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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 「国連勧告に沿ったインクルーシブ教育を」

2022年12月21日 | 人権

車いすから要請書を手渡す上田哲郎さん(右)。受け取ったのは文部科学省の山田泰造特別支援教育課長

 ★ 市民団体が文科相あてに要請書提出
   文科相発言撤回も求める (Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

 特別支援教育の中止などを強く要請した今年9月の国連障害者権利委員会の総括所見に関連して、当事者、保護者、支援者などからなる複数の市民団体が6日、インクルーシブ教育に関する教育政策の見直しなどを求める要請書を文部科学省の担当者に手渡した。この問題に取り組む東洋大学客員研究員、一木玲子さんは「最終的なインクルーシブ教育の実現は支援学校の廃止だと考えているが、まず最初のステップとして、普通学級に行きたいのに拒否されるといった差別的な状況をなくすことを訴えたい」と話している。(文・写真/ジャーナリスト・飯田和樹)

 ★ 永岡文科相の発言を受けて

 総括所見は、障害者権利条約に基づき今年8月にジュネーブで行われた審査を経て出されたもので、日本に対しては2014年の条約締結後初となる。障害者権利委はこの中で、

▽特別学級の存在が分離教育を永続させていること
▽障害のある子どもの普通学校への就学を拒否していること
▽障害のある子どもへの合理的配慮が不十分であること

 ――などに懸念を示し、特別支援教育の廃止を目的とした教育政策を進めることや、障害のある子どもの就学拒否を禁止する条項を立てることなどを勧告した。

 しかし、この勧告からわずか4日後、永岡桂子文部科学相「特別支援教育を中止することは考えていない」などと発言。勧告に従わない意向を示した。

 こうした対応を受けて、審査で日本の実情を訴えた市民団体が、永岡文科相の発言の撤回を要請する内容などを盛り込んだ要請書を作った。要請書には全国の116の市民団体が賛同した。要望書を手渡した後は、市民団体と文科省の担当者との意見交換が行われた。

 ★ 「ともに生きる社会はともに学ぶ学校から」

 要請書を手渡した上田哲郎さんは「大阪では、障害を持った子を中心にしたクラスの取り組みも行われている。もっと大阪の教育の取り組みを見た上で、政策を進めて欲しい」と訴えた。

 また「障害児を普通学校へ全国連絡会」の高木千恵子事務局長は「いま、いろいろな理由をつけて子どもを分ける動きが進んでいる。ともに生きる社会はともに学ぶ学校からといっているが、学校の場でこのように分けていくと、社会につながりがなくなる」と危機感を示した。

 一方、要請書を受け取った文部科学省の山田泰造・特別支援教育課長は要請書の内容について「総括的所見を一言一句全部きれいに守らないと条約違反だ、とはなってない」「分離教育を廃止とかいわれるとできないところもある」などと話した。

 また、この日は衆議院第二議員会館で、国会議員に国連勧告実施を求める声を届けるための院内集会も行われた。


 ★ 文科省のインクルーシブ教育は国際的なものとは違う?

 インクルーシブ教育について、文科省は「推進している」と主張する。しかし、一木さんは「国際的にいわれているインクルーシブ教育から考えると、文科省のインクルーシブ教育に対する認識は間違っている」と断言する。

 また、公教育計画学会の田口康明さんも「文科省は、多様な学びの場を準備すれば全体として見るとすべての子どもたちを包んでいることになるからインクルーシブ教育なんだ、と主張している。しかし、世界水準でいうインクルーシブ教育は同じ場で教育をする。それだけでなく、既存の教育方法や教育内容を見直して、障害のある子どもたちが障害のない子どもたちとともに学べるように変革することも含まれる。全然違っている」と説明する。

 ちなみに、障害者権利条約の中では、インクルーシブ教育は次のように説明されている。

「インクルーシブ教育とは、障害の有無を問わずあらゆる可能性のある児童・生徒(以下生徒)が同じ教室で一緒に学ぶことである。つまり障害のある生徒、障害のない生徒の両方が同じ教室にいるということである」

「このことは、誰もが一緒に学びながら、個別のニーズを満たすことができる教育制度を構築することが含まれる」

「全ての人のための質の高い教育に焦点を当て、教育機関、例えば学校や大学が、全ての生徒を援助して、全ての生徒が最善の状況で、完全に参加できるようにする」

「インクルーシブ教育とは、全ての生徒が上記の教育を受けられるようにするために、教育のあり方を大きく変えることを指す。つまり、教育制度は個人のニーズに合わせられるべきであり、個人を教育制度に合わすことではないということである」

 この説明とかけ離れている文科省のインクルーシブ教育に対する認識が、国連勧告の内容を知った保護者たちの動揺を誘う一因にもなっているようだ。

 一木さんは「障害のある子どもを特別支援学校などで学ばせている保護者の中には、障害のない子どもと同じ教室で学ぶことになると、手厚い支援がなくなってしまうのではないかとの不安を持つ人もいる。しかし、本来のインクルーシブ教育は、この手厚い手当を普通学級でしましょうというものだ。そこの誤解は解かないといけないと思っている」と話している。

 ★ 障害者権利条約やインクルーシブ教育について知りたいときは?

 なお、今回の勧告の基になった「障害者権利条約」については、外務省のホームページに全文が掲載されている。「外務省 障害者権利条約」で検索し、条文を選べば読むことができる。教育は第24条にある。

 また、インクルーシブ教育を受ける権利については、国連の障害者権利委員会が2016年に出した「一般的意見4号」をぜひ読んでほしい。公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会の提供する情報サイト「障害保健福祉研究情報システム(DINF)」に和訳があるので、「DINF 一般的意見4号」で検索するのがよいだろう。

 このほか、ジュネーブで行われた審査で日本の実情を訴えた市民団体などが提出した「パラレルレポート」については、全てではないが一部を「インクルーシブ教育情報室」というサイトで見ることができる。

『Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE』(2022年12月6日配信、12月8日更新)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c1022c8719d4452812ea58c45d40b106d9d4ccf1

 


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