=中教審「中間まとめ」=
◆ 英字新語の多用で矛盾を隠蔽 (週刊新社会)
◆ ICT教育による大容量情報通信化の意味するもの
新型コロナウイルス禍の10月、文科省は中教審の「中間まとめ」を公表した。
コロナ禍の前、2019年に文科省が「新しい時代の初等中等教育の在り方」を諮問し、その「中間まとめ」が10月7日に公表された。3月よりコロナ禍による臨時休校が続き、様々な問題点が噴出した時であり、様々な矛盾が噴出したが、わずか1年程度の短期の審議で「中間まとめ」を出したのだ。
コロナ禍の教育に対する不安を打ち消す意味もあり、「新しい時代」をセールスポイントにして打ち出すことになった。とくに顕著なのは英字の頭文字が並んだ新語が頻繁に出てくることだ。
「ICT(情報通信技術)」「SDGs(持続可能な開発目標)」などすでに一般化しているが、「GIGAスクール構想」「STEAM教育」などの英字新語が頻繁に出てくる。
この英字文字を見ると「新しく」「高レベル」であるかの錯覚をおこさせる。
いきなり「ESCS」の英字が出てくると何のことか分からないが「家庭の社会経済文化的背景に格差がある」と注釈がつけられている。
つまり家庭間格差だが、この表示によって深刻な社会問題も隠蔽され、何か新しい事象のように見える。英字だと分かったように納得せざるを得ないようになる。
英字の多用は何かを誤魔化すことを意図しているのである。
◆ GIGAスクール構想が描く「新日本型教育」
この「中間まとめ」は、「新しい」を印象づけるために、英字に溢れているのである。
「中間まとめ」は、コロナ禍の学校教育について総括をしている。いろいろな問題が浮き彫りにされたが、とくに臨時休校によって学びができなったことをあげている。児童生徒は、教員の指示がなければ自分だけでは何も出来ない状況が露呈したのである。
そこでICTによる新しい学びのスタイルが提案されている。それが「GIGA(Global Innovation Gateway for Alled)スクール構想」なのである。
児童生徒に一人一台のタブレットを2020年度中に配布を実現して、家庭に持ち帰ることも可能だという。
これにより臨時休校の時でもオンラインによる学びを続け、教員の指示がなくても児童生徒の自立した学びが獲得できるというのだ。
この学びは、新学習指導要領で示された「資質・能力」の教育や主体的な学びの理念にも合致していると言う。
「中間まとめ」によるこうしたICT化は、「これからの学校教育を大きく変化させ、様々な課題を解決し、学びの質を向上させることが期待される」と美化されている。
しかし、ICT化の普及は他方で児童生徒の精神的な孤立感を生み出すとともに、さらに新たな格差をも生み出し、手放しで美化されるものではない。
◆ 大容量PCで教育のデータ化
「GIGAスクール構想」では、高度なコンピュータ化された学校が想定されている。
これによれば、「小学校から高等学校において、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進」し、「令和時代の学校の『スタンダード』」にするのだという。
学校では、すでに「キャリアパスポート」などで児童生徒の夢・希望や経験などの様々な記録がデータ化される方向である。
さらに、PHR(健康診断記録)として学齢期の健康診断情報が電子化され、CBT<Computer Based Test>(コンピュータ上で実施する試験)などもこのGIGAスクール構想の中で示されている。
このようにビッグ・データ化された蓄積記録は、将来的にマイナンバーとも紐つけられ、個人データとして為政者がこれを管理することになる。
こうした時間的な継続性の中でSDGsが提起されている。
明治時代からの継続性の教育が「日本型教育」であり、それは将来にわたって継続されるものであることが示されている。明治からの日本型教育の継続性とは、天皇制国家の公民化教育に繋げていく意図ではないだろうか。
◆ 「STEAM教育」強調の意味?
