―「学校に自由と人権を!」集会で、対都教委"君が代"訴訟の9団体を紹介する、近藤徹・被処分者の会事務局長。右端は大能清子元教諭、都教組八王子支部の旗を持つ女性の左は田中聡史教諭(千代田区内で。撮影は永野厚男)
《紙の爆弾【ニュースレスQ】》
◆ 〝君が代〟強制反対集会で元イスラエル兵が講演
~「権力者の手口」を批判
東京都教育委員会は2003年10月、卒業式等での"君が代"強制を強化する「10・23通達」を発出して以降、不起立等の教職員延べ484人を懲戒処分にしてきた。これに対し裁判闘争(終結含む)を続け、最高裁等で減給・停職処分77件・66人の不当処分取消判決を勝ち取った原動力の9団体が10月20日、都内で「学校に自由と人権を!」集会を開き、現・元教職員や保護者ら市民約160人が参加した。
冒頭、近藤徹・被処分者の会事務局長(都立高元教諭)が「23年10月にイスラエルがガザ地区に攻撃を始めて1年余り。ジェノサイド(集団虐殺)であり、死者4万2千人。犠牲者の7割は子どもと女性だ。石破茂首相は"核共有論"を唱え、核兵器禁止条約参加・批准を拒み、敵基地攻撃力保有等、戦争する国に暴走。戦争は教室から始まるという。日の丸・君が代強制は戦争への道。総選挙でこの危険な破滅への道をストップさせよう」と挨拶した。
続いて講演したのが、イスラエル軍元兵士のダニー・ネフセタイ氏(67歳)。
イスラエルは高校卒業後、男性は3年間、女性は2年間の徴兵制を実施している。ダニー氏は75年から3年間空軍に所属。戦闘機のパイロットを目指し、実技試験で落ち実戦には行かなかったが、戦闘用練習機に80回搭乗した。
ダニー氏は「79年10月に来日後、戦闘機の目的は人を殺したり、物を壊すんだ。軍隊の性質は①良い側と悪い側(敵)に差別、②命令に従うよう人をランク付け、③人を殺しても無罪どころか『偉い人』になり、④紛争解決が外交交渉での和平でなく武力行使だけになってしまう――等に気付いた」と指摘。①~④は都教委が校長から教員に"問答無用"の職務命令を出させ、生徒にまで"君が代"起立を強制する手口と似ているため、頷く参加者が多かった。
ダニー氏が示した「23年10月に紛争が始まった前後で、イスラエル人の心理状態が、PTSDは16%→30%、うつは24%→43%に急増」というデータも、文科省や全国の多くの教委の管理統制強化下、急増する日本の教員の精神疾患による休職者増と似ている。
ダニー氏の「国家の権力者は戦争遂行に洗脳とプロパガンダを必須にしている」との話に、筆者は「日本の文科省は道徳や社会等の学習指導要領で、生徒に"愛国心"教化を狙っているが」と質問。ダニー氏は「イスラエルでは、自国が相手国より優れていると、近隣諸国を見下すような間違った"愛国心"教育をやっている。私たちは歴史を学ぶが、歴史に学んでいない」と回答。日本を除くアジア人を「見下す」ような複数の中学社会科歴史"教科書"を検定で合格させてしまった文科省に対し、警鐘を鳴らすことになった。
防衛省は中国等に対する"抑止力・防衛"と称し、F35戦闘機やトマホークを爆買いし、南西諸島に自衛隊基地を建設。日本政府の大軍拡に対し、ダニー氏は「『軍事力には軍事力』という政策は、憎悪の連鎖を招き紛争は解決しない。98年9月、パレスチナ・ガザとイスラエル最大の商業都市・テルアビブは、スペインのマドリードで姉妹都市協定を結んだことがあった。外交・対話で解決を目指すべきだ」と発言。大きな拍手が湧き起こった。
なおダニー氏は「F35は1機で1800台のビジネス車と同じ排気ガスを出す。曲技飛行しスモークを発生する航空自衛隊のブルーインパルスも環境への影響は大」とも述べた。
集会は最後に「都教委の教育破壊を許さず、子どもたちを再び戦場に送らないため、広範な教職員・保護者ら市民と共に手を携え闘う」等のアピールを採択した。
(取材・文=教育ジャーナリスト・永野厚男)
――閉会後、元イスラエル兵のダニー・ネフセタイさんを囲んで写る、「学校に自由と人権を!」集会の実行委員たち(千代田区内で。撮影は永野厚男)
※ 被処分者の会のお知らせから
◆ いよいよ結審!
提訴から3年9ヶ月。いよいよ結審します。学校に自由と人権を!―粘り強く闘われている「日の丸・君が代」強制反対の裁判に絶大なご支援を!
多くの傍聴をお願いします。
東京「君が代」裁判第五次訴訟・地裁結審
(東京地裁民事36部。卒入学式及び再処分取消請求事件。原告15名)
12月16日(月)
13時 傍聴希望者集合(裁判所前で案内あり)13時30分 開廷
東京地裁631号(定員42名)→先着順
内容:原告側・被告側双方の最終弁論
*終了後、報告集会 TKP新橋カンファレンスセンター会議室12D(内幸町 案内あり)
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