パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 国民民主党の原発推進政策の異様さ

2025年01月16日 | フクシマ原発震災

 ☆ 危険な方針がもたらす原発リスク
   原子力産業界の代弁者と化した国民民主党

2024年12月6日 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 ☆ 国民民主党の第7次工ネ基への要請書

 11月27日、国民民主党(以下国民)の玉木雄一郎代表は首相官邸を訪ね、石破茂首相に対して原発の新増設など、国民のエネルギー政策を取り入れるよう申し入れた。(添付資料(略))
 また、玉木代表は第7次エネルギー基本計画に原発の建て替えと新増設を盛り込むよう求めたことを明らかにした。
 時事通信によると『玉木氏は「再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立ではなく、あらゆる安定的な電源の強化が重要だ」と訴えた。国民民主は連合傘下の電力総連などの支援を受けており、原発活用に前向き。首相は「二項対立と言っているわけではない。いろんな議論がこれから先、活発に行われることだと承知している」と理解を示した。』
 要請書の内容には、多くの問題がある。以下に脱明する。

 1.エネルギー一安全保障の観点でも原発は不利である

 エネルギー安全保障という点では、石油ショックが例に出される。自給率を上げる必要があるとの主張は、石油ショックを念頭に置いたものである。
 しかし原発は天然ガス以上に資源を海外に依存している。日本国内にウラン鉱山はない。全量輸入である。

 2.「電力需要の大幅増加に対応」に根拠はない

 国も国民も、将来は日本の電力需要が急騰するとし、それを根拠に電力供給力を増やすと主張しているが、これには根拠がない。
 電力中央研究所(電中研)による将来予測は、意外な値だ。
 将来の電力需要については「基礎的需要について省エネと電化を考慮した結果、2050年度では最小値8290億から最大値1兆750億kWh」とする。なお、中位推計では9230億kWhである(以下、kWhを省略)。

 現在の値はというと、同じ電中研データでは2010年の最終消費電力量が1兆1237億だったのが、2020年の最終消費電力量は9870億で、約12%も減少している。年率で約1.2%ずつ減少しているのである。
 2050年の最小値8290億。今後40年で1580億減る。年間53億、率で0.6%ずつ減少する。
 では最大値はどうだろうか。1兆750億だと880億増だが、年間約30億、率にして0.3%程度の増加に過ぎないのだ。
 これらの推計値には省エネの効果も含まれている。高騰する電気料金のもとで、個人も企業も湯水のごとく電力を使うことなどできない。
 ストレージ産業も莫大な電力を浪費する設備では利用料金が高騰し、誰も使わないだろう。

 3.「再エネ最優先」「原子力低減」といった二項対立?

 この言葉は「二項対立」ではなく、「再工ネ最優先」と言っているに過ぎない。既に再エネのほうがコスト低下になることは明らかだ。
 「他国依存度の低い電源を最大限活用すること」との主張にも首をかしげざるを得ない。原子力はおよそ他国依存性そのものの電源だから。
 もともと原発は英米カナダからの輸入で始まった。現在は米国基盤の沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉であるが、これらの基本技術は米国に依存するため、核燃料を含めて全てが米国の権利が留保されている。

 4.建替え・新増設を明記することとの主張

 日米原子力協定では、協定が消滅すれば原発の稼働は不可能になる。日本の再処理はこの協定でみとめられているが、使うあてのないプルトニウムを持たないなどの制約を受けている。これについて日本が義務を履行していないと見なされた場合、日本のプルトニウム蓄積に懸念を表明し続けてきている米国からの協定終了通告はありうるのだ。
 玉木氏にはそのような知識もないようだ。
 このことは要請書の項目で「原子力発電の使用済み燃料の処理、処分を着実に進めること」と主張している点も、この点に重なる問題点だ。

 新増設はさらにハードルが高い。まず、新増設には新型の安全性を高めた原発を建てなければならないが、これらは非常に高価だ
 日本原電敦賀原発は、既に敦賀半島に3、4号機の建設を計画し、設置許可申請を行っていた。現在審査は止まっているが、建設予定の炉はウエスチングハウス製のAPWRだが、同じ原発が米国で2基合計4.3兆円もかかっている。そのため「費用回収の予見性確保及びファイナンスなどの事業環境の整備を行うこと」を要請しているが、これは経済性がないために建設費を電気料金に上乗せできるようにする制度の導入を検討している経産省の意向に沿ったものだ。政府の構想では原発支援策として今後導入しようとしている。
 原発建設が始まった時点で建設費を電気料金に乗せて消費者に負担させるものだ。さらに計画が中断した場合は、国が資金を出すなどして補償するという。

 5.原子力規制委への牽制

 現在行われている規制機関の審査が膠着しているとして、「効率化により長期化している適合性審査を加速させること」と要請しているが、これは新規制基準適合性審査をどのように捉える立場か如実に示している。
 電力会社や原子力事業者にとって敦賀原発2号機の再稼働不可の審査書決定は衝撃的だった。このようなことが起こらないよう、審査体制を効率化し審査を早めよということだ。
 そんなことをすれば、次々に原発事故が起こる。この政党は、原発事故が起きた場合、責任の一端を担う気があるのだろうか。東電福島第一原発事故の教訓を、当時政権にいた玉木氏はどう考えているのか。そのことをまず聞きたい。

『たんぽぽ舎 金曜ビラ 497号』(2024年12月6日)

 


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