国学力テストの結果からは――。
 各教科の正答率は、小6国語で東京は74%(点)(全国平均は71%)など、全国平均を1~3%上回る。
 ただし、中3理科は全国平均を1点下回り65%。
 ほかに、「学力の定着が図られている問題例」及び「課題が見られる問題例」を掲載する。
 この学力テスト結果から都教委は、「全体的に年々正答率が上がっており、都教委と学校現場が協力して学力向上に努めてきた成果が出てきた」と結論づけた。特にその成果は教員の質の向上、教員の努力によるところが大きいと胸を張っていた。
 「本当に教師の質が向上したのですか?」と問いたい。今東京の教員の中には少なくない割合で、「選挙に行ったら中立が保てないのでは?」と考えている教員がいるとのことです。
『レイバーネット日本』(2018-10-29)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1025nedu
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