(始めにお断り : 長いです。。)
消えてしまった前回の続きになります。
格安レンタカーで、営業車の様な白い初期型SWIFTをお借りして、
ホテルの駐車場に持って来た初日の夜。
翌日は早起きをして少し遠出をします。
ところが、あんなに疲れたのに気持ちが高ぶり、
よく眠れないまま早朝5時半起床。
6時半、前夜に買っておいたパン2個とお茶を持って出発です。
目指すは、僕の奈良憧れのお寺のひとつ。
奈良盆地の東方、三重県境に近い室生の地にある山岳寺院「室生寺」です。
ここは、本当に本当に訪れてみたかった所。
ゆっくりと見たいので電車&バスではなく「朝一で車」を選びました。
バスなんか1時間に1本位しかありませんし、朝は9時以降になってしまうのです。
早朝の朝焼けが美しい奈良を胸躍らせながらドライブ。
「邪魔だぞ、観光レンタカーめ!」な、乱暴大型トラックの圧も、
今の僕の心を乱すことはありません。
少し紅葉な山々を走り1時間30分。
途中、急カーブの度にカーナビの電源ソケットが抜けるという
困った事態で道を間違えましたが、朝早くほとんど車の走っていない山間部なので、
奈良市内からは丁度良いドライブ時間でした。
僕の通ったコース。

まだ係りの人すら居ない駐車場に車を停めパンをひとつ。
拝観時間は8時からなのでのんびりです。
車のドアを全開にして、こちら側と室生寺のある山の間を流れる川の音と
風に揺れる木々の音に浸ります。
パンも食べ終わり、いよいよ川を渡る橋を目指して歩きます。

橋を渡ったところはまだ封鎖されていたので、川を眺めて待っていると
のんびりと現れたおばさんが、どうぞどうぞと開けてくれました。
受付を通り仁王門をくぐると美しい階段です。
この室生寺、最終的に奥ノ院まで行く場合は700段以上の階段を登る事になりますので
覚悟が必要です。その分、おかげで得られる感動も大きいですよ。

階段の上には金堂と弥勒堂があります。
金堂は、建物の前部が斜面に張り出し、
床下の長い束(つか)で支える「懸造」と言われる建物で、
山岳寺院らしい独特なものです。
中には十一面観音立像(国宝)、文殊菩薩立像(重文)、本尊釈迦如来立像(国宝)、
薬師如来立像(重文)、地蔵菩薩立像(重文)、十二神将立像(重文)と、
とんでもない有名どころが安置されております。

弥勒堂は、厨子内に本尊弥勒菩薩立像(重文)、釈迦如来坐像(国宝)と、
こちらも素晴らしいもの。
しかし、今は僕はこのスーパー仏像を我慢し目指さなきゃいけない場所があるのです。
奥の院。
石段をこれでもかと登らなければ辿り着けない室生寺最深部。
板葺き二段屋根の宝形造りの御影堂(弘法大師を祀る)や
金堂以上に激しい懸造りの「位牌堂」、石造七重の塔等が見られます。
金堂、本堂、五重塔を通り、奥ノ院への道へ。
暖地性シダ(羊歯)の群落(わが国の北限にあたるため天然記念物に指定)が広がる無明橋を渡ります。

さぁ、気の遠くなる石段であります。。
息を切らせ、途中のいくつもの石仏に手をあわせ進むと、
上の方に、石段を一段一段ほうきで掃いているお年寄りが。
奥の院への道で初めて見る人の姿。

年齢半分以下であろう僕がハァハァ息を切らせ挨拶をすると、
「お早いですね、もう少しですよ」と優しいお言葉。
彼は、何十年もほぼ毎日、こうして一段一段ほうきで掃きながら奥の院に出勤?するのだそうで、
雪の日には背中に20キロの凍結防止剤を背負い、撒きながら登るという話を聞き、
もう僕はすっかり土下座気分でした。。。
少しお話して「先に登らせて頂きます」と頭を下げ進む。
負けてたまるか!と、気持ちは少し強くなってますのでね、一気に。
登って登って見えてきた位牌堂の下部。
迫力あります。すげぇもん造るなぁと感動。

ハァハァ揺れ揺れの動画ですが雰囲気だけでも伝わるかも。
そして到着した奥の院。
本当に小さな場所。若い僧がひとり、扉を開いたり掃除をしたり忙しそう。
納経所の横には親切に休憩所があり、リュックを下ろして一休み。

静か。 本当に静か。
暫くするとさっきの掃除のお爺さんも到着。
「今日は弘法大師様の命日だからね、御影堂を開きますよ。いらっしゃい。」
と呼ばれ、御影堂の扉を開き、灯りを燈すのを見守ります。
揺れる灯りに浮かび上がった弘法大師像は、美しかった。。

