◆ 異様な「国歌斉唱」の実態
コロナ禍での「卒業式総括集会」を教員らが開催 (金曜アンテナ)
今年の「卒業式総括集会」が3月31日に東京都内で開かれた。卒業式や入学式等での「君が代」斉唱の際に起立やピアノ伴奏をしなかったことを理由に東京都教育委員会から懲戒処分を受けた都立学校の教員らによる「被処分者の会」などの主催で、77人が参加した。
最初に川村佐和(かわむらさわ)さん(都立美原高校教員)が今年の卒業式について「不起立や不伴奏は現時点で把握できておらず、処分された教職員がいなかったのは3回目」と報告。特徴を以下のように述べた。
コロナ禍(か)で迎えた昨年の卒業式では「国歌斉唱」が全都立学校で強行された。今年は斉唱をやめたのは昨年の間違いを反省したからなのか。
都教育庁の久保田聡(くぼたさとる)・主任指導主事(現都立五日市高校校長)は後日、筆者の取材に対して「昨年はどういう感染症か分からなかったので…」と釈明。
実際には歌わないのに式次第に「国歌斉唱」と書かせるのはおかしくないかとの問いには「CDを流すことで『国歌斉唱』を形として行なうということです」。
さらに筆者が「国歌斉唱」したとみなすということかと質すと「まあ、そういうことになりますね」と認めた。
この点について「被処分者の会」事務局長の近藤徹(こんどうとおる)さん(元都立葛西(かさい)南高校教員)は「私は野球部の顧問でしたが、歌わないのに起立させるというのは、試合でピッチャーが投げないのに打席で素振りしろというような笑い話。教職員や生徒を従わせることが自己目的化しちゃってる。そんな都立学校でいいのか、到底都民の納得を得られません」と批判した。
◆ 都教委の独善ぶりを批判
集会では同日、処分取り消しを求め、15人の現元教員が東京「君が代」裁判5次訴訟を提訴したことも報告され、原告が紹介された。
また、都立特別支援学校元教員の根津公子(ねづきみこ)さんも報告した。根津さんは2009年3月の卒業式での「君が代」斉唱時の不起立により停職6カ月の処分を受けたが、その取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決(東京高裁・20年3月)は一審判決(東京地裁・18年5月)を変更。根津さんが「逆転勝訴」し、今年2月に最高裁も高裁判決を維持する決定をした(本誌3月5日号)。「最高裁の現状を見ると高裁判決が維持されることはありえないと思っていましたが、維持されました」と根津さんが述べると拍手がわいた。
高裁判決は停職6カ月の処分について「より重い処分は免職のみ」とし、「被処分者への心理的圧迫の程度は強い」としている。根津さんに「心理的圧迫」を感じさせたことを都教委はどう捉えているのか。
藤田裕司(ふじたゆうじ)教育長は筆者の質問状に「本件高裁判決では、都教委の控訴人らに対する処分に関して、『処分の量定に際して職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、本件各処分を行ったとまでは認めることはできない』と言及しています」とメールで回答した。
根津さんにこの回答を伝えると「処分量定の部分の判示は損害賠償請求についてであり、停職6カ月処分の心理的圧迫の強さについてではありません。藤田教育長は判決文を読んでも理解できない?それとも、いいとこどりの読み方?」と語っていた。都教委の独善ぶりがよく分かる。
『週刊金曜日 1324号』(2021.4.9【金曜アンテナ】)
コロナ禍での「卒業式総括集会」を教員らが開催 (金曜アンテナ)
永尾俊彦・ルポライター
今年の「卒業式総括集会」が3月31日に東京都内で開かれた。卒業式や入学式等での「君が代」斉唱の際に起立やピアノ伴奏をしなかったことを理由に東京都教育委員会から懲戒処分を受けた都立学校の教員らによる「被処分者の会」などの主催で、77人が参加した。
最初に川村佐和(かわむらさわ)さん(都立美原高校教員)が今年の卒業式について「不起立や不伴奏は現時点で把握できておらず、処分された教職員がいなかったのは3回目」と報告。特徴を以下のように述べた。
①都教委は昨年末、都立学校長に今春の卒・入学式について「通知」を行ない、感染症対策のため「歌唱は行なわない」が式次第に「国歌斉唱」と記載。歌唱入りCDを起立して聞くよう指示。「校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われる」としていた。そのうえで、川村さんは「卒業式は国歌斉唱のためにあるのですか。生徒のための式を取り戻したい」と述べた。
②「通知」は式次第の実施例まで示し、送辞・答辞は短縮。生徒表彰や卒業生の歌はなく、最も感動的な部分が簡略化、削除された。
③今年2月には「国歌斉唱に当たっては式典会場の指示された席で、国旗に向かって起立すること」という職務命令が出された。
④ただ起立して国歌を聞くのみの「国歌斉唱」は、例年にも増して異様なものだった。
コロナ禍(か)で迎えた昨年の卒業式では「国歌斉唱」が全都立学校で強行された。今年は斉唱をやめたのは昨年の間違いを反省したからなのか。
都教育庁の久保田聡(くぼたさとる)・主任指導主事(現都立五日市高校校長)は後日、筆者の取材に対して「昨年はどういう感染症か分からなかったので…」と釈明。
実際には歌わないのに式次第に「国歌斉唱」と書かせるのはおかしくないかとの問いには「CDを流すことで『国歌斉唱』を形として行なうということです」。
さらに筆者が「国歌斉唱」したとみなすということかと質すと「まあ、そういうことになりますね」と認めた。
この点について「被処分者の会」事務局長の近藤徹(こんどうとおる)さん(元都立葛西(かさい)南高校教員)は「私は野球部の顧問でしたが、歌わないのに起立させるというのは、試合でピッチャーが投げないのに打席で素振りしろというような笑い話。教職員や生徒を従わせることが自己目的化しちゃってる。そんな都立学校でいいのか、到底都民の納得を得られません」と批判した。
◆ 都教委の独善ぶりを批判
集会では同日、処分取り消しを求め、15人の現元教員が東京「君が代」裁判5次訴訟を提訴したことも報告され、原告が紹介された。
また、都立特別支援学校元教員の根津公子(ねづきみこ)さんも報告した。根津さんは2009年3月の卒業式での「君が代」斉唱時の不起立により停職6カ月の処分を受けたが、その取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決(東京高裁・20年3月)は一審判決(東京地裁・18年5月)を変更。根津さんが「逆転勝訴」し、今年2月に最高裁も高裁判決を維持する決定をした(本誌3月5日号)。「最高裁の現状を見ると高裁判決が維持されることはありえないと思っていましたが、維持されました」と根津さんが述べると拍手がわいた。
高裁判決は停職6カ月の処分について「より重い処分は免職のみ」とし、「被処分者への心理的圧迫の程度は強い」としている。根津さんに「心理的圧迫」を感じさせたことを都教委はどう捉えているのか。
藤田裕司(ふじたゆうじ)教育長は筆者の質問状に「本件高裁判決では、都教委の控訴人らに対する処分に関して、『処分の量定に際して職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、本件各処分を行ったとまでは認めることはできない』と言及しています」とメールで回答した。
根津さんにこの回答を伝えると「処分量定の部分の判示は損害賠償請求についてであり、停職6カ月処分の心理的圧迫の強さについてではありません。藤田教育長は判決文を読んでも理解できない?それとも、いいとこどりの読み方?」と語っていた。都教委の独善ぶりがよく分かる。
『週刊金曜日 1324号』(2021.4.9【金曜アンテナ】)
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