「中間まとめ」では、同時に「STEAM教育」<Science Technology Engineering Art Mathematics>(科学、技術、工学、芸術、数学)が強調されている。
理数科希望の生徒が少ないことからの趣旨も述べられているが、理数関係科目の強調は、学術会議問題で6人が排除された政治の方向と同じであることが分かる。
社会問題を分析し、これの批判につながる文系・社会科学系は文科省から敬遠される方向であると見るべきである。無批判な公民の育成なのである。
しかし、中学卒業生の8割が普通科高校を志望し、その8割が文系大学に進む現実は、理数系大学生の進路が狭いことの結果である。
「中間まとめ」で「STEAM教育」を強調する意味は、大学卒業後の進路を保障することにつながる。だとすると、軍事産業などを発展させ、理数系学生の進路を保障することの意味を含んでいるのではないだろうか。
(永井栄俊)
『週刊新社会』(2020年12月15日)
◆ 英字新語の多用で矛盾を隠蔽 (週刊新社会)
永井栄俊
◆ ICT教育による大容量情報通信化の意味するもの
新型コロナウイルス禍の10月、文科省は中教審の「中間まとめ」を公表した。
コロナ禍の前、2019年に文科省が「新しい時代の初等中等教育の在り方」を諮問し、その「中間まとめ」が10月7日に公表された。3月よりコロナ禍による臨時休校が続き、様々な問題点が噴出した時であり、様々な矛盾が噴出したが、わずか1年程度の短期の審議で「中間まとめ」を出したのだ。
コロナ禍の教育に対する不安を打ち消す意味もあり、「新しい時代」をセールスポイントにして打ち出すことになった。とくに顕著なのは英字の頭文字が並んだ新語が頻繁に出てくることだ。
「ICT(情報通信技術)」「SDGs(持続可能な開発目標)」などすでに一般化しているが、「GIGAスクール構想」「STEAM教育」などの英字新語が頻繁に出てくる。
この英字文字を見ると「新しく」「高レベル」であるかの錯覚をおこさせる。
いきなり「ESCS」の英字が出てくると何のことか分からないが「家庭の社会経済文化的背景に格差がある」と注釈がつけられている。
つまり家庭間格差だが、この表示によって深刻な社会問題も隠蔽され、何か新しい事象のように見える。英字だと分かったように納得せざるを得ないようになる。
英字の多用は何かを誤魔化すことを意図しているのである。
◆ GIGAスクール構想が描く「新日本型教育」
この「中間まとめ」は、「新しい」を印象づけるために、英字に溢れているのである。
「中間まとめ」は、コロナ禍の学校教育について総括をしている。いろいろな問題が浮き彫りにされたが、とくに臨時休校によって学びができなったことをあげている。児童生徒は、教員の指示がなければ自分だけでは何も出来ない状況が露呈したのである。
そこでICTによる新しい学びのスタイルが提案されている。それが「GIGA(Global Innovation Gateway for Alled)スクール構想」なのである。
児童生徒に一人一台のタブレットを2020年度中に配布を実現して、家庭に持ち帰ることも可能だという。
これにより臨時休校の時でもオンラインによる学びを続け、教員の指示がなくても児童生徒の自立した学びが獲得できるというのだ。
この学びは、新学習指導要領で示された「資質・能力」の教育や主体的な学びの理念にも合致していると言う。
「中間まとめ」によるこうしたICT化は、「これからの学校教育を大きく変化させ、様々な課題を解決し、学びの質を向上させることが期待される」と美化されている。
しかし、ICT化の普及は他方で児童生徒の精神的な孤立感を生み出すとともに、さらに新たな格差をも生み出し、手放しで美化されるものではない。
◆ 大容量PCで教育のデータ化
「GIGAスクール構想」では、高度なコンピュータ化された学校が想定されている。
これによれば、「小学校から高等学校において、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進」し、「令和時代の学校の『スタンダード』」にするのだという。
学校では、すでに「キャリアパスポート」などで児童生徒の夢・希望や経験などの様々な記録がデータ化される方向である。
さらに、PHR(健康診断記録)として学齢期の健康診断情報が電子化され、CBT<Computer Based Test>(コンピュータ上で実施する試験)などもこのGIGAスクール構想の中で示されている。
このようにビッグ・データ化された蓄積記録は、将来的にマイナンバーとも紐つけられ、個人データとして為政者がこれを管理することになる。
こうした時間的な継続性の中でSDGsが提起されている。
明治時代からの継続性の教育が「日本型教育」であり、それは将来にわたって継続されるものであることが示されている。明治からの日本型教育の継続性とは、天皇制国家の公民化教育に繋げていく意図ではないだろうか。
◆ 「STEAM教育」強調の意味?
「中間まとめ」では、同時に「STEAM教育」<Science Technology Engineering Art Mathematics>(科学、技術、工学、芸術、数学)が強調されている。
理数科希望の生徒が少ないことからの趣旨も述べられているが、理数関係科目の強調は、学術会議問題で6人が排除された政治の方向と同じであることが分かる。
社会問題を分析し、これの批判につながる文系・社会科学系は文科省から敬遠される方向であると見るべきである。無批判な公民の育成なのである。
しかし、中学卒業生の8割が普通科高校を志望し、その8割が文系大学に進む現実は、理数系大学生の進路が狭いことの結果である。
「中間まとめ」で「STEAM教育」を強調する意味は、大学卒業後の進路を保障することにつながる。だとすると、軍事産業などを発展させ、理数系学生の進路を保障することの意味を含んでいるのではないだろうか。
(永井栄俊)
『週刊新社会』(2020年12月15日)
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