今日がそういう日である事は、僕は何も知らなかったので、とても運が良かった。
誰ひとり登ってこない奥ノ院で、弘法大師様や位牌堂の回廊からの景色を
ゆっくり楽しむ事が出来ました。

実は室生寺は、生前父と、寺や神社の話をしている時に父の口から出たお寺で、
とても行きたそうだったのを覚えていたのです。
僕自身も憧れでありましたので、今回の旅では絶対に外せない場所でした。
朱印集めをしていた父にここでも朱印を頂こうと若い僧に尋ねると、
「少々お待ち下さいね」とどこかへ。
(誰もいないからここでは貰えないかな)と待っていると、
納経所の中に現れたのは制服?に着替えたさっきのお爺さん!
「どうぞ~」って。
後でお話して分かったのですが、このお爺さん、18歳で室生寺の職員となり、
3代の管長に仕え、今は奥の院の専属となり朱印を書き続ける歴史のあるお方なのでした。。
とても気さくで優しい方で、お話をしながら素晴らしい朱印を書いて頂きました。

父が亡くなって、行きたそうだった所を巡ってますって話をしたら、
「そうかそうか、じゃあちょっと待って」と、半紙を取り出し、
「お父さんに持って行きなさい」と、時間をかけてお言葉を書いて下さりました。
もう嬉しくて鼻水が止まりませんでした。。。

偶然の弘法大師さまと、楽しい会話と、素晴らしい父へのお土産。
「ありがどぅございますぅ」と鼻水を流す僕は、
微笑むお爺さんと苦笑いの若い僧に見送られ、奥の院を下りるのでした。
このとても大きな幸福感を、帰ったら父の事務所に話しに行こう
なんて思ってしまったりして、少し寂しくもなりながら。
帰り、杖を持ったおばあさんが二人、奥の院に向かっていました。
心配で声をかけると、「頑張ってみる」とニコニコ。
「今日は弘法大師様が観れますよ」と言うと、
「それはありがたい!」と喜んで歩いて行きました。

やっちゃったな。。
まだ仏像も観てないのに記事のこの長さ。。。
すいません、ほんと、とうぶん続きます。。
以前流れたJR東海のCM。素敵です。
消えてしまった前回の続きになります。
格安レンタカーで、営業車の様な白い初期型SWIFTをお借りして、
ホテルの駐車場に持って来た初日の夜。
翌日は早起きをして少し遠出をします。
ところが、あんなに疲れたのに気持ちが高ぶり、
よく眠れないまま早朝5時半起床。
6時半、前夜に買っておいたパン2個とお茶を持って出発です。
目指すは、僕の奈良憧れのお寺のひとつ。
奈良盆地の東方、三重県境に近い室生の地にある山岳寺院「室生寺」です。
ここは、本当に本当に訪れてみたかった所。
ゆっくりと見たいので電車&バスではなく「朝一で車」を選びました。
バスなんか1時間に1本位しかありませんし、朝は9時以降になってしまうのです。
早朝の朝焼けが美しい奈良を胸躍らせながらドライブ。
「邪魔だぞ、観光レンタカーめ!」な、乱暴大型トラックの圧も、
今の僕の心を乱すことはありません。
少し紅葉な山々を走り1時間30分。
途中、急カーブの度にカーナビの電源ソケットが抜けるという
困った事態で道を間違えましたが、朝早くほとんど車の走っていない山間部なので、
奈良市内からは丁度良いドライブ時間でした。
僕の通ったコース。


まだ係りの人すら居ない駐車場に車を停めパンをひとつ。
拝観時間は8時からなのでのんびりです。
車のドアを全開にして、こちら側と室生寺のある山の間を流れる川の音と
風に揺れる木々の音に浸ります。
パンも食べ終わり、いよいよ川を渡る橋を目指して歩きます。

橋を渡ったところはまだ封鎖されていたので、川を眺めて待っていると
のんびりと現れたおばさんが、どうぞどうぞと開けてくれました。


受付を通り仁王門をくぐると美しい階段です。
この室生寺、最終的に奥ノ院まで行く場合は700段以上の階段を登る事になりますので
覚悟が必要です。その分、おかげで得られる感動も大きいですよ。



階段の上には金堂と弥勒堂があります。
金堂は、建物の前部が斜面に張り出し、
床下の長い束(つか)で支える「懸造」と言われる建物で、
山岳寺院らしい独特なものです。
中には十一面観音立像(国宝)、文殊菩薩立像(重文)、本尊釈迦如来立像(国宝)、
薬師如来立像(重文)、地蔵菩薩立像(重文)、十二神将立像(重文)と、
とんでもない有名どころが安置されております。



