◆ 公共サービスの産業化進める小池都政改革 (『労働情報』)
2020年7月で任期を迎える小池都知事。東京大改革を掲げ3つのシティ、「セーフシティ」、「ダイバーシティ」、「スマートシティ」の実現をめざし、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック2020東京大会を一つの焦点と定めて都政改革本部の設置と「2020改革プラン」を策定し実行へとつなげている。
その小池都知事による都政改革は、公務職場と公務労働を変容させると共に、官民連携の下に「公共サービスの産業化」を進める安倍政権の先頭に立っているものである。
◆ 都庁版働き方改革の問題
小池都知事が就任して直ちに手を付けたのは、都庁の超過勤務縮減である。
2016年9月に「超過勤務縮減のための新たな取組」を公表し、「全職員が毎日20時までには退庁」するという都庁の新たな働き方の実現を掲げた。
具体的には、残業削減マラソンの実施で削減時間を「競い」、20時以降の超勤命令の事前届出や20時15分の一斉消灯、20時30分以降の退庁者の把握を行う等の「変える」、超勤縮減の取組を表彰する「褒める」の3つをキーワードにしたものであり、これらの取組をトップダウンで宣言し実行してきた。
その結果は、1年目は各局・職場の努力で超過勤務時間の縮減が数字で表れたが、2年目からは増加傾向にあり、本庁では前年度比で超過勤務時問は現在も増加している。
超勤問題の根本的な解決は、年々複雑化・高度化する仕事量に見合った人員配置が必要である。上からのパフォーマンスでは問題が解決しないことのあらわれである。
また、小池都政下で柔軟な働き方による「ライフ・ワーク・バランス」として、時差勤務やフレックスタイム制の導入と拡大、テレワークの推進に力を入れている。
育児や介護などの家庭生活との両立支援は必要であるが、必要以上に拡大しようとしている。
この背景には、東京2020大会開催時の混雑緩和も言われているが、その先には都庁業務の更なる「電子化」を進め、勤務時間にとらわれない働き方=成果型労働への転換をめざしているのではないかと考える。
また、本庁中心の働き方改革は、24時間365日、都民サービスの最前線で働く出先事業所の職員を置き去りにしている。
◆ 都政改革~2020改革プランと都庁リストラ
小池都知事は就任直後の9月1日に、都民ファーストの都政の実現に向けた改革を推進するとして、都政改革本部を設置した。
知事を本部長、外部有識者として特別顧問・特別参与・特別調査員を登用した都政改革本部は当面のテーマとして「各局の自律改革」を掲げた。
特別顧問には、橋下大阪府・市政で特別顧問を務め、公共インフラの民営化を進める上山信一慶応大教授を迎えたところに都政改革の本質がある。
小池都知事の東京大改革は、「しごと改革」「見える改革」「仕組み改革」の3つをあわせて、2017年に「2020改革プラン(素案)」から2018年の「2020改革プラン」へ結びついた。
その中の「見える化改革」では、各局に事業ユニット毎の分析を行わせ、都政改革本部会議に各局から報告させてきた。
その内容は、包括的民間委託や公共施設等の運営権譲渡(コンセッション)方式など民間を活用した新たな運営手法が含まれている。
これらは、安倍政権の「経済財政運営と改革の基本方針2015」の下、「地方行政サービス改革の推進」を積極的に進める方向性で検討が行われているものである。
改革プランの公表の影で悪評の高かった特別顧問は2018年3月に廃止されたが、2020改革プランについて「職員主体の新たな推進体制」に切り替え、改革を後押しするものとして都政改革アドバイザリー会議が同年7月に設置された。
この会議の座長はRAIZAPグループ代表取締役COOの松本晃氏で、「残業手当が諸悪の根源」「裁量労働制賛成」の考えを明らかにしている人物である。
「2020改革プラン」は、毎年度、取組の成果を取りまとめるとともに、追加すべき取組を本プランに取り入れ、改革のバージョンアップを図っていくとしており、2019年のバージョンアップ(改定)版には、2018年度1年間の取組の成果がまとめられ、今後の取り組みや来年度の改革のスケジュールなども追加されている。
