★ 政治家と教育委員会による性教育攻撃、
東京地裁が「改定前教基法違反」の画期的判決
教育内容への政治家と教育委員会による攻撃を、改定前教育基本法が禁じる「不当な支配」とした画期的判決が3月12日、東京地裁で出た。
東京・日野市の都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)では、教職員が子どもたちの実態に目を向け、保護者らと連携、試行錯誤しながら、「こころとからだの学習」という性教育を実践、高い評価を得てきた。
しかし横山洋吉・都教育長(当時。67歳)の「七生養護の教材は極めて不適切。強く指導して参ります」という、土屋敬之都議(民主)とのエール交換の都議会答弁(03年7月2日)で一変。
翌々日(7月4日)、土屋・古賀俊昭(自民)・田代博嗣(自民)の三都議が”視察”と称し、都教委職員と産経新聞記者を伴い同校に押し掛け、保健室で養護教諭らに、「こういう教材を使うのはおかしい。感覚が麻痺しているよ」などと一方的に非難し、都教委は授業で使用していた教材を没収。
翌日(7月5日)の『産経新聞』は「過激性教育」「まるでアダルトショップ」など と、事実を歪曲する記事を掲載した(【注】参照)。
都教委は同年9月、教職員を厳重注意し(同校校長は停職1か月の懲戒処分の上、教諭に降格。関連し他校の校長・教頭や教諭らを含む処分者は、厳重注意も合わせると116人に)、性教育の年間指導計画の変更を強制、03年度末には教員の大量異動も強行した。
東京弁護士会は05年1月、都教委に対し「教育への不当な介入をしてはならない。教員への厳重注意は違法であり撤回せよ。没収した教材を返還せよ」等明記した岩井重一会長名の警告書を発したが、都教委は無視したため、同年5月、教職員と保護者31人が都教委と三都議、産経新聞を相手取り、計約2900万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
3月12日の判決で矢尾渉(わたる)裁判長は、都教委と三都議に計210万円の賠償を命じた。
判決はまず、三都議の保健室での非難行為を「侮辱により教諭らの名誉感情を侵害。民法709条の不法行為責任を負う」と断じた上、「七生養護の性教育に介入・干渉するもので、教育の自主性を阻害し歪める危険のある行為として、改定前教育基本法第10条1項の『不当な支配』に当たる」と明言した。
続けて判決は、「同行した都教委職員は、三都議の『不当な支配』から個々の教員を保護する義務があった」が、「非難する都議を制止せず、保護義務に違反した」とした。
判決は更に、「(三都議が攻撃を始めた)02年11月までは、都教委は七生養護の性教育を評価していた」と認めた上、「教員への事前の研修や助言・指導の機会を与えないまま都教委が厳重注意した行為は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の濫用で、国家賠償法上違法」と断じ、「都教委は名誉感情を侵害された教諭らに損害賠償責任がある」と認定した。
しかし判決は、都教委による教材没収、年間指導計画の変更強制、教員の大量異動強行と、産経新聞の歪曲報道については「『不当な支配』に当たるとはいえない」とした。
判決後、原告側の児玉勇二弁護士は「教育内容への不当介入は許されないという判決は、教育史上、画期的だと思う」と述べた。
一方、大原正行・都教育長(58歳)は「主張が認められず大変遺憾。内容を確認し今後の対応を検討したい」とコメントした。
【注】土屋都議らは教材の人形の服を脱がせた状態で写真撮影をした。
『週刊金曜日』(3月20日号【金曜アンテナ】)
『判決要旨』
http://www.kokokara.org/pdf/shoko/hanketsu_20090312.pdf
東京地裁が「改定前教基法違反」の画期的判決
永野厚男(教育ライター)
教育内容への政治家と教育委員会による攻撃を、改定前教育基本法が禁じる「不当な支配」とした画期的判決が3月12日、東京地裁で出た。
東京・日野市の都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)では、教職員が子どもたちの実態に目を向け、保護者らと連携、試行錯誤しながら、「こころとからだの学習」という性教育を実践、高い評価を得てきた。
しかし横山洋吉・都教育長(当時。67歳)の「七生養護の教材は極めて不適切。強く指導して参ります」という、土屋敬之都議(民主)とのエール交換の都議会答弁(03年7月2日)で一変。
翌々日(7月4日)、土屋・古賀俊昭(自民)・田代博嗣(自民)の三都議が”視察”と称し、都教委職員と産経新聞記者を伴い同校に押し掛け、保健室で養護教諭らに、「こういう教材を使うのはおかしい。感覚が麻痺しているよ」などと一方的に非難し、都教委は授業で使用していた教材を没収。
翌日(7月5日)の『産経新聞』は「過激性教育」「まるでアダルトショップ」など と、事実を歪曲する記事を掲載した(【注】参照)。
都教委は同年9月、教職員を厳重注意し(同校校長は停職1か月の懲戒処分の上、教諭に降格。関連し他校の校長・教頭や教諭らを含む処分者は、厳重注意も合わせると116人に)、性教育の年間指導計画の変更を強制、03年度末には教員の大量異動も強行した。
東京弁護士会は05年1月、都教委に対し「教育への不当な介入をしてはならない。教員への厳重注意は違法であり撤回せよ。没収した教材を返還せよ」等明記した岩井重一会長名の警告書を発したが、都教委は無視したため、同年5月、教職員と保護者31人が都教委と三都議、産経新聞を相手取り、計約2900万円の損害賠償を求める裁判を起こした。
3月12日の判決で矢尾渉(わたる)裁判長は、都教委と三都議に計210万円の賠償を命じた。
判決はまず、三都議の保健室での非難行為を「侮辱により教諭らの名誉感情を侵害。民法709条の不法行為責任を負う」と断じた上、「七生養護の性教育に介入・干渉するもので、教育の自主性を阻害し歪める危険のある行為として、改定前教育基本法第10条1項の『不当な支配』に当たる」と明言した。
続けて判決は、「同行した都教委職員は、三都議の『不当な支配』から個々の教員を保護する義務があった」が、「非難する都議を制止せず、保護義務に違反した」とした。
判決は更に、「(三都議が攻撃を始めた)02年11月までは、都教委は七生養護の性教育を評価していた」と認めた上、「教員への事前の研修や助言・指導の機会を与えないまま都教委が厳重注意した行為は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の濫用で、国家賠償法上違法」と断じ、「都教委は名誉感情を侵害された教諭らに損害賠償責任がある」と認定した。
しかし判決は、都教委による教材没収、年間指導計画の変更強制、教員の大量異動強行と、産経新聞の歪曲報道については「『不当な支配』に当たるとはいえない」とした。
判決後、原告側の児玉勇二弁護士は「教育内容への不当介入は許されないという判決は、教育史上、画期的だと思う」と述べた。
一方、大原正行・都教育長(58歳)は「主張が認められず大変遺憾。内容を確認し今後の対応を検討したい」とコメントした。
【注】土屋都議らは教材の人形の服を脱がせた状態で写真撮影をした。
『週刊金曜日』(3月20日号【金曜アンテナ】)
『判決要旨』
http://www.kokokara.org/pdf/shoko/hanketsu_20090312.pdf
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