◎ 意 見 陳 述 書
2018年7月25日 大阪高裁
控訴人 増 田 俊 道
控訴人 増 田 俊 道
1 はじめに
私は、現在57歳です。60歳の定年まで働くとすれば、あと4回の卒業式と3回の入学式を迎えます。貴裁判所の判決が、今後どのような教員生活を送るかについての重要な判断材料になるため、判決内容に大きな不安と期待を抱いています。
2 地裁判決で判断していただいていない点
(1)大阪の全府立高校では、合格者説明会または入学式に「互いに違いを認めあい、共に生きる社会を築いていくために~生徒と保護者のみなさんへ~」という文章を配布しています。
その中には、「大阪府内の学校には、日本と韓国・朝鮮との歴史的経緯によって日本で生まれ育った韓国・朝鮮人の生徒や、中国、ブラジル、ベトナム、フィリピンなど様々な国にルーツをもつ生徒がたくさん学んで」いること、
「日本に固有の文化があるように、それぞれの国や民族には、それぞれの異なる文化や習慣、言葉、名前などが」あること。
「そのような中で、これからの社会を担う皆さん一人ひとりが、互いの違いを認めあい、共に生きていこうとする態度を身につけていくことが大切」であることを訴えています。
しかし、府国旗国歌条例は,第1条において,「府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱について定めることにより,府民,とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ることを目的とする」としていて、大阪府民である様々な国にルーツをもつ生徒の存在を完全に無視しているか、日本人への同化を迫るものに他なりません。
そのような条例に基づく通達や職務命令に従うことは単なる服務規律の問題ではなく、排外主義、同化主義に加担することを強要されているということです。だから従うことができないのです。それでも従わなければ戒告処分に相当するのでしょうか。
(2)地裁判決は,「3アウト制」の問題は「抽象的違憲審査を求めるものである」と言っています。
しかし私は、今年の5月18日に「君が代」不起立による2回目の戒告処分を受けました。なぜ前回の処分から5年の間があったかといえば、その間は卒業式、入学式においては式場外勤務の職務命令を受け、教員を続けるためには甘んじてその職務命令を受けざるを得なかったからです。そして、5年ぶりに3年生の担任として卒業式に参列できたのです。
それにもかかわらず、今回は戒告の懲戒処分を受けるとともに、「職員基本条例29条2項に基づき、今後、同一の職務命令違反を行った場合に免職処分を受けることがある」旨の「警告書」の交付を受けました。「3アウト制」による威嚇が現実的に発揮され、私の教師生命は首の皮一枚で繋がっている状態です。これからの教員生活は、思想・信条や自分の信念を投げ捨てて、おとなしく「死に体」で過ごせということなのでしょうか。
3 さいごに
地裁の内藤裁判長は、「原告らによる本件職務命令違反行為は」、「自己の教育上の信念等を優先させて、あえて式典の秩序に反する特異な行動に及んだもので、厳しい非難に値するものであるいうべきである」と断じました。
私たちの真摯な教育活動がこのような偏見に満ちた判断をされたことを許すことはできません。貴裁判所が冷静に判断していただけますよう切に希望します。
『グループZAZA』(2018-07-30)
https://blog.goo.ne.jp/zaza0924/e/d089316211ea2c8a0ed48e63a9ba54f7
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