「しごと改革」では、「3つのレス(ペーパーレス)(キャッシュレス)(はんこレス)」に代表される業務の電子化を推進すると共に、働き方改革で「一年単位の変形労働時間制」の導入に向けた取組を挙げている。
「仕組改革」では、監理団体改革として「政策連携団体」への名称変更や、水道局所管の(株)PUCと東京水道サービス(株)の統合、学校現場をサポートする支援組織の新設、
そして「見える化改革」は、安倍政権による「公共サービスの産業化」の都政版としてあり、その一つが2019年12月に公表された「都立・公社病院の独立行政法人化」であり、東京都として都民への行政責任と公共サービスを放棄する、新たな都政リストラにつながっている。
◆ 効率一辺倒でなく
昨年の夏は台風対応で、今年はコロナウイルス対応で小池都知事の米国訪問が中止になった。
この訪米では保守系シンクタンク「ハドソン研究所」での講演も予定されていた。ハドソン研究所は毎年「優れた指導者」に創設者の名を冠した賞で表彰しているが、2013年は日本の安倍首相が米国人以外で初めて受賞しており、その関係性を注視しなければならない。
安倍政権の下で進行する「公共サービスの産業化」。それを具体的に実行する小池都知事。
新自由主義的政策により、大資本が減税により莫大な利益を抱え、国民が増税で収奪され、福祉が切り捨てられ、経済の格差が拡大しているのは明らかである。
競争の徹底による「効率」一辺倒の都政で良いのかどうか考えなければならない。
医療や水など、命に直結する公共サービス。はたして都民の声は「効率」なのであろうか。
「効率」ではなく「公立」の聞き間違えではないのか。官民連携の下で進められる公共サービスの切り捨てを許さない取り組みをおこなっていかなければならない。
『労働情報』(2020年3月)
中川崇(東京都労働組合連合会書記次長)
2020年7月で任期を迎える小池都知事。東京大改革を掲げ3つのシティ、「セーフシティ」、「ダイバーシティ」、「スマートシティ」の実現をめざし、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック2020東京大会を一つの焦点と定めて都政改革本部の設置と「2020改革プラン」を策定し実行へとつなげている。
その小池都知事による都政改革は、公務職場と公務労働を変容させると共に、官民連携の下に「公共サービスの産業化」を進める安倍政権の先頭に立っているものである。
◆ 都庁版働き方改革の問題
小池都知事が就任して直ちに手を付けたのは、都庁の超過勤務縮減である。
2016年9月に「超過勤務縮減のための新たな取組」を公表し、「全職員が毎日20時までには退庁」するという都庁の新たな働き方の実現を掲げた。
具体的には、残業削減マラソンの実施で削減時間を「競い」、20時以降の超勤命令の事前届出や20時15分の一斉消灯、20時30分以降の退庁者の把握を行う等の「変える」、超勤縮減の取組を表彰する「褒める」の3つをキーワードにしたものであり、これらの取組をトップダウンで宣言し実行してきた。
その結果は、1年目は各局・職場の努力で超過勤務時間の縮減が数字で表れたが、2年目からは増加傾向にあり、本庁では前年度比で超過勤務時問は現在も増加している。
超勤問題の根本的な解決は、年々複雑化・高度化する仕事量に見合った人員配置が必要である。上からのパフォーマンスでは問題が解決しないことのあらわれである。
また、小池都政下で柔軟な働き方による「ライフ・ワーク・バランス」として、時差勤務やフレックスタイム制の導入と拡大、テレワークの推進に力を入れている。
育児や介護などの家庭生活との両立支援は必要であるが、必要以上に拡大しようとしている。
この背景には、東京2020大会開催時の混雑緩和も言われているが、その先には都庁業務の更なる「電子化」を進め、勤務時間にとらわれない働き方=成果型労働への転換をめざしているのではないかと考える。
