《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
★ 万博に子どもたちをつれていけない理由
大阪教職員組合書記次長 中川 勉(なかがわつとむ)
大阪・関西万博が行われる大阪市の人工島・夢洲は、建設廃材、産業廃棄物やゴミ焼却灰・飛灰、PCBを含む浚渫(しゅんせつ)土砂などが埋められてきた。アクセス道路は、海底トンネルと橋の2本だけ。
ところが、IR=カジノを誘致したい勢力は、夢洲に目を付けた。万博誘致が決まれば、インフラ整備や周辺事業として、夢洲開発に公費を注ぎ込める。万博はカジノの隠れ蓑である。
わたしたちが万博中止を求める署名にもとりくんでいるのは、万博のうしろにカジノがひかえているからである。
★ 万博会場でガス爆発事故が発生
2024年3月28日、夢洲の西側、トイレ工事現場でガス爆発が起きた。埋立地のメタンガスが溜まり、溶接作業の火花が引火したという。事故現場では、コンクリートの床が100㎡に渡って破損した。
この事故を受けて、4月18日、大阪教職員組合(大教組)は、大阪府立高等学校教職員組合、大阪府立障害児学校教職員組合と連名で、大阪府・府教委に申し入れた(※1)。
当日はメディアも入り、記者会見を行った。夕方にテレビ放映され、新聞でも取り上げられた。
申し入れは5項目。大教組は、教育課程編成権は学校にあること、万博へ行く、行かないことはもとより、遠足・校外学習をいつ実施し、だれがどこへ子どもたちを連れていくかは学校が決めることを再度確認した。
そして、子どもたちの安全・安心が確認できなければ、招待されても、行く道理はなく、安全・安心を確認するのは、大阪府と府教委に責任があるとしている。
府教委は、今年5月末までに、府下の学校に対し、万博参加について意向調査を行った。調査では「希望する」「検討中」の2択しかない。行かない場合は、検討中と答えることとなっている。
現場では、校長が「保護者から『なぜ行かないのか』と言われるかもしれない」と心配し、意向調査には、ひとまず希望すると回答している。が、行かなくても子どもたちにはチケットが配られる。
5月になって、事故の際、消防への通報は、事故後4時間半が経ってからであること、天井部分も破損していたことがわかった。夢洲の西側一帯は、万博開催中も、地中からガスが出ていて、その量は1日に1,500㎏という。パビリオンの区域でも、低濃度ながらガスが出ることを万博協会は認めている。
★ 本当に連れていくことができるのか
①5月現在、避難計画なし:
夢洲へのアクセスは2カ所だけで、避難計画を作成するのが困難である。
②遠い駐車場:
駐車場から西ゲートまで、およそ800m。低学年や障害のある子どもの引率が不安。
③健康への不安:
昼食場所は小学生を優先し、一度に2,000人まで。1日の児童・生徒入場は最大1万4千人を見込む。屋外は直射日光や雨を避ける屋根がほとんどない(木造リング下、パビリオン内のみ)。
④飲食:
原則電子マネーでの購入。弁当・水筒の持ち込みはできるが、水筒を複数持たせることが、果たして現実的か。
⑤日時・館選べず:
入場できるパビリオンは選べない。学校の下見は、1団体3人まで、いつ行けるか不明。事前にどんなことが学べるかよく分からない。
⑥会場への往復:
バス代が高騰し、1台貸切で税込み20万円を超えるケースも(保護者負担)。バス、電車とも渋滞、多ッシュで計画通り往復できるのか予測がつかない。夢洲の東側は高規格コンテナターミナルがあり、海と陸を結ぶ物流拠点となっているが、すでに渋滞が発生し、物流が滞るケースがあると、港湾労働者が怒りの声を上げている。
万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」と裏腹に、夢洲の問題点が明らかになってきた。万博へ子どもたちを連れていくことはできない。大阪では、教職員組合の他、地域・団体、労働組合が学校や教育委員会に申し入れを行っている。労働組合だからこそできるとりくみである。
(※1)大教組HP「万博工事現場での爆発事故に関して、府・府教委として責任ある対応を求めます」URL:http://www.daikyoso.net/
『子どもと教科書全国ネット21ニュース』156号(2024年6月)
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