=『リベルテ』から=
◆ 自由権規約第7回日本審査 委員の鋭い質問
国際人権プロジェクトチーム 新井史子
コロナ禍のため延期に延期を重ねてきた自由権規約第7回日本審査がようやくこの10月13、14日に行われた。それに先立ちNGO対象の公式および非公式のブリーフィングがあり、多くのNGOが現地とオンラインで参加した。私たちの主張は国際人権活動日本委員会の松田さんに他のレポートと共にまとめて発表して頂いた。
実際の審査もオンラインで視聴したが、スペインのゴメス委員が下記のような切り込んだ質問をしてくれた。以下、私たちに関係のあるパラ23,26についての質問を紹介する。
ゴメス委員の質問(スペイン語→英語の同時通訳の仮訳)
イシュー23
まず、思想・良心・信教および表現の自由を制限する可能性のある「公共の福祉」を取り上げたい。
委員会は締約国の「公共の福祉」の概念が曖昧で無制限であることを懸念しているが、目本政府はLOIのパラ23に対する回答において、2012年にさかのぼって、第6回審査のために提出された報告のパラ5に言及している。これは2012年4月26日に提出されたレポートであるが、そこでは次のように述べている。引用する。「…したがって、いかなる状況においても、「公共の福祉」の概念の下、国家権力により恣意的に人権が制限されることはないし、また、同概念を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えることはあり得ない」引用終り。
しかし、委員会の関心は近年、特に2012年以降「公共の福祉」の概念がどのように展開したかにある。特に最高裁の判例が2012年以降にあったのかどうかについての情報を頂きたい。(この時の表情やジェスチャー、2012年という語のくり返しなどから、第6回審査のレポートにただ言及するだけという日本政府の手抜きに対する委員のいら立ちが窺えた)
イシュー26
これは東京都教育委員会の国歌斉唱に関する規範に対する良心的(命令)拒否の問題だ。
我々が受けた報告によると、2003年以来毎年、東京都教育委員会は東京の都立学校の教員に対して、学校行事において国旗にむかって起立し、国歌斉唱をすることを命令する通達を出し、484名の教員が国歌斉唱の間静かに着席していたことに対して罰せられた。彼らの振る舞いは秩序を乱す違反行為とされ、最高6ヶ月の停職という処分を受けている。
締約国はこれが規約18条の思想・良心の自由に基づく良心的(命令)拒否とどのような整合性かあるか説明して頂きたい。
締約国報告のパラ216~219によると、校長が東京都の教員に対して国旗国歌について教えるよう命令した場合、教員は従う義務があるということであるが、教員が教育当局の定めた学習プラン(おそらく学習指導要領のこと)に従うことと、彼らが国旗国歌に敬意を示すべきであるかどうかということに関しては、異なる法的措置があるのではないか。
国歌斉唱時に静かに座っているという教員の態度は規約18条1項の思想・良心の自由に基づく良心的(命令)拒否の適用を受けるのではないか?
総括所見の採択は10月28日。公表は11月4日頃までになされるようだ。審査中に質問があった問題は総括所見で取り上げられて勧告が出されると聞いているので、今回は初めて10・23通達に関する具体的な勧告が出るのではないかと期待している。
『東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース リベルテ 第68号』(2022年10月26日)
※11月3日に公表された『総括所見』の該当箇所(パラ36~パラ39)はこちら
◆ CCPR/C/JPN/CO/7「思想・良心・宗教の自由及び表現の自由」
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