また、本庁中心の働き方改革は、24時間365日、都民サービスの最前線で働く出先事業所の職員を置き去りにしている。
◆ 都政改革~2020改革プランと都庁リストラ
小池都知事は就任直後の9月1日に、都民ファーストの都政の実現に向けた改革を推進するとして、都政改革本部を設置した。
知事を本部長、外部有識者として特別顧問・特別参与・特別調査員を登用した都政改革本部は当面のテーマとして「各局の自律改革」を掲げた。
特別顧問には、橋下大阪府・市政で特別顧問を務め、公共インフラの民営化を進める上山信一慶応大教授を迎えたところに都政改革の本質がある。
小池都知事の東京大改革は、「しごと改革」「見える改革」「仕組み改革」の3つをあわせて、2017年に「2020改革プラン(素案)」から2018年の「2020改革プラン」へ結びついた。
その中の「見える化改革」では、各局に事業ユニット毎の分析を行わせ、都政改革本部会議に各局から報告させてきた。
その内容は、包括的民間委託や公共施設等の運営権譲渡(コンセッション)方式など民間を活用した新たな運営手法が含まれている。
これらは、安倍政権の「経済財政運営と改革の基本方針2015」の下、「地方行政サービス改革の推進」を積極的に進める方向性で検討が行われているものである。
改革プランの公表の影で悪評の高かった特別顧問は2018年3月に廃止されたが、2020改革プランについて「職員主体の新たな推進体制」に切り替え、改革を後押しするものとして都政改革アドバイザリー会議が同年7月に設置された。
この会議の座長はRAIZAPグループ代表取締役COOの松本晃氏で、「残業手当が諸悪の根源」「裁量労働制賛成」の考えを明らかにしている人物である。
「2020改革プラン」は、毎年度、取組の成果を取りまとめるとともに、追加すべき取組を本プランに取り入れ、改革のバージョンアップを図っていくとしており、2019年のバージョンアップ(改定)版には、2018年度1年間の取組の成果がまとめられ、今後の取り組みや来年度の改革のスケジュールなども追加されている。
「しごと改革」では、「3つのレス(ペーパーレス)(キャッシュレス)(はんこレス)」に代表される業務の電子化を推進すると共に、働き方改革で「一年単位の変形労働時間制」の導入に向けた取組を挙げている。
「仕組改革」では、監理団体改革として「政策連携団体」への名称変更や、水道局所管の(株)PUCと東京水道サービス(株)の統合、学校現場をサポートする支援組織の新設、
そして「見える化改革」は、安倍政権による「公共サービスの産業化」の都政版としてあり、その一つが2019年12月に公表された「都立・公社病院の独立行政法人化」であり、東京都として都民への行政責任と公共サービスを放棄する、新たな都政リストラにつながっている。
◆ 効率一辺倒でなく
昨年の夏は台風対応で、今年はコロナウイルス対応で小池都知事の米国訪問が中止になった。
この訪米では保守系シンクタンク「ハドソン研究所」での講演も予定されていた。ハドソン研究所は毎年「優れた指導者」に創設者の名を冠した賞で表彰しているが、2013年は日本の安倍首相が米国人以外で初めて受賞しており、その関係性を注視しなければならない。
安倍政権の下で進行する「公共サービスの産業化」。それを具体的に実行する小池都知事。
新自由主義的政策により、大資本が減税により莫大な利益を抱え、国民が増税で収奪され、福祉が切り捨てられ、経済の格差が拡大しているのは明らかである。
競争の徹底による「効率」一辺倒の都政で良いのかどうか考えなければならない。
医療や水など、命に直結する公共サービス。はたして都民の声は「効率」なのであろうか。
「効率」ではなく「公立」の聞き間違えではないのか。官民連携の下で進められる公共サービスの切り捨てを許さない取り組みをおこなっていかなければならない。
『労働情報』(2020年3月)
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