八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに
八重垣作る その八重垣を
やぐもたつ いずもやえがき つまごみに
やえがきつくる そのやえがきを
古事記・日本書紀に書かれている和歌の中で一番好きな歌です
スサノオの命が高天原を追放されて出雲の国の川のほとりに来る
川上から箸が流れてきたので 人が住んでいるのだろうと思い
川上に上っていった
すると 老夫婦が一人の娘を間において泣いていた
老夫婦の名は アシナズチ テナヅチ
娘の名は クシイナダ姫という
「 どんなわけで泣いているのか 」 と訪ねたら
「 毎年 八つの頭のある大蛇 (おろち) が襲ってきて 娘を食べてしまう
今年もその時期が来てたので嘆き悲しんでいます 」
とアシナズチは答えた
すると スサノオの命は
「 娘を私の妻に下さらないか 」
とアシナズチに言う・・・・
そこから スサノオの命と八俣の大蛇 (やまたのおろち) の戦いが始まる・・・・
八俣の大蛇を退治したスサノオの命は
出雲の国で新居を造る
そのとき歌われたのがこの歌
つきぬけるような青い空に つぎつぎと雲が湧き立つていく
その雲が八重の垣となり 私の妻をこもらせてくれる
わたしと妻のあたらしい家の八重の垣よ・・・・ *
高天原で天照大神との葛藤
そして追放されたスサノオの命
きっと 荒ぶる神は荒ぶる神ゆえに
清き美しい高天原では
心休まることがなかったのだろう
出雲の国でひとりの姫を守り
その姫を妻にしたよろこび
そのよろこびを思うとき
この歌をより深く味わうことができる
それはきっと
晴れ晴れとした青い空に真っ白な雲が湧き立った
何とも言えない清々しいお心だったのだろう
僕はこの歌をよく口にして読んでみる
言葉の響きに濁りがなく
一言一言のよろこびの言霊が重なっていく
そして
最後の「その八重垣を」で
一気にその言霊たちが凝縮され
よろこびがひとつの形となる
このリズム感がとてもスキです
スサノオの命とクシイナダ姫の子孫に大国主の命がおられます
この物語からから
出雲の物語が始まっていくのです
* 私訳です 原文に忠実に訳してません
精霊