◆ 原発避難者の訴え (東京新聞【本音のコラム】)
福島原発事故の避難者は、全国に散らばっている。古里に帰るあてのない生活は、想像してみるだけでも痛ましい。
福島県の内堀雅雄知事は、二〇二〇年三月には、浪江町、富岡町などの「帰還困難区域」避難世帯への応急仮設住宅提供を打ち切る、と発表している。
原発誘致を決定したのは県と各自治体だった。
被害者への責任がある。
避難者の困窮を尻目に再稼働へ突進している電力会社の姿は、犠牲者をハネ飛ばして走るダンプカーのようにみえる。
東電以外の会社は「事故を起こしたのはうちではありません」と言いたいようだが、「事故など絶対起こしません」とは言わない。
「避難計画を検討中」というだけだ。
昔、伊方町の町長に会ったとき「国が安全だ、というから安全です」と答えてケロリとしていた。
秋田県の避難先で、夫と死別したある女性は「働いている人のことを思えば、原発やめうとは言えない」と言う。
「被害者が当事者なんですから」と私は言った。
「活をいれられました」と書いた手紙をもらった。
被害者でさえ声をあげず遠慮して生きる、原発圧政社会の精神支配だ。
避難者の存在は「復興オリンピック」の喧噪(けんそう)に消されそうだ。
住宅は生活と人権の基盤である。その破壊が原発の本質だ。
最後のひとりまで、避難者の生活を支援する責任が、東電、国、県にある。
『東京新聞』(2018年10月30日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
福島原発事故の避難者は、全国に散らばっている。古里に帰るあてのない生活は、想像してみるだけでも痛ましい。
福島県の内堀雅雄知事は、二〇二〇年三月には、浪江町、富岡町などの「帰還困難区域」避難世帯への応急仮設住宅提供を打ち切る、と発表している。
原発誘致を決定したのは県と各自治体だった。
被害者への責任がある。
避難者の困窮を尻目に再稼働へ突進している電力会社の姿は、犠牲者をハネ飛ばして走るダンプカーのようにみえる。
東電以外の会社は「事故を起こしたのはうちではありません」と言いたいようだが、「事故など絶対起こしません」とは言わない。
「避難計画を検討中」というだけだ。
昔、伊方町の町長に会ったとき「国が安全だ、というから安全です」と答えてケロリとしていた。
秋田県の避難先で、夫と死別したある女性は「働いている人のことを思えば、原発やめうとは言えない」と言う。
「被害者が当事者なんですから」と私は言った。
「活をいれられました」と書いた手紙をもらった。
被害者でさえ声をあげず遠慮して生きる、原発圧政社会の精神支配だ。
避難者の存在は「復興オリンピック」の喧噪(けんそう)に消されそうだ。
住宅は生活と人権の基盤である。その破壊が原発の本質だ。
最後のひとりまで、避難者の生活を支援する責任が、東電、国、県にある。
『東京新聞』(2018年10月30日【本音のコラム】)
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