弥勒堂は、厨子内に本尊弥勒菩薩立像(重文)、釈迦如来坐像(国宝)と、
こちらも素晴らしいもの。
しかし、今は僕はこのスーパー仏像を我慢し目指さなきゃいけない場所があるのです。
奥の院。
石段をこれでもかと登らなければ辿り着けない室生寺最深部。
板葺き二段屋根の宝形造りの御影堂(弘法大師を祀る)や
金堂以上に激しい懸造りの「位牌堂」、石造七重の塔等が見られます。
金堂、本堂、五重塔を通り、奥ノ院への道へ。
暖地性シダ(羊歯)の群落(わが国の北限にあたるため天然記念物に指定)が広がる無明橋を渡ります。





さぁ、気の遠くなる石段であります。。
息を切らせ、途中のいくつもの石仏に手をあわせ進むと、
上の方に、石段を一段一段ほうきで掃いているお年寄りが。
奥の院への道で初めて見る人の姿。

年齢半分以下であろう僕がハァハァ息を切らせ挨拶をすると、
「お早いですね、もう少しですよ」と優しいお言葉。
彼は、何十年もほぼ毎日、こうして一段一段ほうきで掃きながら奥の院に出勤?するのだそうで、
雪の日には背中に20キロの凍結防止剤を背負い、撒きながら登るという話を聞き、
もう僕はすっかり土下座気分でした。。。
少しお話して「先に登らせて頂きます」と頭を下げ進む。
負けてたまるか!と、気持ちは少し強くなってますのでね、一気に。
登って登って見えてきた位牌堂の下部。
迫力あります。すげぇもん造るなぁと感動。



ハァハァ揺れ揺れの動画ですが雰囲気だけでも伝わるかも。
そして到着した奥の院。
本当に小さな場所。若い僧がひとり、扉を開いたり掃除をしたり忙しそう。
納経所の横には親切に休憩所があり、リュックを下ろして一休み。




静か。 本当に静か。
暫くするとさっきの掃除のお爺さんも到着。
「今日は弘法大師様の命日だからね、御影堂を開きますよ。いらっしゃい。」
と呼ばれ、御影堂の扉を開き、灯りを燈すのを見守ります。
揺れる灯りに浮かび上がった弘法大師像は、美しかった。。

今日がそういう日である事は、僕は何も知らなかったので、とても運が良かった。
誰ひとり登ってこない奥ノ院で、弘法大師様や位牌堂の回廊からの景色を
ゆっくり楽しむ事が出来ました。


実は室生寺は、生前父と、寺や神社の話をしている時に父の口から出たお寺で、
とても行きたそうだったのを覚えていたのです。
僕自身も憧れでありましたので、今回の旅では絶対に外せない場所でした。
朱印集めをしていた父にここでも朱印を頂こうと若い僧に尋ねると、
「少々お待ち下さいね」とどこかへ。
(誰もいないからここでは貰えないかな)と待っていると、
納経所の中に現れたのは制服?に着替えたさっきのお爺さん!
「どうぞ~」って。
後でお話して分かったのですが、このお爺さん、18歳で室生寺の職員となり、
3代の管長に仕え、今は奥の院の専属となり朱印を書き続ける歴史のあるお方なのでした。。
とても気さくで優しい方で、お話をしながら素晴らしい朱印を書いて頂きました。

父が亡くなって、行きたそうだった所を巡ってますって話をしたら、
「そうかそうか、じゃあちょっと待って」と、半紙を取り出し、
「お父さんに持って行きなさい」と、時間をかけてお言葉を書いて下さりました。
もう嬉しくて鼻水が止まりませんでした。。。

偶然の弘法大師さまと、楽しい会話と、素晴らしい父へのお土産。
「ありがどぅございますぅ」と鼻水を流す僕は、
微笑むお爺さんと苦笑いの若い僧に見送られ、奥の院を下りるのでした。
このとても大きな幸福感を、帰ったら父の事務所に話しに行こう
なんて思ってしまったりして、少し寂しくもなりながら。
帰り、杖を持ったおばあさんが二人、奥の院に向かっていました。
心配で声をかけると、「頑張ってみる」とニコニコ。
「今日は弘法大師様が観れますよ」と言うと、
「それはありがたい!」と喜んで歩いて行きました。



やっちゃったな。。
まだ仏像も観てないのに記事のこの長さ。。。
すいません、ほんと、とうぶん続きます。。
以前流れたJR東海のCM。素敵です。