《予防訴訟をひきつぐ会通信『いまこそ』から》
★ データのみに頼る教育でなく、教師が「生徒を守る防波堤」になってほしい
(東京・高Yさん)
都教委が出している「デジタルパンフ」を持参した。その中にあるQRコードをスマホでタッチすると「コンセプトムービー」を見ることができ、バラ色の未来に浸れる仕組み(笑)。
2023年、19校の都立高が「推進校」となっている。そのうちの2校の知人に電話したところ、2人とも「教育ダッシュボード?それ、何ですか」との反応。
一人は生徒に関して、あったことは何でも入力して置いて、とは言われているそうだ。
「ふれこみでは『楽になる』とのことだが」と聞くと「楽にならないどころか、さらに忙しくなった」との答が返ってきた。
データを集めるとか言うが、当初は大したデータは入らない。入力する教員にそんな時間がないことは都教委だってわかっている。模試の結果とか、学期ごとの成績入力とか、端末を使った提出物など。もしかするといわゆる「コンレポ(=コンディション・レポート)」も入れるかも。
生徒に「今日の気分はどうですか」とか聞いて、その結果を収集し、「アラート」(ちょっと心配)がついた生徒に指導を入れる、みたいになっていくのかも。個別最適な教育内容の提供まではまだまだ遠い。そしてそうなることも怖い。
都教委の「ムービー」のあとに、YouTubeでつくば市の教育ダッシュボードの作り方が出てきた。つくば市は30年来、デジタル化を進めている先進的な市である。
しかしそこでもダッシュボードは完成していない。生徒が端末を立ち上げたら、アンケートに答えないと次に進めないようにして、強制的にデータを集めているという。
将来的には生徒自身がこのデータ分析を活用し、自分の個性を知って進路を選択、就活にも使えるようにしたい、と述べていた。まさに、「人材を生産する」ためのDXであリ、教委の人はそれが教育だと信じている。
いいものを作らないとデータがたまらない、データがたまらないとよさが見えてこない・・自家撞着だ。
自治体だけでは推進できないので、企業とタイアップして行うことになるが、いったん税金をつぎこんで始めたプロジェクトは、絶対撤退できない。
ビジネス界はDXでビジネスの内容も大きく変えようとしているようだが、教育界では何を変えるのか。
生徒が自分で考え、進路を切り開いていけるようにする、という目的は変える必要がない。
ある若い人が「学習指導要領によれば・・」というので「えっ?指導要領読んでるの?」と聞くと「読んでないんですか?憲法みたいなもんでしょ」と逆に聞き返され、愕然。
示されたものをそのまま受け入れ自分の考えがない人はDX化が進む学校で「生徒を守る防波堤」にはなれない。
私は一人の人間として生徒に接してきた。それができなくなりそうな教育界に、心が揺れる。
(文責:加藤良雄・元都立高校教員)
「日の丸・君が代」強制反対 予防訴訟をひきつぐ会通信『いまこそ No.30 号外』(2024年1月31日)
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