☆ 東京「君が代」3次訴訟判決 1月16日(金)13:10 東京地裁103号法廷
《東京「君が代」3次訴訟事前記者レク 原告(Y)発言》
◎ 「10.23通達」の前と後とでは、都立学校は全く違う世界になってしまいました。
原告のYです。定年まで3年を残して、昨年3月に退職しました。この三次訴訟では2回目の不起立で受けた「減給1月」の処分取り消しと損害賠償を請求しています。
今日は、3年近く前のある出来事からお話しします。勤務していた学校が創立40周年記念式典を開催した日のことです。来賓として招かれた同じ地域にある都立高校の校長先生が、式が間もなく始まろうとする時に到着しました。玄関に入ってくるなり、「まいったな。君が代に遅れちゃう。」と独り言を言って、あたふたと会場に向かいました。
この校長先生が急いでいたのは、「君が代」を歌って、国旗・国歌の意義や日本国のことを深く考えたかったからではないでしょう。「国歌斉唱に遅刻したら、その場にいる教育庁職員からどう思われるだろう。起立斉唱しなかった校長として、後で問題になったらどうしよう。」と、焦っていたのだと思います。
いい年をした大人を、こんな情けない気持ちにさせてしまうのが、「10.23通達」です。通達を出した都教委も、職務命令を出す管理職も、本気で「日の丸・君が代」を尊重しているわけではありません。忠誠心を測る道具として利用しているだけなのです。
「10.23通達」の前と後とでは、都立学校は全く違う世界になってしまいました。生徒の学習権を保障するために、教育条件を整備するのが教育行政の役割だったはずです。
しかし、教科書、年間授業計画、授業で配るプリント、定期試験の問題、推薦入試の方法、防災訓練の内容、果ては、定期試験の解答用紙の取り扱いに至るまで、全て、都教委が事細かに指示してきます。
管理職は常に都教委にお伺いを立て、その指示通りの学校経営に邁進します。教員は専門職として尊重されるどころか、下請けのそのまた下請けという扱いです。
昨年9月に「教育課程の適正な実施 及び管理について」という通知が出されました。表向きは、新聞の教材化や政治教育について、「公正・中立の立場を保つために十分配慮しなさい」というものですが、時事問題を扱うことを、教員が躊躇してしまうおそれがあります。
昨日の教育委員会定例会では、特別支援学校で教材として使う絵本なども、新年度からは教科書と同じように都教委が採択することになりました。生徒と日々接している教員が「これが一番ふさわしい。」と考えても、都教委が採択しなければ使うことはできません。
教育委員会を傍聴すると、来た時よりも暗い気持ちになって帰るのが通例です。学力テストの平均点を上げる、本を読まない生徒を減らす、どれも数値で語られることばかりで、当初の目標を達成すれば、さらに高い目標が設定されます。チャップリンの映画「モダンタイムス」では、ベルトコンベアーのスピードがどんどん上がり、労働者はとうとう精神を病んでしまいますが、都立学校の教員や生徒も、目標がどんどん高く吊り上げられ、終わりのない競争に駆り立てられています。心を病む教員や私のような早期退職者は、増える一方です。
幸い、私は病気にはなりませんでしたが、生徒のためになるとは思えない虚しい雑務で、心と体をすり減らしていく日々でした。「10.23通達」は、個々の教員の人権を侵害しただけでなく、自主的・創造的な教育を破壊し、教育を政治の支配の下にねじ伏せたのです。都教委が決める統一基準の枠の中でしか、授業や生活指導ができないのでは、いずれ私は生徒に対して加害者になってしまう、そんな不安を覚えたことも、私が早期退職を決意した理由の1つです。
ご存じのように、自民党の憲法改正草案には国旗国歌の尊重義務が明記されています。教育現場からの異議申し立てがなくなれば、次は、企業、地域社会、そして、最後は家庭にも「日の丸・君が代」強制の波が押し寄せてきます。処分を受けて今ここにいる私たちが、明日の皆様の姿にならないように、是非、「10.23通達」の真の狙いに目を向けた報道をお願いいたします。
《東京「君が代」3次訴訟事前記者レク 弁護団資料から》
◎ 君が代3次訴訟・訴訟経過
《東京「君が代」3次訴訟事前記者レク 原告(Y)発言》
◎ 「10.23通達」の前と後とでは、都立学校は全く違う世界になってしまいました。
原告のYです。定年まで3年を残して、昨年3月に退職しました。この三次訴訟では2回目の不起立で受けた「減給1月」の処分取り消しと損害賠償を請求しています。
