消費税 大悪税論 <1>
◆ 消費税は廃止にかぎる
2011年度税制改革と予算編成の過程で、消費税増税論が寝た子を起こすように再浮上している。財務省は基礎年金国庫負担(約2.5兆円)を現行の50%から36.5%に引き下げる制度の改悪案を公表した。その理由は「消費税増税ができないから」だ。また、「元気な日本」をめざす菅政権は、税制改革の目玉策である法人税率の引き下げを止めて、課税ベースの拡大や所得税控除の見直しによる高額所得者の増税を打ち出したが、日本経団連が「消費税増税に本腰で取り組め」として猛反発。こうした国民・政府・財界の三すくみ状態のなか、民主党は「消費税を含む税制抜本改革に政府は一刻も早く取り組むべき」と提言。そこで、かねてから消費税廃止論を説き続けている湖東京至・元静岡大学教授(税理士)に聞いた。
◆ 反対しないと上げる
ヨーロッパでは消費税のことを付加価値税といいます。その標準税率がどんどん引き上げられています(表1)。一番高いのはスウェーデン、デンマークの25%、一番低いのがルクセンブルクの15%です。ヨーロッパは統一税制として、標準税率を20%にせよという指令があり、当時ドイツは16%でしたが現在は19%です。
これに対して、日本の5%は極めて低いという議論がありますが、とんでもない。まず税金の歴史が違います。
今から2000年以上遡る紀元前、ローマ帝国の時代にシーザーが売上税をつくりました。それを初代皇帝のアウグストゥスが、「百分の一税」とし、税率1%、軍事目的税としました。しかしローマ帝国の崩壊とともに「百分の一税」は消え去りました。
近代になって1916年、第1次世界大戦のときドイツが戦時国債を償還するために税率0.1%の売上税を新設し、ヒトラーの政権になった第2次大戦では2.75%に上げられました。つまり、大型間接税は戦争のための税なのです。
ところで、わが国は平和憲法を持ちながら消費税を入れました。どこかが間違っています。しかも、平和憲法はいらない、税率をヨーロッパ並みにしようと言う人、さらに日本は5%でよかったなどという人がいます。とんでもない間違いです。そもそも消費税は入れてはいけない税金だったのです。

日本が手本にしてきたアメリカは国税として大型間接税はありません。ハワイなどにある小売売上税は州(地方)税です。レーガン時代に売上税を入れようとしましたができず、ましてやオバマが入れる可能性はありません。
カナダは最近、税率を下げました。当初は7%で、政権交代があって上げようとしましたが上げられず、現在は5%です。往来自由の国境が北米に接し、アメリカに大型間接税がないため、経済政策としても損をするというわけです。
日本はそのアメリカにもない大型間接税を入れました。今では民主党も上げたいといい、このまま放っておくと、税率がヨーロッパ並みになりかねません。
しかし、そう簡単にはいきません。政治的な動きに大きく左右されます。反対勢力が大きければ引き上げることはできないし、阻止することも可能です。
よく10%はだめだが、5%ならいいという意見を聞きますが、ここで廃止の方向を打ち出さないと10%に上がったらなかなか廃止できなくなります。
(続)
『週刊新社会』(2010/12/14)
◆ 消費税は廃止にかぎる
税理士 元静岡大学教授 湖東京至さん
2011年度税制改革と予算編成の過程で、消費税増税論が寝た子を起こすように再浮上している。財務省は基礎年金国庫負担(約2.5兆円)を現行の50%から36.5%に引き下げる制度の改悪案を公表した。その理由は「消費税増税ができないから」だ。また、「元気な日本」をめざす菅政権は、税制改革の目玉策である法人税率の引き下げを止めて、課税ベースの拡大や所得税控除の見直しによる高額所得者の増税を打ち出したが、日本経団連が「消費税増税に本腰で取り組め」として猛反発。こうした国民・政府・財界の三すくみ状態のなか、民主党は「消費税を含む税制抜本改革に政府は一刻も早く取り組むべき」と提言。そこで、かねてから消費税廃止論を説き続けている湖東京至・元静岡大学教授(税理士)に聞いた。
◆ 反対しないと上げる
ヨーロッパでは消費税のことを付加価値税といいます。その標準税率がどんどん引き上げられています(表1)。一番高いのはスウェーデン、デンマークの25%、一番低いのがルクセンブルクの15%です。ヨーロッパは統一税制として、標準税率を20%にせよという指令があり、当時ドイツは16%でしたが現在は19%です。
これに対して、日本の5%は極めて低いという議論がありますが、とんでもない。まず税金の歴史が違います。
今から2000年以上遡る紀元前、ローマ帝国の時代にシーザーが売上税をつくりました。それを初代皇帝のアウグストゥスが、「百分の一税」とし、税率1%、軍事目的税としました。しかしローマ帝国の崩壊とともに「百分の一税」は消え去りました。
近代になって1916年、第1次世界大戦のときドイツが戦時国債を償還するために税率0.1%の売上税を新設し、ヒトラーの政権になった第2次大戦では2.75%に上げられました。つまり、大型間接税は戦争のための税なのです。
ところで、わが国は平和憲法を持ちながら消費税を入れました。どこかが間違っています。しかも、平和憲法はいらない、税率をヨーロッパ並みにしようと言う人、さらに日本は5%でよかったなどという人がいます。とんでもない間違いです。そもそも消費税は入れてはいけない税金だったのです。

日本が手本にしてきたアメリカは国税として大型間接税はありません。ハワイなどにある小売売上税は州(地方)税です。レーガン時代に売上税を入れようとしましたができず、ましてやオバマが入れる可能性はありません。
カナダは最近、税率を下げました。当初は7%で、政権交代があって上げようとしましたが上げられず、現在は5%です。往来自由の国境が北米に接し、アメリカに大型間接税がないため、経済政策としても損をするというわけです。
日本はそのアメリカにもない大型間接税を入れました。今では民主党も上げたいといい、このまま放っておくと、税率がヨーロッパ並みになりかねません。
しかし、そう簡単にはいきません。政治的な動きに大きく左右されます。反対勢力が大きければ引き上げることはできないし、阻止することも可能です。
よく10%はだめだが、5%ならいいという意見を聞きますが、ここで廃止の方向を打ち出さないと10%に上がったらなかなか廃止できなくなります。
(続)
『週刊新社会』(2010/12/14)
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