パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 公教育の無償化をむしばむ「隠れ教育費」

2025年03月01日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

 今年度も県教研が開催されました(11/23~12/15で全体会と8分科会を実施)。以前と比べて分科会や参加者が減少し、推進委員の苦労も多くなっています。しかし、組合主催の県教研は、「良い授業がしたい。勉強したい」を目的に教職員自ら取り組む、まさに自主教研です。教研が魅力で組合加入した方もいます。今後も続けましょう。

  《千高教組新聞第72次教育研究集会特集号から》
 ★ 全体会講演『隠れ教育費と公教育の無償性』
   福嶋尚子さん(千葉工業大学)

 今年度は11月30日(土)午後に県教育会館において、福嶋尚子さん(千葉工業大学准教授)をお招きし、「隠れ教育費と公教育の無償性」のテーマで講演していただきました。
 福嶋さんは、大学の教職課程で授業をし、自身も18歳(高3)のお子さんの保護者であり、公立学校なのにこんなにお金がかかるのかと驚いた体験も話してくださいました。
 「隠れ教育費」とは、子どもが学校生活を送るのにかかる授業料以外のお金のうち、学校徴収金に含まれなかったり、学校を経由せずに徴収されたりする、見えにくい教育費のことで、制服代、通学定期代、PTA会費など例を挙げてくれました。
 また、教材準備やクラス運営などの教育活動「教師の自腹」によるお金で賄われている面も指摘しました。

 福嶋さんは、「県営住宅追い出し母子心中事件」がきっかけで、教育費の間題に着目されたそうです。2014年9月に銚子市で、二人暮らしの母娘が、家賃滞納のため県営住宅を強制退去させられることになってしまいました。その執行の日、母親は「娘の登校後に自分だけ死んで、娘は国に保護してもらおう」と考えていましたが、娘が母親の体調を心配して学校を休んだことで計画が狂い、思わず娘を殺してしまいました。そして娘の後を追って自分も死のうと思っていたところに執行官が現れたという事件です。
 母親は給食センターのパートで生計を立てていましたが、娘が中学校に上がる2013年3、4月頃に制服代等でまとまったお金が必要になり、社会福祉協議会から限度額12万5千円を借り入れ、それでも足りず、ヤミ金から借金をしました。その後借金の返済が家計支出の大きな割合を占めたそうです。(『なぜ母親は娘を手にかけたのか』(旬報社)等を参照)
 例えば、制服代等の負担がもう少し軽ければ、あるいは入学前に就学援助が受けられ入学時の立替払いの必要がなければ、このような結果にならなかったかもしれません。
 福嶋さんは、保護者負担の軽減が重要で必要性の低いものを買わせない、購入方法を工夫して単価を下げるなど教員が努力すべきと強調しました。また、学校でかかるお金をPTA会費などで賄うのは場合により法に触れると指摘しました。

 憲法が要請する教育費の無償と無償化による落とし穴についても話しました。
 「現金給付」は、家庭が行政側の意図した目的に使うとは限らないため政策効果は必ずしも高くないこと。対して「現物給付」は、保護者による立替えの心配もなく、直接子どもの学びに供され、政策効果が確実に期待できる点で最良の方法であること。
 また、所得制限を設けた「選別的給付」は、申請が必須で事務手続きが煩雑になり家庭にも現場にも負担が大きいこと。対して、「普遍的給付」は全ての生徒を対象にするので不公平感がなく、必要とする家庭への支援漏れもなく、申請等の事務手続きにかかるコストも生徒支援に充てることができること。憲法が要請する教育費の無償は「普遍的な現物給付」であると教えてくれました。
 また、無償ならなんでもよいわけではない点も話しました。「お金を出すから口も出す」が起こり、1960年代の義務教育教科書の無償配付と引き換えに学校現場の教科書採択権が奪われた例を挙げました。また、学校は保護者負担が軽減した分、他でお金を集めることをしかねないと話しました。

 私は講演を聴いて、保護者が一生懸命働いてやりくりしながら子どもを学校に送り出し、「わが子が充実した学校生活を送り将来幸せに暮らしてほしい」と切に願うことに思いを巡らせました。
 子どもたちには選別のない現物給付が最も適すと思い、各家庭が学校教育に充てていたお金を他に使えぱ、世の中でもっとお金が循環し地域社会が潤うと考えました。

 子どもたちに「地域や国を愛する」を求めるより、私たち大人が子どもたちに愛される地域や国をっくらなければならないと考えます。そのために、私自身も教職員組合の一員として、先生方の目々のとりくみや高教組運動に学び、子どもが安心して学ぶことができる学校や社会を目指していきたいと思いました。

(三浦徳幸 君津高校分会)

『千高教組新聞』(2025年2月8日)

 

 


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