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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 2025年日教組全国教研「平和教育分科会」の報告

2025年03月01日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

  《ひのきみ通信から》
 ★ 第74次日教組全国教研「平和教育分科会」の報告

石井 泉(天羽高校分会)

 今年1月に神奈川東京を会場に日教組の第74次教育研究全国集会(全国教研)が開催された。全体会と記念講演は1/16(木)18:30からのWEB、分科会は各会場で1/24午後から1/26午前までの3日間で行われた。
 記念講演は若い二人、『KNOW NUKES TOKYO』共同代表の中村涼香さんとピースボート共同代表の畠山澄子さん「戦後80年、今、未来に伝える平和」をテーマに対談した。
 被団協のノーベル平和賞受賞の話題も含めて平和への思いを語り、「教職員や身近なおとなが一生懸命伝えようとしていることは、必ず子どもたちの心に残ります。学校で平和教育を続けることは大変です。私たちも応援できることがあれば応援したいと思います。みんなで社会のあちらこちらに平和の種まきを一緒にやっていきましょう」のメッセージもあった。

 平和教育分科会は横浜の会場で久しぶりの傍聴参加だった。共同研究者は、中條克俊氏(中央大学)・國貞守男(広島平和研究所)・清末愛砂(室蘭工業大学)の3人でここ数年変わっていないと思う。
 3日間の傍聴で気付いたことをまとまらないが挙げておく。

 第一は平和教育分科会のレポートが18本と例年と比べ減った。しかし、例年同様、素晴らしい発表も多く、3つの報告を紹介したい。

 一つ目の大阪府教組のレポート『長崎発/ ゆき”平和”へのお土産』は、中学校の長崎修学旅行に向けた三年間の分厚い学びの取り組み

(旅行後の3年生から1・2年生に伝える「平和の集い」開催、
 被爆体験伝承者との出会い、
 平和行動宣言、平和シュプレヒコールの発表、
 被爆クスノキの長崎版絵本作りや被爆クスノキ2世の植樹等)

 の報告だった。

 卒業式では、卒業生代表が「僕にとってこの一年は人生の中で最も平和について考えた年でした。将来の夢は、これという職業はないのですが、世界を平和にできる人になることです」と決意表明した話も聞けた。

 二つ目は、長崎県教組のレポート『学び伝える平和教育』も印象に残った。
 8/9の平和集会の開催に向けて、生徒は事前学習を深めて宣言文作りに努力し、先生方が当日の原爆や沖縄戦・松浦と戦争・核兵器・平和に関する本の読み聞かせなど10テーマ以上の「平和学習ミニ講座(約20分)」実施のため多くの仲間を巻き込んで平和集会を成功させていた。
 今年度の平和宣言文には、

「今年の平和学習で、
1年生は『原子爆弾』や『核兵器』『原爆による長崎・広島の被害』を学び~
2年生『日本のアジア侵攻』や『沖縄戦』などについて学び~
3年生『紛争・難民』や『高校生一万人署名活動』などについて学びました。~
すべての人々が平和だと思えるようにするために私たちにできることを考えます。」

 の内容になったそうだ。

 三つ目は、沖縄高教組のレポート『国語の授業で平和を考える~ガザを知るとりくみ~』も素晴らしかった。
 昨年9月に県内紙に掲載されたコラム記事

「南部地域へ避難せざるを得ない状況。戦闘員も住民も一斉に移動するが、その先に逃げ場はない。狭い所に追い詰められ、そこにめがけて容赦ない攻撃が行われる。幼い子を含む多くの死傷者が出る。これは沖縄戦を念頭に書いた文章だ。同時に今起こっていることでもある。そうパレスチナのガザ地区だ。」(映画『骨掘る男』監督奥間勝也氏)

 を紹介した。
 指摘のように、ガザと沖縄に共通した、戦争での圧倒的な暴力や日常に続く構造的な暴力について生徒に考えさせる実践だった。
 安田奈津紀氏の「檻の中の”街”」を教材に、安田氏がコメンテーターに登場するテレビ映像や同年代の18歳ラッパーのダニージン(歌詞に「OKINAWA」あり)を紹介する番組を視聴し、「ガザ」「パレスチナ」「イスラエル」を学び沖縄や自分を結びつけて考えられるようになった報告だった。
 さらに、授業感想文の県内紙への投稿に取り組み、3人の文章が掲載されて平和問題や新聞にも関心が高まったそうだ。

 第二に、小学校低学年を対象にした実践報告が多かったせいか、戦争被害に関する実践が多く加害を重点においた実践が少なかったと感じた。
 ただし、「立命館大学国際平和ミュージアム」の学びを校外学習の中心にしたという兵庫県教組の報告などがあった。
 また、兵庫の他に長崎・大分・山梨・大阪などから、クラスによる平和宣言文作りに取り組む実践報告が示され、勉強になった。
 さらに、鹿児島高教組からは主任手当拠出金を原資として生徒の負担なしで参加募集(一校1名)している「沖縄平和学習の旅」をすでに過去30回以上も継続してきたという実践報告があり注目された。

 他にも、討論の中で「平和教育担当」が校務分掌で位置づけられている県が、沖縄や長崎・広島・福岡・新潟など少なくないことがわかり、今も教職員の努力で平和教育が組織的に継承されている地域や学校があることに勇気づけられた。
 また、平和教育分科会のレポート発表者に若手教員がかなり増えたことも印象的だった。千葉県教組の若手に何とか平和教育に取り組んでもらうための実践例紹介などの工夫も興味深い報告だった。ただ、私は「気軽に平和教育に取り組めるよう」の表現は意見が分かれると感じた
 ちなみに、要綱の平和教育分科会『予想される討議の柱』には、今も「(1)憲法に立脚した思想・良心の自由、学問の自由を保障する教育内容をどう確立するか。」が残っている。

 また、レポート集全体では「日の丸・君が代」の文字は二カ所だけ登場した。

福岡の過去の平和教育の取り組みの説明の中で「卒業式における『日の丸・君が代』の強制」という記述、
鹿児島の今次県教研のテーマ・反戦平和教育を進めるうえでの課題で「[4]護憲・天皇制(日の丸・君が代)~」と挙げられた記述があった。

 平和教育や憲法学習を発展させるには「日の丸・君が代」や「天皇制」問題の学習が不可欠だと考える。しかし、残念ながら、日教組全国教研では議論をずっと避けて関連レポートを排除している

 今回は、三日間とも右翼街宣車の姿を見ず騒音を聞くこともなかった。
 また、毎回「偏向」呼ばわりの不当攻撃を行う産経新聞も含め、全国教研に関する新聞報道が非常に少なかった。こんなに話題にもならなくなってしまったのか?と驚いた。
 平和教育を続けることが厳しい時代かも知れない。しかし、生徒のため未来のために、できることを頑張るしかない。

千葉県高等学校教職員組合『ひのきみ通信 第246号』(2025年2月8日)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/25/246.htm

 


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