週刊新社会【沈思実行(215)】
★ 袴田事件 捜査員の犯罪
鎌田 慧
袴田事件、無罪判決だった。しかし、10年前に再審開始決定の判決がありながら、検察側の抗告によってこの判決まで10年間も空費された。
警察側の「証拠偽造」が再審決定の裁判所から指摘され、さらに今回静岡地裁判決でも、明確に示された。
捜査当局のでっち上げを、裁判所が認めたのは、異例である。
毎日新聞と東京新聞が、それぞれ事件当時、警察発表のまま、袴田巌さんを犯人扱いにして誹諦中傷を加えたことを、謝罪する文章を発表した。
読売新聞は謝罪こそしなかったが、一面の真ん中に、社会部長名で「検察は控訴断念を」との主張を掲げた。
ところが、朝日新聞は謝罪がなく、元最高検次長の「控訴する可能性は十分考えられる」との談話を使った。あたかも検察を激励するかのような記事で、両論併記、客観報道の悪弊、冷たい紙面つくりだった。
警察発表に悪ノリした記事が「容疑者」とその家族をいかに苦しめたか、との反省が必要になったのに、とわたしは東京新聞の連載コラムで批判した。
検察側が控訴を断念した翌日、ようやく一面で「当時の報道、おわびします」「人権感覚を欠いていました」とする東京本社編集局長の談話を掲載した。
裁判所に「証拠捏造」と断定された検察側は「検事総長談話」を発表した。判決批判の中心は「一年以上味噌タンクにつけられていた、証拠の着衣、5点の衣類に赤みは残らない」とする主張に対してである。
これは科学的に論証されているのだが、そのうちの一点のズボンの「とも裂(きれ)」が袴田家から発見されたのも、家宅捜査へ行った捜査員の仕業なのだから芸が細かい。
狭山事件でも「被害者」のものと警察が主張する「万年筆」が、3度目の家宅捜索で「なげし」の上から発見されている。これも捏造なのだ。
控訴を断念した検事側の理由は「袴田さんは結果として相当な長期な期間にわたり、その法的地位が不安定な状況に置かれてしまうこととなりました」。だから申し訳ない、というのだが、それは全面的に警察と検察の所業のせいなのだ。
『週刊新社会』(2024年10月23日)
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