今日は、3年近く前のある出来事からお話しします。勤務していた学校が創立40周年記念式典を開催した日のことです。来賓として招かれた同じ地域にある都立高校の校長先生が、式が間もなく始まろうとする時に到着しました。玄関に入ってくるなり、「まいったな。君が代に遅れちゃう。」と独り言を言って、あたふたと会場に向かいました。
この校長先生が急いでいたのは、「君が代」を歌って、国旗・国歌の意義や日本国のことを深く考えたかったからではないでしょう。「国歌斉唱に遅刻したら、その場にいる教育庁職員からどう思われるだろう。起立斉唱しなかった校長として、後で問題になったらどうしよう。」と、焦っていたのだと思います。
いい年をした大人を、こんな情けない気持ちにさせてしまうのが、「10.23通達」です。通達を出した都教委も、職務命令を出す管理職も、本気で「日の丸・君が代」を尊重しているわけではありません。忠誠心を測る道具として利用しているだけなのです。
「10.23通達」の前と後とでは、都立学校は全く違う世界になってしまいました。生徒の学習権を保障するために、教育条件を整備するのが教育行政の役割だったはずです。
しかし、教科書、年間授業計画、授業で配るプリント、定期試験の問題、推薦入試の方法、防災訓練の内容、果ては、定期試験の解答用紙の取り扱いに至るまで、全て、都教委が事細かに指示してきます。
管理職は常に都教委にお伺いを立て、その指示通りの学校経営に邁進します。教員は専門職として尊重されるどころか、下請けのそのまた下請けという扱いです。
昨年9月に「教育課程の適正な実施 及び管理について」という通知が出されました。表向きは、新聞の教材化や政治教育について、「公正・中立の立場を保つために十分配慮しなさい」というものですが、時事問題を扱うことを、教員が躊躇してしまうおそれがあります。
昨日の教育委員会定例会では、特別支援学校で教材として使う絵本なども、新年度からは教科書と同じように都教委が採択することになりました。生徒と日々接している教員が「これが一番ふさわしい。」と考えても、都教委が採択しなければ使うことはできません。
教育委員会を傍聴すると、来た時よりも暗い気持ちになって帰るのが通例です。学力テストの平均点を上げる、本を読まない生徒を減らす、どれも数値で語られることばかりで、当初の目標を達成すれば、さらに高い目標が設定されます。チャップリンの映画「モダンタイムス」では、ベルトコンベアーのスピードがどんどん上がり、労働者はとうとう精神を病んでしまいますが、都立学校の教員や生徒も、目標がどんどん高く吊り上げられ、終わりのない競争に駆り立てられています。心を病む教員や私のような早期退職者は、増える一方です。
幸い、私は病気にはなりませんでしたが、生徒のためになるとは思えない虚しい雑務で、心と体をすり減らしていく日々でした。「10.23通達」は、個々の教員の人権を侵害しただけでなく、自主的・創造的な教育を破壊し、教育を政治の支配の下にねじ伏せたのです。都教委が決める統一基準の枠の中でしか、授業や生活指導ができないのでは、いずれ私は生徒に対して加害者になってしまう、そんな不安を覚えたことも、私が早期退職を決意した理由の1つです。
ご存じのように、自民党の憲法改正草案には国旗国歌の尊重義務が明記されています。教育現場からの異議申し立てがなくなれば、次は、企業、地域社会、そして、最後は家庭にも「日の丸・君が代」強制の波が押し寄せてきます。処分を受けて今ここにいる私たちが、明日の皆様の姿にならないように、是非、「10.23通達」の真の狙いに目を向けた報道をお願いいたします。
《東京「君が代」3次訴訟事前記者レク 弁護団資料から》
◎ 君が代3次訴訟・訴訟経過
2010/03/02 提訴 原告50名(07・08・09年度処分)
処分内訳(戒告25件、減給29件、停職2件)
請求の趣旨:「処分の取り消し」「慰謝料請求1件50万円」 請求原因:10.23通達、職務命令の違憲違法性
思想・良心の自由侵害(19条)
信教の自由侵害(20条)
教師の専門職上の自由侵害(13・23・26条)
係属部は東京地裁民事第11部
2010/07/07 第1回弁論 訴状、答弁書
2010/10/01 第2回弁論 原告準備書面(1)
「不当な支配」に関する被告主張の誤りを旭川学テ最高裁判決の判旨から論述。
2010/12/24 第3回弁論 原告準備書面(2)
被告主張の「原告らの非違行為等」に対する認否、第3「日の丸・君が代」に対する反論、第4「憲法19条、同20条、教師の専門職上の自由」のうち憲法19条に関する反論及び追加主張、並びに、第5「教育基本法16条関係」に対する反論。
2011/03/18 第4回弁論 原告準備書面(3)
被告主張の「本件通達発出の背景とその後の状況」に対する反論、及び、「憲法19条、同20条、教師の専門職上の自由」のうち、憲法20条に関する反論及び追加主張。
