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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

ジェンダー平等の達成は国際的潮流である

2019年05月27日 | 格差社会
 =メディアの今 見張り塔から(『東京新聞』【日々論々】)=
 ◆ ジェンダー平等の流れ
   問われるメディアの覚悟

ジャーナリスト・津田大介さん

 手前味噌(みそ)で恐縮だが、今月は自分の関わった取り組みについて紹介したい。今年八月一日から十月十四日までの七十五日間、愛知県名古屋市と豊田市で開催される国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督を二年前から務めている。
 それに関連して、三月二十七日に記者会見で語った内容がさまざまなメディアで大きく取り上げられ、ネット上で大きな論争を巻き起こしている。「芸術祭に参加するアーティストの男女比を半々にする」と発表したからだ。
 女性活躍のために女性を優先的に登用することをアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)と呼ぶ。今回の措置はその一種と思ってもらっていい。
 ではなぜ、参加作家の男女比を半々にする決断をしたのか。作家を選定する過程で、美術業界に非常に男性優位的な構造が残っていることに気づいたというのがその理由だ。
 具体例を挙げよう。米国の十八の有名美術館の常設コレクションに収蔵された作家の男女比は男性87%、女性13%だ。
 美術品オークション大手・アートネットのベストセラーアーティスト100の中で女性はわずか五人しかいない。
 主な国際芸術祭の男女比を国内外間わず調べてみたところ、ほとんどの芸術祭男性作家が女性作家の三~五倍選出されていることがわかった。
 しかし、美術業界を単に「数」で見れば、女性が男性より多いことがわかる。そもそも芸術祭や美術館の来場者を調べると七割前後が女性だ。
 現在の主要美術大学の男女比は男性二~三割に対して女性が七~八割
 美術館で企画を考える学芸員の男女比も男性34%、女性66%と女性の方が多い。
 ところが、美術館の「館長」という立場に絞ると男女比が逆転し、男性が84%にまで増える。
 つまり、美術業界は顧客もアーティストも学芸員も女性が多い社会であるにもかかわらず、女性がトップになったり、芸術祭にアーティストとして選ばれたりすることが難しい社会なのだ。
 この偏った状況に対して一石を投じたいと思い、今回のトリエンナーレでは参加作家を男女半々にすることを決めた。
 あいちトリエンナーレの取り組みは何も珍しいことではない。
 今年五月十一日に開幕した世界最古・最大の国際芸術祭「ベネチア・ビエンナーレ」では、あいちと同じく参加作家のジェンダー平等を実現している。
 今年六月に開催される世界三大広告賞の一つ・カンヌライオンズでは、審査員の48%が女性になった。
 映画業界や音楽業界でも、数年以内という目標を定め、クリエーターや参加作家、審査員などのジェンダーパランスを平等にする動きが活発化している。
 もはや表現・コンテンツ業界でジェンダー平等の達成は国際的潮流であると言って差し支えないだろう。
 翻って日本のマスメディア業界の現実はどうか。
 女性記者こそ増えたものの、編集委員や論説委員、経営幹部に採用される女性はまだまだ少ない。
 世界中で動き始めたジェンダー平等の流れにどれだけ追従できるか。業界の覚悟が間われている。(毎月第4木曜日掲載)
『東京新聞【日々論々】』(2019・5・23)

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