パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 技能実習制度に替わる「育成就労制度」の問題点

2024年07月28日 | 格差社会

 ☆ 外国人を追い出してどこが「共生社会の実現」か

 ☆ 永住資格の取り消し要件を拡大

 第213通常国会で審議されていた「育成就労制度」関連法は、自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党などの賛成多数で成立しました。
 国際社会から「現代の奴隷制度」と批判されてきた技能実習制度は、法律上は「廃止」されたものの、さまざまな人権侵害の解消につながるかどうかは、国会審議を通しても疑問が残りました。何より、衆参あわせて40項目以上もの附帯決議は、法律上の欠陥をあらわにしています
 とりわけ、新たな制度発足に結びつけて、永住許可の取り消し要件を拡大したことには、各方面からの批判の声が高まり、野党の追及が集中しました。
 長年日本で生活してきた外国人を追い出すような制度改定は、断じて認められません。

 ☆ 日本に住む外国人の4分の1を占める「永住者」

 約40種類にのぼる在留資格のうち、「永住者」は全体の4分の1以上でもっとも多数を占めています(下図参照・2023年末現在)。

 「永住者」の資格を得るには、継続して10年以上日本に在留することをはじめ、「素行が善良であること」や、独立して生計を営んでいることなどが条件とされます。
 「技術」「特定技能」などの在留資格は、資格ごとに就労できる職種が厳しく制限されますが、「永住者」の資格を得れば、どんな仕事に就くことも可能となります
 多くの外国人労働者は、日本で働きつづけたいという希望を持っており、「永住者」もこの5年間で約12万人増えています。就労可能な在留資格でこつこつと経験を積み上げ、家族をふくめて日本で生活の基盤を築き、ようやく「永住者」の資格を得た外国人労働者の姿が見えてきます。

 ☆ 在留カード不携帯だけでも取り消し?

 いまや90万人に迫る永住外国人は、日本の暮らしと経済を支える一員と言えます。ところが自民党は、育成就労制度ができれば永住につながる就労者が増えるなどとして、新制度に懸念を表明してきました。
 技能実習制度にかかわる有識者会議の最終報告が出た直後の昨年12月、自民党は「永住許可の制度の適正化を検討すること」とする意見書を政府に提出しています。これをうけた政府は、永住許可の取り消し要件を厳しくする規定を法案に盛り込みました
 有識者会議では、永住許可の問題などは議論されてこなかったことからも、自民党のゴリ押しで法案化されたことは明らかです。
 こうした経過をたどって新たに加わった在留資格の取Uり消しの要件は、「故意に公租公課(税金や社会保険料など)の支払いをしない」場合のほか、在留カードを携帯しなかっただけでも、「入管難民法違反」として永住許可を取り消す場合があるとしています(冒頭図参照)。
 解雇や倒産などで収入の道が途絶え、税金や社会保険料を納められないケースは、日本人でも往々にしてありえます。税金が払えないなら日本から出て行けというのは、外国人への不当な差別にほかなりません
 横浜中華街を中心とした華僑らでつくる「横浜華僑総会」は、ただちに「深刻な差別」とする抗議声明を出しました。
 新聞各紙の社説でも、「共生の理念を否定するメッセージすらはらんでいる」(朝日)、「社会の分断を招いてはならない」(日経)、「永住資格を厳格化する規定は削除すべき」(東京)など、厳しい批判の声が集中しました。

 ☆ 当事者の声に耳をふさいだ法律は無効

 永住許可の取り消しにかかわっては、過去に第7次出入国管理政策懇談会(2016~20年)で議論された経過があります。
 懇談会では意見はまとまらず、「外国人やその関係者等各方面から幅広く意見を聴くとともに(中略)丁寧な議論を行っていく必要がある」(最終報告・20年12月)ことが合意されています。
 こうした懇談会の合意事項を棚上げにして、「丁寧な議論」どころか当事者からのヒアリングさえなく法案化されたことが、小泉法相の国会答弁で明らかになりました。
 与野党間の修正協議を経て、「外国人の従前の公租公課の支払状況及び現在の生活状況その他の当該外国人の置かれている状況に十分配慮する」との附則を加えたものの、小手先の修正などで当事者が納得できるわけがありません。

 ☆ 国会審議は一からやり直せ

 国会審議で岸田首相は、法案の目的を「外国の人材に選ばれる国にする」とのべ、「共生社会の実現」と繰り返し答弁しました。
 永住する外国人が増えそうだから、要件を厳しくする一そうした考えは、岸田首相の答弁ともあいいれません。
 すべての外国人の人権が守られ、安心して暮らし、働きつづけることのできる社会を、日本人と外国人が力を合わせていかにつくりあげるのか、それは将来にむけて問われる重要な課題です。
 こうした議論が、当事者不在のもと十分に尽くされないまま、永住許可取り消し要件の拡大が強行されました。国会審議は、あらためて一からやり直すべきです。

(記事中の図表は、いずれも「東京新聞web版」から転載)

首都圏移住労働者ユニオン『LUM(Labor Union Migrant Workers)』(2024年7月1日)

 


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