パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

元東電社員が語る原発行政のウラのウラ

2018年07月24日 | フクシマ原発震災
   たんぽぽ舎です。【TMM:No3419】地震と原発事故情報
  《7/11東電本店合同抗議主催「東電は責任をとれ」連続講座》
 ◆ 「東電は原発を運転する資格も余力もない」「柏崎刈羽原発の再稼働なんてとんでもない」
   ~蓮池 透さんのお話を聞いて

横田朔子 (たんぽぽ舎ボランティア)

 蓮池 透さん(元拉致被害者「家族会」事務局長)は元東京電力の社員で、長年原子燃料サイル部で働いてこられた方です。
 今回のお話は、エンジニアとしての専門分野に関するものではなく、東電内部のどうしようもない構造的な体質、通産省(※)と東京電力の癒着の実態をラフな言葉で語られました。その概要を報告します。以下、◎は蓮池 透さんのお話から引用です。
 ◎ 東電に原発を運転する資格はない!

 東京電力の借金は昨年で10兆円を超えている。その東電が今年は黒字決算となっている。膨大な借金を収入とみなし、黒字にさせた
 今、東電は金を稼ぐのに躍起になっている。私は、もう東電は福島の復興と廃炉、それから被害を受けた福島県の方々、その周辺の方々、避難している方々、避難していない方々等の救済とケアに専念すべきであって、もう原発を運転する資格は東電にないと思っている。
 これは東京電力だけではない。要するに核のゴミ捨て場がないという事だけで一発アウトだ。
 世界一厳しい基準なんてとんでもない。対症療法で、張りぼて基準でしかない。
 炉心溶融についても東電は100万年に1回とか1000万年に1回と言ってきた。しかし福島第一原発では、同時に3つの原子炉で炉心溶融が起きた。
 ◎ 避難計画?

 私の実家は、柏崎の1号機からわずか3kmで、とても他人ごととは思えない。
 3~4年前に母が避難計画の事で東電に問合せしたら、「すみません。がんばります」としか言われなかった。
 数年後に母がまた問い合わせると、「まず近くの小学校へ避難して下さい。その後はスキー場(100km以上離れている)へ車で行って下さい」と。
 地元での避難訓練に母が参加しようと行ってみたら、地元の役付きの人たちばかりで一般住民は対象外だった
 避難計画は無いに等しい。日本で避難計画の概念は成り立たない。

 ◎ 日本は潜在的核保有国

 47トンものプルトニウムの処分をどうするか。
 プルサーマルでの使用量は微々たるもの。「もんじゅ」は廃炉にしたが、高速炉路線は保持。
 他国から、日本は潜在的核保有国と言われてもしょうがない。本当は処分しなければならないのにどん詰まり状態だ。
 冷静に、理論的に考えれば、原発はつくってはいけない。

 ◎ 通産省(※)の“安全審査官”は原発の事は何も知らない

 私が通産省(※)対応をしていた時、安全審査官の勉強会(通称ヒアリング)を担当し教えた。
 彼らは本当に何も知らない素人だった。だからまともな質問は殆んどなく、文章のてにおはの類いを訂正するばかりで、まるで国語の勉強会だった。
 原発に関する知識を持たない素人たちが、安全審査に関わっているのが実情だ。

 ◎ “昼の会議で解決できない案件は夜で”!

 当時は通産省(※)のお役人への接待は日常茶飯事で当たり前。特に地方電力会社は豊富な交際費で接待した。
 当時はパソコンはなく、通産省(※)から質問されるたびにメーカーに電話で聞くというパターンで、私たちは“テレホンエンジニア”と呼ばれた。
 東電だってそんなにわかっていないので、メーカーが頼りだった。

 ◎ 「公開ヒアリング制度」の実態は、東電の自作自演

 第一次は通産省(※)主催で、電力会社が説明した。
 第二次は「原子力安全委員会」が主催し、通産省(※)が一般住民に説明した。以前九電でヤラセ問題が発覚したが、どこの電力会社でもヤラセは日常茶飯事だった。
 意見募集したら、原発反対派はどんどん意見を書いて郵送してきたが、推進派は意見を書かない。だから東電側が主婦とか農民をよそおって質問を作為的に作った
 大体7対3の比率で推進派を多くしていた。意見陳述書を出してもらう人を予め決めて、内容も東電が考えて作った。
 柏崎市の1号機と2号機(刈羽村)の時は、原発反対派と機動隊がこぜりあい、逮捕者が出た。
 3、4号機は、対面型をやめて文書のヤリトリだけにした。
 6,7号機(沸騰水型の新型)は、県庁の講堂で行ったが、隣りは警察本部だった。
 傍聴希望の往復はがきがくると、一人ひとり反対派かどうかをテェックして、原発推進派の傍聴希望者が多くなるように設定した
 ◎通産省(※)は電力会社まかせ

 当時はパワーポイントがない時代で、通産省(※)の説明はOHPかスライドを使用していた。通産省(※)の指示で、東電の対応班がカラースライドを作成。
 数千万円の費用はすべて東電が負担させられた。

 説明中、東電は楽屋に待機
 原発反対派の質問・陳述が出ると、通産省(※)側が東電に答えを求める電話がかってきて、東電側は「答えは資料の〇〇頁の△△番にあります」と教えた。議事録も東電側が作成した。
 アメリカの原子力委員会はエキスパートが揃っているが、日本は、答申書に添付する資料はすべて電力会社が作成した。
 ◎ 吉田所長のつぶやき

 柏崎はフクイチと同じBWR(沸騰水型)だが、違う。柏崎は「A-BWR」だ。AはAdvancedで、先進的・より進歩したという意味。新型BWRと言える。
 昔、福島第一原発の故吉田所長と一緒に働いた事がある。吉田所長は私に「A-BWRは砂上の楼閣さ」と言っていた。忘れられない言葉だ。
 ◎ 日本における原子力行政の実態

 「安全審査」は欺瞞に満ちた時間稼ぎの儀式だ。原子力村でかたまって利権構造がつくられている。
 福島第一原発事故以後も原子力村は脈々と続いている。この利権構造を破壊しない限り日本の原子力行政は変わらない。
 原発は結局金で動いている。一部の人が金で潤っている。

 蓮池さんは2時間の間、原稿なしで語られた。公式発表では絶対に聞けない、いわば東電に対する内部告発だと思った。
 通産省(※)の実態…どうしようもない腐敗ぶりにはただただ驚かされるばかりだった。
 たかりの構造、電力会社との癒着は目を覆うばかり。
 原発被害者が聞いたらどんな気持ちになるだろうか。
 過酷な避難生活を強いられている人びとが聞いたら…。
 私たちは、勇気ある蓮池さんの話を決して聞きっ放しにしてはならないと、痛感した。
(※)注:「通産省」は現在の「経済産業省」のことです。

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