2011/6/6 『再雇用拒否一次裁判 最高裁判決』
2011/06/24 第5回弁論 原告準備書面(4)
「学校教育法42条違反」、「国際条約等の違背」、「原告らのその余の主張」の反論及び追加主張。
2011/10/14 第6回弁論 原告準備書面(5)
「日の丸」「君が代」に関する都教委の方針転換、および、それに一部の都議会議員がどのように関与していたか、10・23通達が憲法第94条および地方自治法14条1項および2項、同法2条16項に違反すること、国旗国歌という国家シンボルの強制そのものが違憲であることの主張。
2012/1/16 『東京「君が代」1次訴訟 最高裁判決』
2012/02/03 第7回弁論 原告準備書面(6)
①思想・良心の自由(憲法19条)及び信教の自由(同20条)を制約する場合の違憲性判断基準については二重の基準論により厳格な基準が用いられるべきこと、②昨年5月から6月にかけて言い渡された4つの最高裁小法廷判決における法廷意見に対する批判、③起立斉唱行為とピアノ伴奏行為との間に本質的な違いは無いこと、④旗や象徴に対する敬意表明の強制は自由権規約第19条にも違反することを主張。
2012/05/25 第8回弁論 原告準備書面(7)
①都教委が行った本件各懲戒処分自体が、直ちに憲法や法令の規定に違反すると断定できない場合であったとしても、なおそれらが、都教委に与えられた裁量権の範囲を逸脱・濫用にあたること、②「不起立行為に対する戒告処分は懲戒権の裁量の範囲内だが、減給処分・停職処分についてはその範囲を超えるものとして違法」と判示した平成24年1月16日の最高裁判所第一小法廷判決に対する批判。
2012/09/28 第9回弁論 原告準備書面(8)
①平成24年最高裁判決が示した「相当性を基礎付ける具体的な事情」の意味を検討した上で、本件において減給以上の処分を受けた26名の原告にはかかる事情がないこと、②被告が主張する26名の原告についての「相当性を基礎付ける具体的な事情」に対する反論、③原告らの損害賠償請求が認められるべき事についての補充主張。
2013/01/11 第10回弁論 証拠申出(原告4名、学者証人3名)
原告4名証人採用、学者証人は採否留保
2013/05/10 第11回弁論 原告準備書面(9) 原告2名尋問実施
平成24年1月16日最高裁判所第一小法廷判決は、不起立行為に対する懲戒処分において、概要、戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては慎重な考慮が必要であるとし、戒告処分については裁量権の範囲内であるとする一方で、減給・停職処分社会通念上著しく妥当を欠き、懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして違法の評価を免れないと判示したが、2006(平成18)年度に昇給と勤勉手当に関する規則が改訂されたことにより、2007年度以降に戒告処分を受けた本訴原告らは、2006年以前に減給処分を受けた場合以上の金銭的な損害を受けていること。
2013/06/07 第12回弁論 原告2名尋問実施
2013/08/02 第13回弁論 書証提出
2013/9/6 『東京「君が代」2次訴訟 最高裁判決』
2013/10/11 第14回弁論 原告準備書面(10) 憲法学者の証人1名採用
①被懲戒処分者が再発防止研修を受けるだけでなく、被懲戒処分者が所属する学校の全教職員も校内研修を強制されてしまうこと、②このような全教職員に対する校内研修が課されるのは卒・入学式等における国歌斉唱の際の不起立等の場合だけであること、③都教委が高校日本史教科書採択における実教出版の教科書を排斥し、また、平成24年1月16日最高裁判決を真摯に受け止めることなく、従前どおりの累積加重処分を行っていること、ひいては「日の丸・君が代」に関して異常ともいえる対応をしていること。
2013/12/06 第15回弁論 憲法学者証人尋問(千葉大学巻美矢紀教授)
2014/02/07 最終弁論の予定が直前に延期(裁判長、右陪席の移動のため)
2014/07/18 最終弁論 原告準備書面(11)、原告最終準備書面
本訴原告2名を含む7名に対し、最高裁判決によって取り消された減給処分について、2013年12月17日付けで戒告とする再処分がなされたことの不当性。
原告らのこれまでの主張立証のまとめ。
2015/01/16 判決言い渡し
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