★ “夫婦同姓”定めた民法
日本政府に改正求める勧告 国連委員会 (NHK NEWS)
女性への差別撤廃を目指す国連の委員会は、ジェンダー平等に向けた日本政府の取り組みに対する見解を発表し、夫婦が同じ名字にすることを定めた日本の民法について、改正を求める勧告を出しました。国連の委員会が夫婦同姓を定めた民法について勧告を出すのは、今回で4回目です。
女性差別撤廃条約を批准している各国の取り組みを定期的に審査している国連の委員会は今月、日本への審査を8年ぶりに行い、29日、日本政府の取り組みに対して見解を公表しました。
それによりますと、結婚した夫婦が同じ名字になることを定めた民法の規定について、「女性が夫の姓を名乗ることを余儀なくされることが多い」と指摘し、差別的だとしたうえで、夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」を可能にする法改正を行うよう日本政府に勧告を出しました。
国連の委員会は、夫婦の同姓を定めた日本の民法の規定についてこれまでに3回、改正を求める勧告を出していて、今回で4回目です。
また、委員会は、皇位継承における男女平等を保障する必要があるとして、皇位は男系の男子が継承すると定めている皇室典範を改正するよう勧告しました。
このほか、個人が国連に対して人権の救済を申し立てられる制度を定めた国連の「選択議定書」に批准するよう求める勧告などを出しました。
★ 委員の1人「平等の問題であり女性の選択の問題」
国連の女性差別撤廃委員会の委員の1人で、日本政府の取り組みの審査にあたったバンダナ・ラナ委員が29日、NHKの取材に応じました。
委員は、はじめに「今回の審査までに、日本はいくつかの大きな進歩を遂げた。女性の再婚禁止期間の廃止や男女の婚姻年齢が18歳となったことなど、肯定的な変化があったといえる」と評価しました。
一方で、「まだ取り組むべき課題が残されている」と述べ、重要な課題の1つに選択的夫婦別姓を可能にする法改正をあげました。
委員は「日本政府は、夫婦の姓について国民の議論を進めてきたと主張してきたが、これは平等の問題であり女性の選択の問題だ。女性自身のアイデンティティーへの影響を考えなければならない」と指摘しました。
そのうえで、「日本が国際社会における力とイメージを保ち続けるためには、変化を受け入れていくことが非常に重要だ」と話しました。
★ 20年以上前から過去3回にわたり是正求める勧告
国連の女性差別撤廃委員会ではこれまで、夫婦同姓を義務づける日本の民法について、20年以上前から過去3回にわたり是正を求める勧告を出してきました。
法務省によりますと、把握するかぎり、結婚後に夫婦いずれかの姓を選択しなければならない制度を採用している国は、日本だけだということです。
厚生労働省の去年の調査では、夫の名字を選択した夫婦の割合は94.5%となっていて、9割を超える状態が続いています。
委員会ではこうした状況をふまえ、2003年と2009年に行われた審査で、差別的な法律だと指摘してきました。
さらに、直近の2016年には「勧告への対応がなく遺憾だ」として、早期に対応を図るよう重ねて指摘しています。
★ 国内の世論の状況は
今月17日、国連の女性差別撤廃委員会の審査で日本政府の代表団は、「夫婦が別の姓を名乗ることを認めるかどうかは国民の意見が分かれている。日本社会の家族のあり方に関わる重要な問題で国民の理解が必要だ」と述べました。
夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の導入をめぐっては、27日に行われた衆議院議員選挙でも争点の1つとして注目を集めました。
制度に反対する立場の人からは「家族の一体感や絆が弱まる」とか、「旧姓を通称使用できる機会は増えている」といった意見があります。
一方、賛成の立場の人からは「姓を変えることで仕事や生活で支障がでる」、「女性が姓を変えるケースが多く不平等だ」といった声が出ています。
NHKが今月18日から3日間、全国の18歳以上を対象に行った世論調査では、「選択的夫婦別姓」の導入について賛否を尋ねたところ「賛成」が53%、「反対」が26%、「わからない、無回答」が21%となっています。
『NHK NEWS』(2024年10月30日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241030/k10014623351000.html
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